著者
村山 研一
出版者
地域ブランド研究会事務局
雑誌
地域ブランド研究 (ISSN:18812155)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-29, 2009-12-31

平成の市町村大合併によって市町村数は半数近くに減少した。多くの市町村名称が消えると共に、多くの新市町村名が生まれた。本稿では、特に新設方式をとった市町村がどのように新市町村名称を選択したかを分析した。命名方式をいくつかに分類してみると、50%近くは従来の市町村名を継承し、40%近くが地域の地名(広域名、地域の通称名、自然地名等)を採用した。しかし、合成地名と創作地名という変則も10%近くあった。ただし、変則的命名は、明治の大合併と比較して比率が高くなっているわけではない。特に合成地名の比率は低くなっていると推測できる。しかし、少数であっても変則の範囲が拡大し、さらに、かな使用の市町村名称が急増しているということが、新たな現象および問題として指摘できる。論文の最後で、市町村名の機能について検討したが、変則的な命名は、一般的には市町村名が果たす機能を弱体化するものと判断せざるを得ない。
著者
村山 研一
出版者
地域ブランド研究会
雑誌
地域ブランド研究 (ISSN:18812155)
巻号頁・発行日
no.2, pp.29-56, 2006-12

本稿では、北海道の美瑛町と小樽市の二事例を取り上げ、地域の知名度と価値的なイメージがどのようにして形成されるかを取り上げる。美瑛町は、かつては知名度の低い場所であった。また、小樽には「斜陽の街」というマイナスのイメージがっきまとっていた。しかし、1980年代の終わり頃から、美瑛は「丘の街」として、小樽は「運河と硝子細工の街」として知られるようになり、多くの観光客を集めるようになった。この2つの地域において生じた出来事とその意図せざる結果について、プロセスを追いながら地域のブランド化が達成されるために必要な諸条件(特に視覚的シンボルの重要性)と諸課題について論じる。 / In this essay, I take two cases of place branding and consider how positive images of places are created. Biei is a small town in Hokkaido, situated in farm areas, but formerly few people knew Biei. But it is now well-known as the Town of Hills and many tourists visit to Biei. Otaru was known as an example of sunset city, but now is well-known as the City of Canals and Glassblowing and a tourist spot. I analyze the process of changing or creating the images of them, and indicate the importance of visual symbols (icons) witch visualize and typify the positive elements of those places.
著者
朝倉 慎悟 村山 研一 蔀 拓也 斉藤 知弘 渋谷 一彦
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.37, no.39, pp.9-12, 2013-09-06

NHKでは,スーパーハイビジョンなどの大容量コンテンツのサービスを次世代の地上放送で実現するために,大容量無線伝送技術の研究を進めている.これまでに,偏波MIMO伝送の誤り訂正にLDPCブロック符号を適用するとともに,伝送システムの所要C/Nを低減する復号方法を検討・報告してきた.1024QAM, 4096QAMといった超多値QAMでの伝送において信号を安定して受信する為には,誤り訂正符号の高性能化を行い,伝送システムにおける所要C/Nの更なる低減が求められる.そこで,LDPCブロック符号の誤り訂正能力を凌駕することが知られている空間結合LDPC符号の検査行列を新たに試作し,偏波MIMO-超多値OFDM伝送への適用を計算機シミュレーションによって検討したので報告する.
著者
田口 誠 村山 研一 古田 浩之 高田 政幸 濱住 啓之 澁谷 一彦
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, no.32, pp.43-46, 2009-07-30
参考文献数
5
被引用文献数
6

緊急地震速報とは、地震直後の小さな揺れをとらえて大きな揺れの前に震度や震源などを予測して発表する気象庁のサービスである.NHKでは,気象庁からの緊急地震速報を放送番組の中で自動送出している.日本の地上デジタル放送の伝送方式には、映像や音声などの本線信号を送るキャリア以外にAC(Auxiliary Channel)と呼ばれるキャリアがある.このACは、映像符号化やインターリーブの処理を行わないため遅延時間が少なく,DBPSK変調を用いていることから雑音や干渉に強い特長がある.今回、部分受信セグメント(ワンセグ)内のACを利用して緊急地震速報を伝送する方式の検討を行い,雑音やフェージング環境におけるワンセグACの伝送特性をシミュレーションと実験により評価した.
著者
村山 研一
出版者
信州大学
雑誌
地域ブランド研究 (ISSN:18812155)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.5-32, 2005-12-04

日本では、高度成長期において、地方を発展させるために工業開発の手法が導入されてきた。すなわち、行政が基盤投資を行って工業の誘致・導入が図られてきた。しかし、グローバル化の進展は、工業空洞化状態を作り出し、これまでの工業開発戦略を採用し続けることは困難になった。今日、地域の活性化を図るためには、内生的な発展の手法を検討する必要がある。本論文で提唱するのは、内生的発展の一手法としての「地域ブランド」である。ブランドはマーケッティング分野で近年重視されるようになってきた。本稿では、ブランド化の考え方を「場所」に対して拡張する。地域社会が内在的に持つ諸資源を拾い上げながら、一つのシンボルに集約させ、地域に新しい魅力を作り上げることが地域ブランドの手法である。地域ブランドは、私的ブランドとは異なり、地域の社会財としての意味を持つ。それゆえ、ブランド化の手法においても異なったアプローチが必要となる。本稿では、そのための提言がなされている。
著者
大内 雅利 村山 研一
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、農村と農家の社会変動を、それらを構成する最小単位である個人のライフコースからみようとした。それは諸ライフコース間の協調・対立・妥協、さらには新しい制度形成によって説明されよう。第1に、特に顕著な対立は昭和ヒトケタ男性と女性の間にある。前者は現在70歳前後で戦後農業の担い手であり、今は農協組合長などの役職につき農村権力構造の頂点にいる。女性の地位向上と対立する世代である。第2に、背後にあるのは農家女性のライフコースの変化である。女性のライフコースは結婚に大きく左右される。近年は非農家出身・農業経験なし・農外就業・恋愛結婚というライフコースが多い。これは昭和ヒトケタ世代の農家出身・農業手伝い・見合結婚というライフコースとは著しく異なる。家制度と農業の外へと出た経験をもたない。第3に、非農的な体験を積み重ねた農家女性はこれまでの世代と異なり、直売店を持つなど積極的に外に出るようになった。第4に、親のライフコースは子のライフコースのモデルとならなくなった。むしろ子のライフコースが親のライフコースに影響するという、ライフコースの相互規定的な現象がみられる。第5に、合い異なるライフコース間の諸対立を社会的に調停する一つの試みが家族経営協定である。これは行政の主導によって、宮崎県高城町に多くみられた。第6に、現代の農村においてもっとも異質なライフコースは非農家出身の新規就農者であろう。新規就農者のライフコースは未だ安定していない。なかには自然農法のグループもいる。このように現代の農村は、ジェンダー・世代・出身などによって多様なライフコースの持ち主が構成する社会となり、それらの間の対立と共同によって変動している。