著者
小海宏之 前田明子 山本愛 加藤佑佳 岡村香織 園田薫 安藤悦子 岸川雄介
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.91-96, 2010-03

本研究は、小海ら(2000 ,2004,2008)による日本語版 Mini-Mental State Examination(MMSE)の検出力と特異性を明らかにした。この MMSEの cut-off値を 24/25点とした場合、感度 0.837、特異度 0.957となり、臨床群( amnestic Mild Cognitive Impairment; MCIと probable Alzheimer's Disease; ADを含む)と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有することが示唆された。しかし、同様に 26/27点を cut-off値とした場合、感度 0.889、特異度 0.739となり、amnestic MCI群と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有するとは言い難く、他の認知機能検査による精査を行う必要性があることが示唆された。
著者
小海 宏之 岡村 香織 藤田 雄 杉野 正一
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-8, 2012-03

本研究は、Cloninger の3次元人格理論による認知症患者の人格特徴について検討することにより、今後の認知症患者に対する適切な心理的アプローチ法を開発するための基礎資料を得ることを目的とする。対象は軽度認知障害者13名(平均年齢73.6 ± 10.0 歳)とアルツハイマー病者12名(平均年齢74.2 ± 9.8 歳)である。方法は対象者にMini-Mental State Examination(MMSE)などの認知機能検査、およびTridimensional Personality Questionnaire(TPQ)を個別実施した。その結果、アルツハイマー病者は軽度認知障害者と比較して、全般的認知機能の低下が認められるとともに、人格特徴としての行動の触発(新奇性追求総合点: U=43.5, p<0.10)や維持(報酬依存総合点: U=43.0, p<0.10)の低下が明らかとなった。これらの特徴から、アルツハイマー病者は軽度認知障害者と比較して、dopamineやnorepinephrine の分泌量が低下する可能性を示唆するとも考えられる。
著者
小海 宏之 朝比奈 恭子 岡村 香織 石井 辰二 東 真一郎 吉田 祥 津田 清重
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.59-66, 2000

Folstein, M. F.(1975)らが開発した簡易な認知機能検査であるMini-Mental State Examination(MMSE)は,臨床的有用性が高く,様々な分野の認知機能検査として用いられてきている。しかし,原版及び既に訳出されている日本語版ともに,重症度の判別基準は,まだ示されていない。そこで,今回,われわれは,改変した日本語版MMSE-Aino(MMSE-A)を作成し標準化を行い,さらに,MMSE-Aに重症度判別基準を適用した。その結果,MMSE-Aの平均点±標準偏差は,重度認知障害群で4.6±4.1,中等度認知障害群で11.2±3.8,軽度認知障害群で16.9±3.5,境界域認知障害群で19.1±2.4となった。また,MMSE-Aは,HDS-R(Hasegawa Dementia Scale-Revised)及びNDS(Nishimura Dementia Scale)との併存的妥当性が非常に高いことが確認された。また,MMSE-Aの再検査信頼性もきわめて高く,高い内的整合性と高い信頼性をもっていることが確認された。
著者
小海 宏之 加藤 佑佳 成本 迅 松岡 照之 谷口 将吾 小川 真由 三村 將 仲秋 秀太郎 江口 洋子 飯干 紀代子 園田 薫 岸川 雄介 杉野 正一
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.29-37, 2014-03

