著者
大塚 雄一郎 茶薗 英明 鈴木 誉 大熊 雄介 櫻井 利興 花澤 豊行 岡本 美孝
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.1200-1207, 2013-11-20 (Released:2014-01-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

石灰沈着性頸長筋腱炎の8例を経験した. いずれも頸部痛, 頸部可動制限, 嚥下痛を主訴に来院した. 診断と鑑別にはCT, MRIが有用であり, CTで頸長筋腱の石灰沈着を認めた. また造影CTでは咽後膿瘍においてみられる造影効果 (ring enhance) を認めなかった. MRIでは頸長筋が腫大しT2強調画像で高信号を呈した. これらの画像検査で咽後膿瘍, 化膿性脊椎炎を否定した上で7例を入院加療, 1例を外来加療とした.本疾患は特別な治療は不要とされるが, 症状が強いため咽後膿瘍, 化膿性脊椎炎が否定しきれず抗生剤を投与することが多い. 今回の8例でも全例で抗生剤が投与されていた. 本疾患は周知されておらず, 加療中に本疾患と診断された症例は4例だけであり, 残りの4例は咽頭後間隙炎, 咽後膿瘍の疑いの診断で加療されていた.
著者
伊原 史英 大塚 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.41-45, 2014-01-20 (Released:2014-02-22)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

破傷風は皮膚の創傷部位から芽胞が侵入・発芽し, 神経毒素を産生することで発症する. 一般的には外傷歴と臨床症状から診断するが, 外傷歴の明らかではない症例では, 臨床症状のみで診断しなければならない. 今回, われわれは外傷を伴わない2症例を経験したので報告する. 症例1は両頸部・肩部の痛み, 開口障害を主訴に受診し破傷風1期の診断となり, 治療を行った. 症例2は抗破傷風ヒト免疫グロブリンの使用を治療開始時に拒否したが, 翌日より症状が悪化したため, 翌日に抗破傷風ヒト免疫グロブリンを使用した. 入院5日目より数回の頸部の部分的な硬直性痙攣を起こしたが, 気道確保などは行わず治癒した.
著者
加藤 駿一 井谷 修 松本 悠貴 大塚 雄一郎 兼板 佳孝 成田 岳 羽田 泰晃 根木 謙 稲葉 理 松村 穣 八坂 剛一 田口 茂正 清田 和也
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.155-159, 2023-06-01 (Released:2023-08-23)
参考文献数
22

心停止蘇生後患者の中でも,目撃の無いものについて,その予後を規定する要因について行われた先行研究は極めて少ない.そこで,目撃の無い心停止蘇生後患者の予後を規定する要因について調査した.2015 年 1 月~2019 年 5 月に入院した病院外心停止蘇生後患者のうち目撃例のない症例の生命学的・神経学的予後を規定する予測要因について,後ろ向きに調査した.解析対象例は 857 例であった.解析の結果,目撃の無い院外心停止蘇生後患者の生命学的・神経学的予後を良好にする予測因子として,年齢が若いこと,搬送中の心拍再開があること,発見者による胸骨圧迫が行われていること,初期波形ショックの適応があることであった.以上の結果を考慮し,救命率向上のための方策を検討すべきと考える.
著者
大塚 雄一郎 根本 俊光 岡本 美孝
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.376-381, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
6

単純ヘルペスウイルス(以下HSV)初感染症は症状から歯肉口内炎型(単純疱疹性歯肉口内炎)と咽頭扁桃炎型(ヘルペス性咽頭炎)の2つに分類される。前者は歯肉腫脹や口腔の粘膜疹・アフタを生じ,後者は咽喉頭に多発する有痛性の粘膜疹・アフタと高熱のため全身状態が不良となる。HSV初感染症の診断には血清抗体価が有用であるが,HSV-IgMは発症早期には陽性化しないことに注意が必要である。その点に注意して診断した5例の小児の口腔・咽喉頭のHSV感染症を報告する。1例が男児で4例が女児で年齢は2から17歳であった。4例が歯肉口内炎型,1例が咽頭扁桃型であった。後者の咽喉頭病変の把握に喉頭ファイバースコピーが有用であった。全例で38℃以上の発熱を認め,4例が咽頭痛を訴え3例は食事摂取が困難であった。2例は外来で3例は入院加療とした。5例で抗HSV薬を投与し,1例は抗菌薬も投与し後遺症なく治癒した。
著者
大塚 雄一郎 根本 俊光 國井 直樹 花澤 豊行 岡本 美孝
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1225-1230, 2016-09-20 (Released:2016-10-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2

