- 著者
-
森本 武利
三木 健寿
能勢 博
山田 誠二
平川 和文
松原 周信
- 出版者
- 日本生気象学会
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.1, pp.31-39, 1981-04-15 (Released:2010-10-13)
- 参考文献数
- 8
- 被引用文献数
-
6
1.スポーツ飲料 (グルコース電解質混合溶液―G-E溶液) 摂取による, 発汗時体液量および体液組成変化を検討するとともに, 発汗時の自発的脱水の発生機序に検討を加える目的で発汗負荷実験を行った。実験には8名の被験者を用いて, それぞれ水分を全く与えない条件, 水を自由に摂取させる場合, およびG-E溶液を自由に与える場合の3条件下で, 高温環境 (36℃, 70%R.H.) 下にて運動負荷を加え, 水分バランスおよび血液性状の測定を行った。2.いずれの条件下にいても, 2時間の発汗負荷により約1.6kgの体重減少を来したが, 発汗直後における血液性状に関しては, ほとんど有意の差は認められなかった。自発的脱水の程度に関しても, 発汗中では水およびG-E溶液摂取による差は認められなかった。しかし3時間の回復期間をも含めて比較すると, 水負債は脱水実験で体重の3.4%, 水摂取実験で2.0%, G-E摂取実験で1.3%となり, 脱水実験に比して他の2条件下に有意差が認められた。3.水分喪失の体内分布は, 発汗直後ではいずれの条件下でもほぼ血漿25%, 間質液45%, 細胞内液30%である。その後の3時間において, 血漿量はいずれの条件下でも回復する。間質液量は脱水群ではさらに減少するが, 他の条件下ではほぼ同じである。しかし細胞内液量は脱水群ではさらに減少し, 水およびG-E溶液を摂取すると回復を示し, 特に後者では回復が著しい。4.これらの結果に基いて, 自発的脱水の機序について検討を加えた。