- 著者
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藤 桂
吉田 富二雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.1, pp.50-63, 2014-03-30 (Released:2014-07-16)
- 参考文献数
- 37
- 被引用文献数
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インターネットの発展に伴い, 若年層において, インターネットがいじめの手段として用いられることも多くなってきた。このネットいじめに関しては, 多くの先行研究より, 被害者が誰にも相談しない場合が多いことが示されてきた。そこで本研究は, ネットいじめの被害者における, 周囲への相談行動が抑制されるまでの過程について検討を行った。その際, ネットいじめの脅威に対する認知が, 無力感を媒介して周囲への相談行動を抑制するという仮説に基づいて検討を行った。まず予備調査を実施し, 高校生および大学生8,171名より, 283名(3.5%)のネットいじめ被害経験者を抽出した。続いて本調査では, そのうち217名に, ネットいじめの被害経験, 被害時の脅威認知, 無力感, 周囲への相談行動を尋ねた。その結果, 被害時の脅威認知は, 孤立性, 不可避性, 波及性の3因子から構成されることが示された。また, ネットいじめ被害によって強められた脅威認知が, 無力感を経て相談行動を抑制していることも示された。これらの結果は仮説を支持するものであり, ネットいじめの速やかな解決のためには, 被害時の脅威認知を低減させる取り組みが重要であることが示唆された。