本研究は、各神経心理検査の一つの下位検査から言語性記憶指数(VMQ)を推定するための基礎資料を得ることを目的とする。対象は軽度認知障害者およびアルツハイマー病者の計71 名である。方法は対象者にMMSE、ADAS、WMS-R を個別実施し、VMQ との相関分析を行った。また、VMQ と各神経心理検査の下位検査との間で最も高い相関係数値となった下位検査についてVMQ との単回帰式を求めた。その結果、推定VMQ=50.203+6.661×(時間的見当識素点)、推定VMQ=39.469+6.762×(平均単語再生数)、推定VMQ=68.921+1.439×(論理的記憶II(遅延)素点)の単回帰式が得られた。さらに、これらの単回帰式から得られた各下位検査と推定VMQ に関する判定基準を導き出した。医療同意能力を予測する因子の一つとして記憶の機能は重要であると考えられるため、本研究結果の指標は有用になるであろうとも考えられる。
著者
小海 宏之 岡村香織 中野明子 鈴木博子 岸川雄介 園田薫 石井博 成本迅 Hiroyuki KOUMI OKAMURAKaori NAKANOAkiko SUZUKIHiroko KISHIKAWAYusuke SONODAKaoru ISHIIHiroshi NARUMOTOJin 花園大学社会福祉学部 藍野花園病院 藍野病院臨床心理科 阪本病院 藍野病院老年心身医療センター 藍野病院老年心身医療センター 藍野病院老年心身医療センター 京都府立医科大学大学院医学研究科精神医学教室 Faculty of Social WelfareHanazono University Ainohanazono Hospital Department of Clinical PsychologyAino Hospital Sakamoto Hospital Center of Geriatric Medicine and Psychiatry Aino Hospital Center of Geriatric Medicine and Psychiatry Aino Hospital Center of Geriatric Medicine and Psychiatry Aino Hospital Department of Psychiatry Kyoto Prefectural University of Medicine
巻号頁・発行日
vol.19, pp.37-44,

本研究は、高齢統合失調症者の表情認知における特徴を検討することにより、高齢統合失調症者の情動機能に関する今後の神経心理学的研究の基礎資料にすることを目的とした。対象は高齢統合失調症者7名(平均年齢71.7±6.4歳)と健常高齢者10名(67.4±6.6歳)である。方法は対象者にMini-Mental State Examinationおよび小海ら(2007)が SuperLab Pro V.2.04でプログラミング作成した Emotion Recognition Testを個別実施した。その結果、高齢統合失調症者は健常高齢者と比較して、全般的認知機能の低下が認められ、また、怒りや悲しみなど不快情動の表情認知を誤る率が高く、反応時間も遅いことが明らかとなった。これらの特徴から、高齢統合失調症者は、とくに右側前帯状皮質、扁桃体や島皮質周辺領域における機能の低下を示唆すると考えられ、また、これらのことが対人関係上の問題となる可能性を示唆するとも考えられる。
著者
小海 宏之 加藤 佑佳 岸川 雄介 園田 薫 成本 迅
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.85-95, 2013-03

本研究は、アルツハイマー病者の神経心理学的検査値と海馬傍回の萎縮度との関連を検討することにより、アルツハイマー病者の認知機能に関する今後の研究の基礎資料を得ることを目的とする。対象はアルツハイマー病者33 名である。方法は対象者にMMSE、ADAS、CDT、TMT、WMS-R の神経心理学的検査を個別実施し、脳のMRI データおよびVSRAD を用いて海馬傍回の萎縮度などを解析した。その結果、アルツハイマー病者の海馬傍回の萎縮度とADAS の単語再生との間に有意な相関関係が認められ、脳全体の萎縮度とADAS の総得点、単語再生、言語の聴覚的理解、単語再認との間に有意な相関関係が認められた。これらの結果から、ADAS の単語再生は言語性即時記憶容量の定量化および海馬傍回の萎縮度を推定するのに適した課題であり、また、神経心理学的アセスメントは脳機能の障害を推定するためにも重要であることを示唆すると考えられる。
著者
加藤 佑佳 中野 明子 山本 愛 岡村 香織 小海 宏之 吉田 麻美 園田 薫 安藤 悦子 岸川 雄介 寺嶋 繁典
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.721-730, 2011-08-01

2型糖尿病者を対象にProblem Areas in Diabetes(PAID)scaleを実施し,フロア効果がある6項目を除いて因子分析を行ったところ単因子構造が確認された.このPAID尺度とProfile of Mood States(POMS),Tokyo University Egogram New version(TEG)との関連を検証した結果,PAID尺度はPOMSの「Tension-Anxiety」「Depression-Dejection」「Fatigue」との有意な関連がある一方,TEGとは関連がみられなかった.よって,PAIDとPOMSを併せて用いることは,糖尿病の負担感と関連する心理的状態をより詳細に把握することができ,各人に応じた心理的援助を提供する際に有効であると考えられる.