著者
高井 ゆと里 松井 健志
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.29-36, 2021-09-28 (Released:2022-08-01)
参考文献数
45

COVID-19パンデミック下において、研究者たちは新型コロナウイルスと対峙するための治療法やワクチン の開発に挑んでいる。しかし、そうした治療薬やワクチンの殆どすべては、妊婦に使用されることを想定していない。それらが妊婦に使用される場合の有効性や安全性は、研究されていないのである。妊婦という集団 は、COVID-19関連研究から排除されることによって、COVID-19に対処するための治療やワクチンから遠ざ けられている。歴史的に、妊婦は臨床研究から排除されてきた。それは妊婦と胎児を守るという「倫理的な理由」に基づくものであった。本論文では妊婦が研究から排除されてきた歴史を整理したのち、妊婦の積極的な研究包摂を説く議論や運動が近年急速に高まっている米国の状況を確認する。その作業を通じて、妊婦の研究包摂を積極的に支持する議論を正当化するにあたって「正義」の概念が重要な役割を果たすことを確認する。
著者
松井 健志 高井 寛 柳橋 晃
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.50-57, 2020-09-26 (Released:2021-08-01)
参考文献数
58

近年、臨床研究における研究倫理審査の受審・承認に関する虚偽記載をめぐる問題事案が国内外において少なからず散見されるようになってきている。しかし、報告される事案の数自体が少ないことに加えて、主たる「研究活動の不正行為」とされる捏造、改竄、盗用の陰に隠されてきたことから、本問題の倫理的な深刻さや何がそもそも問題であるかということについて、研究公正を含む研究倫理学の中でもほとんど検討されていない。そこで本論では、過去十年余りの間に国際的及び国内的に問題となった、研究倫理審査の受審・承認に関する虚偽記載が確認されたいくつかの臨床研究事案を取り上げつつ、本問題について研究倫理学的観点から考察した。
著者
松井 健志 井上 悠輔 楊河 宏章 高野 忠夫
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.85-94, 2019-09-26 (Released:2020-08-01)
参考文献数
25

近年、臨床研究計画や研究内容に関連した倫理的問題への対応等について助言や推奨を与える研究倫理コンサルテーション・サービスの活動が広がりつつある。しかし、その活動が扱う臨床研究の内容やそれを取り巻く法・規制環境が高度化・複雑化する中で、それを担当する「研究倫理コンサルタント」には高度な専門的知識等が必要となってきているが、研究倫理コンサルタントに果たしてどのようなコンピテンシーが必要であるか、ということの検討はこれまでほとんどなされていない。診療上の倫理問題について当事者に助言を行う臨床倫理コンサルテーションでは、これに先行してその担い手である臨床倫理コンサルタントに必要なコンピテンシーについて検討されてきた。そこで本研究では、臨床倫理コンサルタントでのコア・コンピテンシー・モデルを参考に、研究倫理コンサルタントに必要なコア・コンピテンシーについて検討を行い、モデルの作成を試みたので報告する。