著者
杉惠 頼寧 岡村 敏之 藤原 章正 張 峻屹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は,交通行動のダイナミック分析手法を交通機関の選好意識(以下SPと略す)の分析に適用し,その時間的な変化の構造を明らかにすることである.クロスセクションモデルを改良したダイナミックモデルを構築し,その有効性を明らかにする.さらに,時系列モデルを適用し,TDM施策が実施された後に通勤交通の時刻選択行動が安定するまでの時系列過程を予測するモデルを構築する.3年間の研究によって次のような成果が得られた.1.SPダイナミックモデルの構築これまで我々の研究室で蓄積してきた広島の新交通システム(19994年8月開業)に対するSPデータ(1987,88,90,93,94年)とRPデータ(1994,97年)の合計7時点パネルデータを用いる.これによって,SPデータを用いて予測した新交通システム開業後の選択結果を評価し,SPモデルの信頼性,改善点を明らかにした.2.TDM導入効果の時系列分析時間分散型TDM施策であるフレックスタイム制度と時差出金制度を導入した後の施策対象者および非施策対象者の行動変化について分析した.まず,1996年に広島市内で導入されたフレックスタイム制度に関して,導入後2回(1996,97年)のパネル調査データと導入後1年間の出勤管理データを用いて時系列分析を行い,行動の調整過程と安定過程が存在することを示した.次に,1999年に松江市で実施された時差出勤社会実験前後の観測交通量データを用いて,時差出勤の導入に対する交通渋滞の反応遅れについて分析した.本研究の主要な成果は,1)SPダイナミックモデルを構築し,その有効性を示したこと,2)TDM施策に対する住民の交通行動には反応遅れが生じ,それらを考慮した時系列モデルの適用の重要性を示したことである.今後は本研究で開発した需要予測モデルを多様な交通政策に適用し,より広範な視点からその適用可能性を検討する予定である.
著者
杉惠 頼寧 塚井 誠人 奥村 誠 藤原 章正 POLAK John JONES Peter
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的はアクティビティ・アプローチの考え方を基礎として、調査法、行動モデリング、政策評価に関する問題点を明らかにし、改善を加えることにより新しい都市交通計画手法の開発を行うものであり、2年間の共同研究によって次のような成果が得られた。1.平日買物行動を考慮した週末買物活動発生モデルの開発週末買物活動を対象に1週間の買物活動データを用いて、個人の買物行動特性を把握すると同時に、平日買物頻度と週末買物活動発生の同時決定モデルを提案した。宇都宮市の1週間にわたる活動日誌調査で得られた買物活動のデータを用いて実証分析をした結果、同時決定モデルの妥当性を確認できた。2.交通調査における回答者インセンティブの費用便益分析交通調査において、細かな行動や意識などを含む複雑な調査が増え、精度や回答率低くなることが問題となり、効率的な調査方法の開発が求められている。本研究では、インセンティブ(謝礼)をつけるという方法をとりあげ、その効果を定量化し、一定の精度を得るために最も費用の小さいインセンティブの水準を考察した。3.観光周遊行動を分析するためのNested PCLモデルの開発観光周遊行動における目的地及び経路の選択肢は互いに独立とは言えない。そこで本研究は、観光周遊の目的地及び経路選択行動を予測するためにNested PCLモデルを提案した。ケーススタディの結果、同モデルは観光需要予測に有効であることが示された。4.SP調査における所要時間の信頼性を表現する手法の改善本研究は、運行サービスの定時制に関する鉄道利用者の評価を分析したものである。定時制が旅行者によって高く価値付けられていることがわかった。従来の研究では、必ずしもそうでないと説もあった。この違いは、従来の方法では、SP調査で用いられている所要時間の定時制の表現方法がうまくなされていないためであることがわかった。