著者
溝上 雅史 杉山 真也 村田 一素 鈴木 善幸 伊藤 清顕
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

IL28B遺伝子の転写蛋白インターフェロンλ3 (IFN-λ3)の測定法を新規開発し、患者末梢血単核球をex vivo刺激で得られた上清や血清のIFN-λ3が良好なPeg-IFN/RBV併用療法効果予測が可能で本法の臨床的有用性を証明した。また、BDCA3陽性樹状細胞はC型肝炎ウイルスを認識し、toll-like receptor 3を介してIFN-λ3を産生することを示した。
著者
溝上 雅史 杉山 真也
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.67-78, 2012-06-25 (Released:2013-05-09)
参考文献数
84
被引用文献数
2 2

B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンの開発の成功により,本邦では1986年から nation-wide に母 子感染防止事業が始まり,本邦における HBV の主な感染経路であった母児感染予防対策が開始され た.その結果,本邦では25歳以下は世界で最も HBV 持続感染者(HBキャリア)が少ない国の一つ となり,HBV により引き起こされる B 型肝炎は本邦では過去の疾患になったと考えられた.しかし,一方では本邦には今まで存在しなかった新たな HBV genotype A が海外から流入し,従来 よりも感染リスクが増加している.この新たな感染は主に性行為感染症により拡大しており,現在ではこの水平感染が HBV の主な感染経路となっている.また,HBV ワクチン接種者についても,Vaccine induced eacape mutant の有無に関わらず,感染が成立したという事例も報告が続いており,HBs 抗体価をはじめとする HBV ワクチンの効果についても再度見直す必要がある.さらに, 現在頻用されている分子標的治療薬投与により,これまで治癒したと考えられていた HBs 抗原陰性 且つ HBs 抗体陽性者からの再活性化や劇症化が起こることも明らかとなってきた. 以上の事実は,一度でも HBV に感染した場合に一生再活性化のリスクを抱える点や現行の HBV ワクチンの問題点を踏まえて,HBV 感染症と HBV ワクチンのあり方について新たな局面をむかえて いることを示している.