- 著者
-
松尾 藍
吉田 富二雄
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.40-49, 2015 (Released:2015-12-22)
- 参考文献数
- 14
本研究では,性ステレオタイプ行動に含まれるネガティブな側面に着目し,性ラベルが,性ステレオタイプ行動を行う人物の好ましさに及ぼす効果を検討した。実験は,実験参加者の性(男・女)と性ラベル(男性・女性・ラベルなし)を要因とする2要因混合計画(後者は実験参加者内要因)であった。実験参加者(N=182,男性87名,女性95名)は,男女の性ステレオタイプに沿った行動傾向の記述文を読み,その記述文に示された行動の行為者の性が明示されない場合(ラベルなし条件)と,行為者が男性の場合(男性ラベル条件)および女性の場合(女性ラベル条件)における行為者の好ましさを評価した。その結果,ネガティブな性ステレオタイプ行動に対し,行動と一致する性ラベルが与えられた場合,対象人物(ステレオタイプ一致人物)のネガティブな評価が緩和された。この効果は評価者が対象人物に対し外集団成員であるときのみ生起した。また,ネガティブな性ステレオタイプ行動に対し,行動と不一致の性ラベルが与えられた場合,対象人物(ステレオタイプ不一致人物)はよりネガティブに評価された。この効果は,女性ステレオタイプ行動に対して男性ラベルが与えられたときに,最も顕著であった。