著者
村上 圭一 篠田 英史 中村 文子 後藤 逸男
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.339-345, 2004-06-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
24
被引用文献数
8

群馬県吾妻郡嬬恋村の土壌は黒ボク土であるが,その下唐土は,根こぶ病の発病抑止的土壌として知られている.本報では,土壌の酸性改良が根こぶ病の発病を抑止するメカニズムおよび黒ボク下層土が根こぶ病の発病を抑止するメカニズムを明らかにする目的で,根こぶ病の発病に及ぼす土壌の種類とpHの影響について検討を行った.1)根こぶ病の発病を抑制するために必要な酸性改良の程度は土壌の種類により著しく相違し,黒ボク表層土や灰色低地土のように発病しやすい土壌では,土壌のpHを少なくとも7以上にまで高める必要がある.一方,発病しにくい黒ボク下層土や赤黄色土では極端な酸性改良を必要としないことが明らかになった.2)土壌の酸性改良による根こぶ病の抑制メカニズムは従来から高pH条件下で土壌中の休眠胞子の発芽を抑制することに起因すると考えられてきたが,高pH条件においても休眠胞子の発芽あるいは,根毛への第一次感染が確認されたことから,これらのメカニズムは第一次感染以降にあると推定された.3)黒ボク下層上が根こぶ病の発病を抑止するメカニズムは,休眠胞子が有する陰電荷と土壌コロイドの電荷特性の変化に起因する.すなわち,腐植質黒ボク土は腐植に由来する陰電荷を,腐植を含まない黒ボク下層土はアロフェン由来の陽電荷を持っている.黒ボク下層土中では休眠胞子が上壌コロイドに電気的に吸着されるため,休眠胞子密度が低下する.このような土壌中での見かけ上の休眠胞子密度の低下が発病を抑止する原因と考えられた.
著者
村上 圭一 後藤 逸男
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1290-1294, 2007 (Released:2011-01-20)

農業生産者が土壌の性質に合わせた土壌改良や施肥を行うための手段として、土壌診断が奨励されている。しかし、生産現場では必ずしも土壌診断が土づくりに貢献しているとは言い難い。筆者らは全国各地の野菜生産地において土壌診断調査を行い、かつては生産性が低かった日本の土が現在どのように変化しているか、あるいは農業生産者が土づくりに対してどのような意識を持ち、どのような土づくりを実践しているかなどについて調べてきた。ここでは、土壌のリン酸過剰がアブラナ科野菜根こぶ病の発病を助長するメカニズムを紹介する。
著者
村上 圭一 中村 文子 後藤 逸男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.453-457, 2004-08-05
被引用文献数
10

全国の根こぶ病発生地域では土壌中の可給態リン酸の過剰が進んでいたことから,土壌中のリン酸と根こぶ病発生との因果関係について検討した.根こぶ病の発病抑止土壌である黒ボク下層土に0〜50g kg^<-1>のリン酸を添加して,可給態リン酸が0.01〜3.57g kg^<-1>に及ぶ5段階のリン酸添加土壌を調整した.これらの土壌に0〜10^7 g^<-1>(8段階)の休眠胞子を加えた人工汚染土壌を作り,リン酸の増加に伴う土壌への休眠胞子吸着率,ハクサイの根毛感染率,ポット栽培によるチンゲンサイ根こぶ病の発病を調査した.その結果,土壌リン酸の増加に伴い,土壌への休眠胞子吸着率が低下するとともに,根毛感染率が上昇し,根こぶ病の発病度が高まった.以上の結果より,大量の陽電荷を有ずる黒ボク下層土は陰電荷を有する休眠胞子を吸着してその動きを抑制するため根こぶ病の発病を抑止する.しかし,その土壌にリン酸を施用すると,土壌コロイドの陽電荷が減少して休眠胞子の吸着率が低下するため休眠胞子が遊離し,アブラナ科野菜の根毛への感染確率が高まり根こぶ病の発病を助長する.すなわち,土壌へのリン酸過剰施用が根こぶ病の発病を助長することが明らかになった.
著者
村上 圭一 篠田 英史 丸田 里江 後藤 逸男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.53-58, 2004-02-05
被引用文献数
4

東京都三鷹市内において転炉スラグを利用した根こぶ病対策試験を実施した.酸性改良区にはさらに殺菌剤無散布区,PCNB区,フルジアナム粉剤区,フルスルファミド粉剤区を設けた.これらに,ブロッコリー苗を定植し,3ヵ月後に収穫した.定植時の土壌pH(H_2O)は5.9であったが,転炉スラグの施用により7.5程度に,収穫時には7.9となった.転炉スラグ施用区では,顕著な発病抑制効果が認められ,とくにフルスルファミド粉剤との併用が効果的であった.また,ブロッコリー外葉部の無機成分分析と花蕾部の栄養分析を行った結果,改良区におけるブロッコリー葉部のボウ素含有量は無改良区の約2倍に達した.転炉スラグを多量施用しても,ブロッコリーの生育や品質に悪影響を及ぼすことはなかった.すなわち,ブロッコリー根こぶ病対策のための土壌酸性改良資材としての転炉スラグの有効性と実用性が確認された.