著者
井上 悠輔 神里 彩子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.107-113, 2006-09-25 (Released:2017-04-27)
参考文献数
19

イギリスの受精・胚研究認可庁(HFEA)は過去15年間にわたって、生殖捕助医療や胚研究など国内での胚を用いる活動を監督してきた。イギリスの法体制は胚の保護すべき価値を成長過程に準じて連続的にとらえており、HFEAが公的な審査組織として個々の事例について判断してきた。しかし、このことはHFEAの裁量への依存をもたらし、最近では特に立法府との権限の調整が問題として指摘されるようになった。生物医学の倫理問題に関連して日本をはじめいくつかの国で公的審査が導入されている中、こうした組織の性質や裁量のあり方をめぐるイギリスの議論は示唆深い。
著者
井上 悠輔
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.135-141, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Main points of ISSCR (The International Society for Stem Cell Research)’s amended guidelines of 2016 were summarized. The guidelines are presented as a single document based on the preceding two ISSCR guidelines, with a preamble that articulates core ethical principles for guiding both basic and clinical stem cell research: the integrity of the research enterprise, the primacy of patient welfare, respect for research subjects, transparency, and social justice. As they concern irreproducible results and the incomplete reporting of findings from preclinical studies, they strongly require rigorous demonstration of preclinical evidence and rigorous peer review of clinical trial protocols and study reporting.
著者
八代 嘉美 標葉 隆馬 井上 悠輔 一家 綱邦 岸本 充生 東島 仁
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.137-146, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

再生医療は社会から高い注目を集めており,その成果は社会のあり方自体に大きなインパクトを与える可能性がある.そのため本格的な普及が始まる以前の段階から,研究者や医療従事者と社会の広い層がその有用性とリスクの理解を共有し,患者が研究や治療への参画を判断する基盤を整えることが重要である.研究機関や企業の広報では,研究成果を発信する際にある程度の宣伝の色彩はやむを得ない部分があるが,学会という非営利セクターが主体となる場合は,客観的かつ冷静な情報発信による知識基盤の整備へとつなげられる可能性がある.本稿では日本再生医療学会が実施してきた事業を紹介し,エマージングテクノロジーに関するコミュニケーション,あるいはそうした活動に関する患者・市民参画のモデルを構築する一助としたい.
著者
井上 悠輔
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.156-163, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
14

医学・生命科学研究の活性化は,人体を対象とする研究が一層活発になることを意味する.人を観察して一般化されうる知識を引き出すための科学研究と,研究に参加する個々人の多様な意思とのバランスをどう取るべきだろうか.本稿では,人体に由来する生物学的な試料(人試料)と,こうした研究活動の基盤として国を挙げて整備されているバイオバンクに注目し,特に「同意」をめぐる多様な理解と論点を検討する.
著者
松井 健志 井上 悠輔 楊河 宏章 高野 忠夫
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.85-94, 2019-09-26 (Released:2020-08-01)
参考文献数
25

近年、臨床研究計画や研究内容に関連した倫理的問題への対応等について助言や推奨を与える研究倫理コンサルテーション・サービスの活動が広がりつつある。しかし、その活動が扱う臨床研究の内容やそれを取り巻く法・規制環境が高度化・複雑化する中で、それを担当する「研究倫理コンサルタント」には高度な専門的知識等が必要となってきているが、研究倫理コンサルタントに果たしてどのようなコンピテンシーが必要であるか、ということの検討はこれまでほとんどなされていない。診療上の倫理問題について当事者に助言を行う臨床倫理コンサルテーションでは、これに先行してその担い手である臨床倫理コンサルタントに必要なコンピテンシーについて検討されてきた。そこで本研究では、臨床倫理コンサルタントでのコア・コンピテンシー・モデルを参考に、研究倫理コンサルタントに必要なコア・コンピテンシーについて検討を行い、モデルの作成を試みたので報告する。
著者
永井 亜貴子 武藤 香織 井上 悠輔
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.223-232, 2018 (Released:2018-05-29)
参考文献数
13

目的 全国の市町村における本人通知制度の普及状況を明らかにし,バイオバンク・ジャパン(BBJ)の予後調査の結果とあわせて分析することにより,本人通知制度が学術研究を目的とした住民票の写しの利用に与える影響について検討する。方法 2015年2~3月に全国の1,741の市町村(特別区を含む)を対象に,本人通知制度の導入状況や同制度の運用形態,学術研究目的の住民票の写しの交付に関する判断基準等について,電話調査を実施した。電話調査で明らかになった本人通知制度の導入の有無と,BBJで2011~2016年度までに実施した計4回の予後調査における住民票の写しの請求に対する交付可否の結果との関連について検討した。結果 電話調査の結果,1,741市町村から回答が得られた(回収率100%)。本人通知制度をすでに導入している市町村は28.9%であり,導入予定がある市町村は5.1%であった。学術研究目的での住民票の写しの交付の判断基準については,担当者ごとに住民基本台帳事務処理要領をもとに判断している市町村は84.8%,担当者間で共有する一定の基準などがある市町村は14.4%であった。BBJの予後調査で行った住民票の写しの交付請求に対する交付拒否の理由として,同意書に住民票の利用について明記されていないことが挙げられ,一部の市町村は本人通知制度の開始に伴う交付判断基準の見直しを挙げていた。本人通知制度の導入の有無とBBJの予後調査における住民票の写しの交付請求への可否の結果の間に,有意な関連は見られなかった。結論 BBJの予後調査で行った住民票の写しの交付請求の拒否理由の一部に本人通知制度の導入による判断基準の見直しが挙げられていた。多くの市町村に学術研究目的での住民票の写しの交付に関して一定の判断基準がないことから,今後,学術研究目的の住民票の写しの交付判断に必要な研究の公益性に関する基準を示すなど,市町村を支援する取り組みが必要である。