著者
松下 良平
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.202-215, 2015 (Released:2016-05-18)
被引用文献数
2

客観的根拠に基づいて教育の研究・実践・政策を一体的に進めようとするエビデンスに基づく教育は、一まとまりの意味システムとして特有の政治的機能を果たす。そのためその教育への批判は、その理論的前提への内在的批判とともに、その実行が再帰的に社会にもたらすものに目を向ける必要がある。教育観の変容を経て成立可能になったエビデンスに基づく教育は、それを要求してきた固有の歴史的・社会的文脈ゆえに教育を変質させ、教育の形骸化や空洞化をもたらすであろう。さらには教育学を廃棄に追い込んでいく可能性もある。
著者
松下 良平
出版者
金沢大学大学教育開放センター
雑誌
金沢大学サテライト・プラザ ミニ講演記録
巻号頁・発行日
2007-01-20

青少年の規範意識の低下から少年犯罪の凶悪化まで、子ども・若者たちの道徳をめぐる問題が近年しきりに話題にされています。しかし、そこでいわれる規範意識の低下や犯罪の凶悪化はほんとうなのでしょうか。むしろわれわれはあまりにも問題を表面的にとらえていないでしょうか。 子ども・若者たちの逸脱や犯罪の事実を安易に一般化することをやめ、かわりにそれらの事実の背後にあるもの――大人たちの逸脱や犯罪を見る目の変容や、子ども・若者たちの人間関係などの変容や、人びとの道徳のとらえ方の変化――に目を向けてみましょう。すると、事態の複雑にして意外な様相があらわになってきます。性急に「心の教育」や規範教育の強化を叫ぶ前に、ここでは事態の真相をじっくりと見きわめてみようと思います。