著者
松宮 義晴
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
no.54, pp.p1-11, 1983-02
被引用文献数
1

In order to analyze the results of selective fishing on demersal fishes in the East China and Yellow Seas, the effectiveness of effort was calculated from the catch and effort statistics by species and boat sizes. The yearly variation in the effectiveness of effort from 1952 to 1975 showed that yellow croaker and cuttlefishes had a decreasing and increasing tendency respectively, after 1965. In 1977, the material for subsidiary articles of diet (flatfishes, korai prawn, cuttlefishes and yellow sea bream) had a high value in the effectiveness of effort. The raw material for fish paste products (yellow croaker, hairtail, white croaker and lizardfishes) had a low value. The former was chosen as the target for the selective fishing. The seasonal change in the effectiveness of effort for a large sized boat was greater than that of other size categories, and was quite variable by species. The differences in the effectiveness of effort by tides were examined. During a spring tide, white croaker, flatfishes and lizardfishes had a larger value. The value of korai prawn and yellow croaker was larger during a neap tide.数多くの生物資源を対象としている以西底曳網漁業では価格の高い魚種を狙い,細かな漁場位置の選択や網口の高さの調整などをする選択操業が行われている.近年では漁獲の主対象がつぶし物から総菜物に変化している.ここでは多くの期間別漁区別魚種生物種項目別船型別の漁獲量・努力量統計を用い,値が大きいほど対象魚種を狙って操業していることを意味する努力量の有効度εを計算し,以西底曳網漁業における選択操業の実態を分析した. (1)1952年~1975年の努力量の有効度の経年変化をみると,つぶし物であるキグチは1965年以降急激に低下し,総菜物のイカは逆に上昇している. (2)年ごとの努力量の有効度の季節変化は,1965年まではどの魚種もεの増大の山と盛漁期が一致している傾向がみられた. (3)1977年の船型別資料によると,総菜物であるヒラメ・カレイ,タイショウエビ,イカ,レンコダイの努力量の有効度の値は大きかった.つぶし物であるキグチ,タチウオ,シログチ,エソの値は小さく,特にキグチはどの船型でも最低値であった. (4)1977年の大型船における努力量の有効度の季節変化は大きく,魚種間の差異も顕著である.中型船と小型船は季節変化,魚種間の差異とも小さい. (5)潮の大きさ別の資料(1977年)によると,シログチ,ヒラメ・カレイ,エソは大潮時に,タイショウエビ,キグチは小潮時に選択操業の度合が高まる.レンコダイ,イカ,タチウオは潮の大きさと関係が薄い. (6)農林漁区ごとに計算した努力量の有効度と曳網回数の漁場分布を例示し,選択操業の実態を把握した.1977年1月中旬の大型船はタイショウエビ,中型船はイカを,7月下旬~8月上旬の大型船はキグチ,中型船はエソを狙った選択操業を行っていた.
著者
松宮 義晴
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

最適な効果的な種苗放流効果法を検討し計画するために,一般的には放流実験が推進されてきた。正攻法の進め方であるが実験計画のむずかしさや,同一条件で実験できないため要因選択の困難さが伴う。最近では視点を変えたやり方として,シミユレーション法も適用されつつある。種苗放流は少ない情報や不正確なデータのもとで,より多くの収益(少ない損失)を得るように最適な行動(放流計画)を決定しなければならない。ここでは,不確実な対象(目的,目標)に情報を入れ,これを推定しながら,次の行動を決定するという考え方を明示する(条件付確率を基としたベイズ決定方式という)。情報と意思との調和のもとで,放流という意思決定がなされ,決定のタイムリミットや情報を得る調査の費用との関連も数量的に表示できる。具体的な例として,長崎県平戸島の志々伎湾のマダイと遊漁の価値も高い淡水魚のアユをとり挙げる。放流計画は種苗の数・大きさ,放流時期・場所などの検討課題があるが,ここでは環境収容力が存在するとの前提下で,天然魚の資源量と放流種苗の数(数量的対応問題)のみ検討対象とした。事前情報は前年秋〜初春の産卵親量,産卵数,流下仔魚,追加情報I(データ,過去の知見)は春の稚魚数や遡上期の数,追加情報IIは初夏の着底期や解禁日前の生息数とした。天然魚資源量の状態と放流種苗数という行動の関数である効用関数(効用とは金額の望ましさの程度を示す値,損失関数を使うこともある)の作成,最適放流計画に関した事前情報の効果(価値,影響),追加情報の価値,追加情報IからIIへの情報更新などについて具体例と対応しながら精査した。
著者
水江 一弘 清水 誠 松宮 義晴 竹村 暘 井田 斉 村松 毅
出版者
長崎大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

遠洋性のクロトガリザメを南西太平洋で練習船鶴洋丸の旋網実習で本年も多数漁獲し、雌雄の性的成熟体長・生殖分娩の時期・妊娠尾数などを明らかにし,年齢成長を知るため、現在、脊椎骨研摩標本作製中(水江)。サメ類乳酸脱水素酵素の遺伝的特性を知る目的でラブカの3つのアイソザイムを単離し、速度論的解析をした。ネズミザメ・アオザメ・ヨシキリザメ等の同酵素のアイソザイム分布を調べ、単離を試みた(村松)。本年度はウシエイ・カラスエイ・ナヌカザメ・トラザメ・などの6種類について、それらの核型を明らかにすることが出来た。これらの結果は87年発行の魚類学雑誌に投稿準備中である(井田)。ガンギエイ類の食性はその遊泳力に影響され、小型魚のときは、かなり雑食性を示すが、大型になるにつれ魚食性が顕著になる。胃内容量は体重の平均1〜2%,最大3-4%であった(竹村)。最適化技法により、板鰓類の適応戦略を模索した。卵数とサイズの進化,性比の包括適応度,成長と死亡の戦略,棲み場所と採餌の適応単位を題材として、仮説と知見を比較検討した(松宮)。エドアブラザメ,ラブカなど6種のサメについて、筋肉・肝臓の重金属(Hg,Zn,Fe,Cu)濃度を検討した。何れも従来のサメ類の分析値の範囲にあった(清水)。生態を異にする各種板鰓類の網膜および松果体の微細構造と感光色素などを調べ、いづれの結果も環境水中の光分布と大きな相関が得られた(丹羽)。板鰓類の歯の形態と組織構造について、食性および系統との関係を検討した。また、日本のペルム紀から第四紀の板鰓類の歯と皮歯の化石を、現生種との比較により研究した(後藤)。銚子沖および松生場,小笠原諸島周辺ならびにハンコック海山から採集した板鰓類の標本を比較検討したところ、それらの形態に地理的変異が存在することが明らかとなった(谷内)。プランクトン食性のウバザメの脳はミツクリザメおよびラブカと同様に深海性であることを示唆する形態を示し,ウバザメと食性が同じであるジンベエザメの脳には、強大な遊泳力の反映がみられる(佐藤)。