著者
加藤 駿一 井谷 修 松本 悠貴 大塚 雄一郎 兼板 佳孝 成田 岳 羽田 泰晃 根木 謙 稲葉 理 松村 穣 八坂 剛一 田口 茂正 清田 和也
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.155-159, 2023-06-01 (Released:2023-08-23)
参考文献数
22

心停止蘇生後患者の中でも,目撃の無いものについて,その予後を規定する要因について行われた先行研究は極めて少ない.そこで,目撃の無い心停止蘇生後患者の予後を規定する要因について調査した.2015 年 1 月~2019 年 5 月に入院した病院外心停止蘇生後患者のうち目撃例のない症例の生命学的・神経学的予後を規定する予測要因について,後ろ向きに調査した.解析対象例は 857 例であった.解析の結果,目撃の無い院外心停止蘇生後患者の生命学的・神経学的予後を良好にする予測因子として,年齢が若いこと,搬送中の心拍再開があること,発見者による胸骨圧迫が行われていること,初期波形ショックの適応があることであった.以上の結果を考慮し,救命率向上のための方策を検討すべきと考える.
著者
狩野 実希 浅野 充寿 松村 穣 村松 賢一 佐藤 明 大和 恒博 武居 一康 新田 順一 淺川 喜裕 牛木 真理子 高橋 雅弥 木村 知恵里
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.329-335, 2013 (Released:2014-09-13)
参考文献数
18

症例は, 67歳, 男性. 数カ月前より繰り返す失神発作を認めていた. 2010年9月, 意識消失を主訴に救急要請し, ショック状態で当院に搬送された. 心臓超音波検査で全周性の心嚢液貯留と右心系の虚脱所見を認めたため, 心タンポナーデと診断し入院した. 数日後には自然吸収されたが, その後も心嚢液の再貯留と消失を繰り返した. 心嚢穿刺により心嚢液の性状は血性であったが, 出血源の同定は困難であった. 出血源同定ならびに心タンポナーデ解除目的に試験開胸を行った. 右室前面の心筋表面より断続的に静脈性の出血がみられ, 縫合止血した. 術後, 心嚢液の再貯留なく経過した. 急激な心嚢内出血により心タンポナーデを呈することは決して稀ではないが, 本症例のように心嚢への出血と吸収が数日単位で起こり, 繰り返し心タンポナーデを引き起こす病態は今まで報告がなく, 病態機序がはっきりしなかった. 非常に稀な経過をたどった特発性心嚢内出血の症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.