著者
小海 宏之 岡村 香織 藤田 雄 杉野 正一
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-8, 2012-03

本研究は、Cloninger の3次元人格理論による認知症患者の人格特徴について検討することにより、今後の認知症患者に対する適切な心理的アプローチ法を開発するための基礎資料を得ることを目的とする。対象は軽度認知障害者13名(平均年齢73.6 ± 10.0 歳)とアルツハイマー病者12名(平均年齢74.2 ± 9.8 歳)である。方法は対象者にMini-Mental State Examination(MMSE)などの認知機能検査、およびTridimensional Personality Questionnaire(TPQ)を個別実施した。その結果、アルツハイマー病者は軽度認知障害者と比較して、全般的認知機能の低下が認められるとともに、人格特徴としての行動の触発(新奇性追求総合点: U=43.5, p<0.10)や維持(報酬依存総合点: U=43.0, p<0.10)の低下が明らかとなった。これらの特徴から、アルツハイマー病者は軽度認知障害者と比較して、dopamineやnorepinephrine の分泌量が低下する可能性を示唆するとも考えられる。
著者
小海 宏之 加藤 佑佳 成本 迅 松岡 照之 谷口 将吾 小川 真由 三村 將 仲秋 秀太郎 江口 洋子 飯干 紀代子 園田 薫 岸川 雄介 杉野 正一
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.29-37, 2014-03

本研究は、各神経心理検査の一つの下位検査から言語性記憶指数(VMQ)を推定するための基礎資料を得ることを目的とする。対象は軽度認知障害者およびアルツハイマー病者の計71 名である。方法は対象者にMMSE、ADAS、WMS-R を個別実施し、VMQ との相関分析を行った。また、VMQ と各神経心理検査の下位検査との間で最も高い相関係数値となった下位検査についてVMQ との単回帰式を求めた。その結果、推定VMQ=50.203+6.661×(時間的見当識素点)、推定VMQ=39.469+6.762×(平均単語再生数)、推定VMQ=68.921+1.439×(論理的記憶II(遅延)素点)の単回帰式が得られた。さらに、これらの単回帰式から得られた各下位検査と推定VMQ に関する判定基準を導き出した。医療同意能力を予測する因子の一つとして記憶の機能は重要であると考えられるため、本研究結果の指標は有用になるであろうとも考えられる。