著者
小林 和幸 松井 崇晃 重山 博信 石崎 和彦 阿部 聖一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.250-255, 2002-06-05
被引用文献数
2

切り餅の食味官能試験方法を確立するため,新潟県作物研究センターの生産力検定試験供試材料を用いて検討した結果を報告する.試料米の調製:供試玄米を粒厚1.85mm以上の整粒に調製した.調製した玄米を搗精歩合89%に搗精し,精白米を10℃で1週間以上貯蔵して,米粒水分の均一化を図った.切り餅製造:家庭用製餅器(SD-3603,ナショナル)を使用し,以下のように行った.規定量の白米を洗米し,15時間吸水させた.脱水後,餅つき機に規定量の蒸し水を注入,うすにもち米を移してセットし,以降,自動操作で餅をついた.ビニールを敷いた型枠に餅を移し,上からさらにビニールをかけて,のし棒で1.5cmの厚さに圧延した.一昼夜放冷後4×6cmに裁断し,切り餅を作成した.官能試験方法:供試点数は基準のわたぼうしを含めて4点とし,熟練した15名以上のパネルで実施した.水温75℃で10分間ゆでた餅を皿に盛り,外観・白さ・コシ・粘り・のび・味・舌触り・総合評価について,11段階で評価した.平均値の有意差検定により,,基準との差で判定を行った.生産年が異なる育成材料および比較に供試したこがねもちの食味評価から,本法による切り餅の食味官能試験方法は有効であると判断された.
著者
石崎 和彦 橋本 憲明 松井 崇晃 名畑 越夫 神戸 崇 奈良 悦子 星 豊一 阿部 聖一 小林 和幸 重山 博信 平尾 賢一 金田 智
出版者
新潟県農業総合研究所
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-66, 2015 (Released:2015-06-24)

「コシBL13号」は,新潟県農業総合研究所作物研究センターにおいて開発されたいもち病真性抵抗性同質遺伝子系統である。1996年より,戻し交配法を適用し,「K59」を1回親,「コシヒカリ」を反復親として育成された。いもち病真性抵抗性遺伝子型はPitと推定される。2011年から奨励品種決定調査に供試され,いもち病抵抗性以外の特性において「コシヒカリ」と類似性が高いことから,2013年に新潟県の奨励品種に採用された。なお,「コシBL13号」は,2014年に種苗法に基づき品種登録された。
著者
松井 崇晃 石崎 和彦 中村 澄子 大坪 研一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.204-211, 2013-05-15 (Released:2013-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
5

イネにおいてLgc1遺伝子を用いて胚乳貯蔵タンパク質中のグルテリンを低下させた低グルテリン品種が開発されている.本報告ではLgc1座に関する準同質遺伝子系統対を2組用いてLgc1遺伝子による米の低グルテリン化が米粉の特性や米飯の食味に与える影響を検討した.今回用いた準同質遺伝子系統対では低グルテリン系統で味度値の低下が見られ,米飯の食味低下が示唆された.また,低グルテリン系統のアミロース含有率は通常のタンパク質組成の系統を約1ポイント上回った.ラピッド·ビスコ·アナライザーを用いた糊化物理特性において低グルテリン型の系統では最終粘度が有意に上昇し,コンシステンシーが増加した.テンシプレッサーを用いた米飯の物性測定においては米飯表層の粘りが低グルテリン型の系統で有意に低下し,硬さと粘りのバランス度においても有意な低下が認められた.15°Cにおける白米粒の吸水においては低グルテリン化による有意な差は認められなかった.一般に低グルテリン品種は通常のタンパク質組成の品種に比べて米飯の食味が不十分であることがこれまでにも指摘されている.今回の測定において低グルテリン系統と通常のタンパク質組成を持つ系統との間に見られた差がタンパク質組成の変化だけによるものとは限定できなかったが,低グルテリン品種の米飯の食味や加工特性の違いの一因と考えられた.
著者
石崎 和彦 金田 智 松井 崇晃
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.301-305, 2007-04-05

糯米の多くは加工された後に流通することから,加工適性が重要視される.切り餅やあられの製造では,餅つきから切断または包装までの時間短縮のため,硬化性の優れた糯米,即ち餅つき直後の生地を冷却したときに速やかに硬化する精米が求められる.そこで,水稲嬬品種の栽培条件と加工適性の関係を明らかにする目的で,穂肥窒素の施用と移植期及び品種の違いが餅生地の冷却後の硬さ(硬化度)に与える影響を調査した.その結果,穂肥窒素の施用は硬化度に与える影響が小さなことが明らかであった.しかし,穂肥窒素の施用と品種との間に交互作用が認められ,"わたぼうし"は窒素施用量の増加にともない硬化度が低下し,"こがねもち"は増大した.一方,移植期の早晩及び品種の違いによって硬化度に有意な差が認められ,それぞれの寄与率は6.4%及び81.0%であった.これに符合して,移植期の15日の遅れにより硬化度が0.90kg cm^<-2>低下し,品種間では"わたぼうし"が"こがねもち"よりも3.10kg cm^<-2>低い値を示し,硬化度は品種の違いに大きく依存することが明らかであった.以上のことから,加工適性の優れた糯米を生産するためには,品種の選択を最も重視し,さらに,登熟気温が高まるように移植期を早めることが望ましい.また,穂肥窒素の施用は品種によつて反応が異なるものの,移植期及び品種の違いに比べて硬化度に対して大きな影響を与えないことから,食味を低下させない範囲内で多収を目指した栽培が可能と思われた.