著者
楠本 大 Dai Kusumoto 東京大学大学院農学生命科学研究科:(現)宇都宮大学野生植物科学研究センター Graduate School of Agricultural and Life Sciences The University of Tokyo:(Present office)Center for Research on Wild Plants Utsunomiya University
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 = Journal of tree health (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.65-74, 2004-09-30
参考文献数
71
被引用文献数
4

針葉樹の多くは傷害樹脂道を形成し,樹脂を分泌する.傷害樹脂道とは,傷などの刺激によって形成される樹脂道のことで,菌や昆虫の侵入を妨げるのに重要な役割を果たしていると考えられている.傷害樹脂道は木部あるいは師部の形成層付近に形成され,形成が完了するには1〜2カ月間を要する.傷害樹脂道はエチレンを人為的に処理することでも誘導され,処理により樹脂生産は促進される.このことから,樹木がストレスを受けたときに生成するストレスエチレンの関与が示唆されている・菌や昆虫の加害のような継続的刺激は,物理的傷害のような一時的な刺激よりもエチレン生成を促進し,傷害樹脂道の形成範囲や樹脂の分泌量を増加させると考えられる.また,エチレンは環境ストレスによっても生成され,病虫害と複合して作用することによって,著しいエチレン生成を誘導する可能性が推察される.