著者
田中 浩介 ニシワキ ガストン 浦辺 幸夫
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0149, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】 関節位置覚、運動覚に代表される固有受容感覚は、力学受容器であるメカノレセプターからの神経入力により四肢や身体部位の位置関係や関節の動きを感じる感覚のことをいう。メカノレセプターは筋、腱、関節包、靭帯、皮膚などに存在しており、固有受容感覚の感知には複数の受容器が関与すると考えられる。本研究の目的は、皮膚への刺激が膝関節位置覚に与える影響を確かめることである。【方法】 対象は、膝関節に特別な既往のない20名の健常成人(男子10名、女子10名)であった。膝関節位置覚の測定は、コンピューター制御で作動する特製の装置(固有運動覚・固有位置覚測定装置,センサー応用社.日本)を用いた。測定肢は右脚とした。端座位にて膝屈曲90°を開始角度とし、設定角度は膝屈曲15°とした。開始角度から10°/secで他動的に下腿を動かし、設定角度に達した時点で5秒間停止させた。この停止中に下腿の位置を対象に記憶させ、その後下腿を開始角度に戻した。再び下腿を他動的に伸展方向に動かし、対象は設定角度に達したと判断した時点でスイッチを押した。この時の角度と設定角度との差の絶対値(Absolute Error, AE)を算出した。測定時は、外部からの刺激をアイマスクとwhite noiseの流れるヘッドフォンで遮断した。皮膚刺激には、ニトリート社製の50mm幅エラステイックバンテージを使用した。テープは、坐骨結節と踵骨後面中央を結んだ線の50%の長さを膝伸展位で線上の中央部に貼付した。テープの張力は、バネ秤を用いて4kgとした。テープの有無により位置覚測定を3回ずつ行い、AEの平均値の差を検定した。またテープ長とAEの相関の検定を行った。【結果】 テープなしのAE(平均±SD)は3.38±1.97°であり、テープありのAEは2.90±1.41°であった。テープの使用によりAEは小さくなる傾向がみられたがWilcoxonの符号付順位検定を用いた差の検定では差を認めなかった。貼付したテープ長は37.6±1.6cmであり、AEとの間に負の相関を認めた(r=-0.63)。【考察】 本研究では、皮膚にはパチニ小体、ルフィニ終末などのメカノレセプターが存在することから、テープにより皮膚感覚を刺激することで位置覚の精度が増すと考え、ある程度そのような傾向が示されたが、有意差を認めるには至らなかった。固有受容感覚には筋紡錘が最も重要な働きをしているといわれており、皮膚のメカノレセプターは位置覚に大きく関与しない可能性が示唆された。しかし、使用したテープが長いものほどAEは小さくなる傾向がみられた。感覚点のうち触・圧点は、大腿部で1cm2あたり10点程度であるといわれており、テープの長さの違いにより刺激した感覚点の数が異なったためであると考えられる。
著者
田中 浩介 浦辺 幸夫 是近 学 勝 真理 大窪 伸太郎 松井 洋樹 大林 弘宗 菅田 由香里 越田 専太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0397, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】非接触型の膝前十字靭帯(ACL)損傷は、ジャンプ着地動作、ストップ動作、カッティング動作などのスポーツ動作時に多く発生している。近年のビデオ解析により、動作時の脛骨の過剰な回旋や脛骨の前方移動がACL損傷を助長する可能性があると考えられている。我々は動的に脛骨の移動量および大腿骨、脛骨の回旋角度を測定可能な膝関節動作解析装置(以下、装置)を製作し、3次元での運動解析を行っている(2005)。本研究は、装置を用いてACL損傷好発肢位を抑制するために開発された膝サポーターの効果を運動学的に解析することを目的とした。【方法】対象は下肢に特別な既往のない女性10名とした。対象は課題動作として、30cm台から両脚での着地動作を行った。装置を用いて着地動作中の大腿骨および脛骨の回旋角度を測定した。角度表記は外旋をプラス、内旋をマイナスとした。本研究で用いた膝サポーターは、ACL損傷の受傷好発肢位を抑制するために開発されたものであり、テーピング効果をより得られるように工夫された構造を有している。測定は、膝サポーター非装着時、比較のための既存膝サポーター装着時、開発された膝サポーター装着時にそれぞれ行い、膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度に差がみられるか検討した。【結果】足尖接地時における大腿骨および脛骨回旋角度(平均値±標準偏差)は、それぞれ膝サポーター非装着時に33.6±14.9度、-27.0±15.8度、既存膝サポーター装着時に21.7±11.7度、-21.3±12.1度、開発された膝サポーター装着時に5.8±2.3度、-4.3±0.4度であった。大腿骨に対する脛骨の回旋角度は膝サポーター非装着時に-62.4±37.3度、既存膝サポーター装着時に-43.1±23.4度、開発された膝サポーター装着時に-10.1±2.7度であった。いずれも膝サポーター非装着時、既存膝サポーター、開発された膝サポーターの順に絶対値は小さな値となった。【考察】本研究では、膝サポーター装着によりジャンプ着地時の大腿骨および脛骨の回旋角度が変化するかを確かめた。膝サポーター装着により大腿骨および脛骨の回旋角度の絶対値は減少する傾向がみられ、開発された膝サポーターのほうが、既存のサポーターよりも回旋角度の抑制が強かった。また、足尖接地時には、いずれも脛骨は大腿骨に対して相対的に内旋していたが、開発されたサポーター装着時に最も小さな値であった。ACLは走行上、下腿が内旋した際に伸張される。開発された膝サポーターの装着により、着地初期の内旋角度は非装着時と比較して、およそ1/6まで減少していた。以上のことより、開発された膝サポーターは着地時のACLに加わるストレスを減少させ、ACL損傷を予防することができる可能性が示唆された。