著者
田中 浩介 浦辺 幸夫 是近 学 勝 真理 大窪 伸太郎 松井 洋樹 大林 弘宗 菅田 由香里 越田 専太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0397, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】非接触型の膝前十字靭帯(ACL)損傷は、ジャンプ着地動作、ストップ動作、カッティング動作などのスポーツ動作時に多く発生している。近年のビデオ解析により、動作時の脛骨の過剰な回旋や脛骨の前方移動がACL損傷を助長する可能性があると考えられている。我々は動的に脛骨の移動量および大腿骨、脛骨の回旋角度を測定可能な膝関節動作解析装置(以下、装置)を製作し、3次元での運動解析を行っている(2005)。本研究は、装置を用いてACL損傷好発肢位を抑制するために開発された膝サポーターの効果を運動学的に解析することを目的とした。【方法】対象は下肢に特別な既往のない女性10名とした。対象は課題動作として、30cm台から両脚での着地動作を行った。装置を用いて着地動作中の大腿骨および脛骨の回旋角度を測定した。角度表記は外旋をプラス、内旋をマイナスとした。本研究で用いた膝サポーターは、ACL損傷の受傷好発肢位を抑制するために開発されたものであり、テーピング効果をより得られるように工夫された構造を有している。測定は、膝サポーター非装着時、比較のための既存膝サポーター装着時、開発された膝サポーター装着時にそれぞれ行い、膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度に差がみられるか検討した。【結果】足尖接地時における大腿骨および脛骨回旋角度(平均値±標準偏差)は、それぞれ膝サポーター非装着時に33.6±14.9度、-27.0±15.8度、既存膝サポーター装着時に21.7±11.7度、-21.3±12.1度、開発された膝サポーター装着時に5.8±2.3度、-4.3±0.4度であった。大腿骨に対する脛骨の回旋角度は膝サポーター非装着時に-62.4±37.3度、既存膝サポーター装着時に-43.1±23.4度、開発された膝サポーター装着時に-10.1±2.7度であった。いずれも膝サポーター非装着時、既存膝サポーター、開発された膝サポーターの順に絶対値は小さな値となった。【考察】本研究では、膝サポーター装着によりジャンプ着地時の大腿骨および脛骨の回旋角度が変化するかを確かめた。膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度の絶対値は減少する傾向がみられ、開発された膝サポーターのほうが、既存のサポーターよりも回旋角度の抑制が強かった。また、足尖接地時には、いずれも脛骨は大腿骨に対して相対的に内旋していたが、開発されたサポーター装着時に最も小さな値であった。ACLは走行上、下腿が内旋した際に伸張される。開発された膝サポーターの装着により、着地初期の内旋角度は非装着時と比較して、およそ1/6まで減少していた。以上のことより、開発された膝サポーターは着地時のACLに加わるストレスを減少させ、ACL損傷を予防することができる可能性が示唆された。
著者
大林 弘宗 浦辺 幸夫 宮下 浩二 松井 洋樹 井尻 朋人 武本 有紀子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0325-C0325, 2006

【目的】 ストリームライン(stream line;SL)とは、水の抵抗を軽減するために水中で横一線に近い状態をとる姿勢であり、競泳競技の基本となっている。その一方で、SL姿勢時の過度な腰椎前彎が腰痛を引き起こす要因となることが言われている。しかし、競泳競技にみられる肩関節を中心とした上肢の運動と、腰椎アライメントの関連について研究されたものは少ない。本研究はSL姿勢に伴う肩関節屈曲角度の変化と腰椎前彎角度の関係を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】 対象は本研究の趣旨に同意を得られた肩関節および腰部に疾患がない健康成人50名(男性25名、女性25名)とした。平均年齢(±SD)は21.2±1.9歳であった。50名を競泳選手である競泳群27名(男性14名、女性13名)と競泳経験のない非競泳群23名(男性11名、女性12名)の2群に分類した。両群に直立位、肩関節屈曲30°、60°、90°、120°、150°、SL姿勢の計7姿勢をとらせ、各姿勢の腰椎前彎角を測定した。腰椎前彎角の測定にはスパイナルマウス(Idiag AG.Switzerland)を用いた。両群間において直立位と、各姿勢での腰椎前彎角の関係、ならびに姿勢を次の段階へと変えた際の腰椎前彎角の角度変化について比較した。統計処理は対応のあるt検定、studentのt検定を用いた。危険率5%未満を有意とした。<BR>【結果】 腰椎前彎角は競泳群では直立位(21.96±8.43°)と比較して、肩関節屈曲90°(25.22±7.01°)、120°(24.74±7.31°)、150°(24.19±7.29°)、SL姿勢(24.41±10.33°)において有意な変化を認めた(p<0.05)。非競泳群では直立位(20.74±7.53°)と比較して、肩関節屈曲30°(23.30±8.64°)、60°(23.39±8.36°)、90°(25.83±8.34°)、120°(24.48±8.02°)、150°(24.04±7.46°)、SL姿勢(28.43±7.56°)全てにおいて有意な変化を認めた(p<0.05)。しかし、両群間のそれぞれの姿勢の腰椎前彎角の比較において有意な差は認められなかった。また、腰椎前彎角は両群とも肩関節90°までは増加し、120°~150°までは減少した後、再びSL姿勢に向けて増加する傾向がみられた。肩関節150°~SL姿勢間にて、腰椎前彎が競泳群で0.22°増加するのに対して非競泳群では4.39°増加した (p<0.05)。<BR>【考察】 今回、肩関節屈曲150°~SL姿勢の間で、競泳群では腰椎の前彎がほとんど変化しなかったのに対し、非競泳群では前彎が増強した。これは肩関節屈曲最終域での肩甲帯の可動性が影響しているのではないかと考えた。競泳選手において、肩甲帯の可動性は一般成人よりも大きく(加藤ら、2005)、脊柱伸展による代償の必要が少なかったためと考える。逆に、肩関節の障害後に、肩甲帯の可動性が低下したまま競技を行うと、腰痛などの問題が惹起される可能性も考えられた。今後は肩屈曲最終域にて変化が大きいことに着目し、両群の相違点について検討したい。<BR>