著者
佐々木 彰紀 神人 彪 東野 正明 寺田 哲也 河田 了
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.5, pp.698-703, 2023-05-20 (Released:2023-05-31)
参考文献数
17

唾液腺癌は頻度が低く, その中でも顎下腺癌の占める割合は低く希少癌である. 大阪医科薬科大学病院で加療を行った顎下腺癌31例の検討を行った. 男性23名, 女性8名であり, 年齢の中央値は65歳であった. 最も多い組織型は腺様嚢胞癌および唾液腺導管癌であり, 次いで粘表皮癌と多形腺腫由来癌であった. 病理組織学的悪性度は低/中悪性が12例, 高悪性が19例であった. 術前の穿刺吸引細胞診によって, 悪性と診断できた症例は21例, 悪性度が診断できた症例が11例であった. 5年疾患特異的生存率は59.2%であり, ステージ別では, ⅠからⅣでそれぞれ, 100%, 100%, 71.1%, 25.0%であった. 再発例と非再発例を比較したところ, 再発が有意に多い要因として, ステージⅣ, リンパ節転移陽性, 高齢が挙げられた. 顎下腺癌は耳下腺癌と比較して高悪性が多かった. 耳下腺癌の低/中悪性において頻度の高い基底細胞腺癌, 分泌癌, 上皮筋上皮癌が顎下腺癌では1例も認められなかったことが予後不良の要因であると考えられた.
著者
東野 正明 林 伊吹 高橋 俊樹 須原 均 二村 吉継 櫟原 新平 青野 幸余 松尾 彩 川上 理郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S181-S188, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
8

心臓血管外科手術患者において、術後の嚥下障害を術前や術直後に予測できるかどうかを検討した。症例は、心臓血管手術後経口摂取に問題があり、本院栄養サポートチーム (NST) に栄養管理の依頼があった 20 例 (男性 14 例、女性 6 例) で、手術から最終食事内容に至るまでの期間が 1 カ月未満であった 8 例 (A 群) と、1 カ月以上かかり術後の嚥下障害が大きな問題となった 12 例 (B 群) に分けて、両群間で比較検討した。その結果、心臓血管手術後嚥下障害を起こす要因として、年齢 (70 歳以上)、Body mass index (BMI)≧25 の肥満もしくは BMI < 18.5 の低体重、高度心機能低下 (EF ≦ 40%) の有無、脳梗塞の既往の有無、呼吸器疾患の既往の有無、緊急手術か否か、大動脈手術か否か、長時間手術 (10時間以上) か否か、の 8 項目のうち 4 項目以上に該当すると嚥下障害を引き起こす可能性が高いと考えられた。その中でも緊急手術、肥満、大動脈手術が影響していると考えられた。この 8 項目をスコア化したものと手術から最終食事形態に至るまでの日数との間に相関が認められた。また、心臓血管外科手術後患者の嚥下障害に対する NST 介入の効果も示された。術前スコアから術後の嚥下障害のリスクがあると予測される患者家族に対しては、十分な術前説明をするとともに、適切かつ迅速な対策を講じる必要があると考えられた。