甲状腺吸引細胞診の最も一般的な合併症である頸部腫脹には2つの機序が知られている. 1つは穿刺部からの出血による血腫形成 (甲状腺内と甲状腺外), もう1つは穿刺刺激に反応した腺内血管の拡張によるびまん性甲状腺腫脹である. 後者は過去の報告で acute and frightening swelling of thyroid と表現される重要な合併症であるが, 適当な名称がないため本文では便宜上 dTSaFNA (diffuse thyroid swelling after fine needle aspiration) と称した. われわれは甲状腺の吸引細胞診後の血腫形成を1例と dTSaFNA を2例経験した.
著者
大塚 雄一郎 久満 美奈子 根本 俊光 松山 浩之 堀内 菜都子 福本 一郎 山崎 一樹 米倉 修二 花澤 豊行
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.6, pp.903-909, 2021-06-20 (Released:2021-07-01)
参考文献数
14

鼻口蓋管嚢胞は鼻口蓋管の胎生期の遺残上皮から発生する. 近年では低侵襲な内視鏡下の開窓術の報告が増えているが, 鼻口蓋神経や上歯槽神経を損傷するリスクがある. 開窓術による鼻口蓋神経の損傷が疑われた1例を経験した. 症例は55歳女性, 硬口蓋前方が膨隆し鼻中隔が前下方で左右に膨隆していた. CT・MRI で鼻腔内に進展する鼻口蓋管嚢胞を認めた. 全身麻酔下に鼻中隔粘膜を切開し嚢胞壁を切除して鼻口蓋管嚢胞を両側鼻腔内に開窓した. 術後に嚢胞は消失したが, 両側上顎の第1, 2, 3歯の違和感を訴え, 術後3年後も両側上顎第1歯の歯肉部の違和感がある. 開窓時の鼻口蓋神経の損傷が原因と考えた.
著者
大塚 雄一郎 藤田 昌樹 江川 広人 三條 恵介 藤本 舞 龍田 恒靖 松井 成幸 嶋田 淳 須田 直人
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.32-41, 2015-04-15 (Released:2015-04-27)
参考文献数
30
被引用文献数
4

The osteotomy line in sagittal split ramus osteotomy (SSRO) has a wide variation among surgeons. Recently, short lingual osteotomy (SL), in which the lingual split is limited up to the area near the mandibular foramen, is performed in many facilities. The reason for this is that SL can reduce the amount of interference between the proximal and distal segments, and shorten the operation time compared with Obwegeser osteotomy (Ob). However, since medial pterygoid muscles (MPM) are included in the proximal segments, SL is prone to induce backward rotation and distal positioning of the mandibular ramus due to the interference between MPM and distal segments when mandibular setback is performed.The purpose of this study was to compare the postoperative outcome of SL and Ob for mandibular prognathism. Twenty-two skeletal Class III cases without lateral deviation treated by SSRO in Meikai University Hospital, were examined. Among the 22 cases, 15 and 7 cases underwent SL and Ob, respectively. The postoperative changes of the proximal and distal segments were evaluated in lateral and postero-anterior cephalograms taken immediately before the surgery (T1), immediately after the surgery (T2), and one year after the surgery (T3). At T1, there was no significant difference in SNB, FMA, or gonial angle between the SL and Ob groups. No significant difference in the amount of mandibular setback was found between the two groups. Comparing values at T1 and T2, the proximal segments tended to rotate backward in the SL group, but there was no significant difference in the anterio-posterior position of proximal segments between the two groups. Comparing values at T2 and T3, counter-clockwise rotation of proximal segments was seen in the SL group but not in the Ob group. It is likely that this rotation of proximal segments in the SL group was caused by the muscular strength of MPM attached mainly to the proximal segments. Moreover, a significant negative correlation in the amount of rotation of proximal segments was detected between T1-T2 and T2-T3 in the Ob group, but not in the SL group.These findings indicate that special attention to the rotation in SL cases is important since a wider variation in the rotation of proximal segments may occur compared with the Obwegeser method.