著者
本田 和也 森塚 倫也 伊藤 健大 松尾 彩香 日宇 健 川原 一郎 小野 智憲 原口 渉 牛島 隆二郎 堤 圭介
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10802, (Released:2020-08-31)
参考文献数
40

要旨:日本における脳卒中診療は,患者数増加・高齢化等,多様な問題に直面しており,専門医不足に伴う過重労働や燃え尽き症候群が危惧されている.医師以外の人的資源を有効活用した診療システムが必要であり,高度実践看護の能力を持つ nurse practitioner(NP)はこの診療分野に貢献し得る.NPは医師の指導・協働下に,専門性の高い特定行為や医師業務の代行が可能であり,脳卒中チーム内の多職種ならびに患者・家族間をコーディネートする中核的存在としても活躍している.米国ではすでに半世紀前より,医師の過重労働を予防・緩和する解決策のひとつとして,NP制度が多方面の医療現場で積極的に導入されてきた.NPの能力・技量や果たし得る業務の可能性は,未だ医師の間で十分に認識されている状況ではない.日本版NPは,今後の本邦脳卒中診療システムを改革する医療職として期待される存在である.
著者
東野 正明 林 伊吹 高橋 俊樹 須原 均 二村 吉継 櫟原 新平 青野 幸余 松尾 彩 川上 理郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S181-S188, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
8

心臓血管外科手術患者において、術後の嚥下障害を術前や術直後に予測できるかどうかを検討した。症例は、心臓血管手術後経口摂取に問題があり、本院栄養サポートチーム (NST) に栄養管理の依頼があった 20 例 (男性 14 例、女性 6 例) で、手術から最終食事内容に至るまでの期間が 1 カ月未満であった 8 例 (A 群) と、1 カ月以上かかり術後の嚥下障害が大きな問題となった 12 例 (B 群) に分けて、両群間で比較検討した。その結果、心臓血管手術後嚥下障害を起こす要因として、年齢 (70 歳以上)、Body mass index (BMI)≧25 の肥満もしくは BMI < 18.5 の低体重、高度心機能低下 (EF ≦ 40%) の有無、脳梗塞の既往の有無、呼吸器疾患の既往の有無、緊急手術か否か、大動脈手術か否か、長時間手術 (10時間以上) か否か、の 8 項目のうち 4 項目以上に該当すると嚥下障害を引き起こす可能性が高いと考えられた。その中でも緊急手術、肥満、大動脈手術が影響していると考えられた。この 8 項目をスコア化したものと手術から最終食事形態に至るまでの日数との間に相関が認められた。また、心臓血管外科手術後患者の嚥下障害に対する NST 介入の効果も示された。術前スコアから術後の嚥下障害のリスクがあると予測される患者家族に対しては、十分な術前説明をするとともに、適切かつ迅速な対策を講じる必要があると考えられた。