著者
松沼 光泰
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.9-16, 2009 (Released:2012-02-14)
参考文献数
20
被引用文献数
6 5

This study examined why some high achievers on the course final exam were unsuccessful on the proficiency exam in English. We hypothesized that the learning motives and learning behaviors (learning strategy, learning time) had different effects on the outcomes of the exams. First, the relation between the variables was investigated using structural equation modeling. Second, the learning behaviors of students who got good marks on both exams were compared with students who did well only on the course final exam. The results were as follows. (a)Learning motives influenced test performance via learning behaviors. (b)Content-attached motives influenced all variables concerning learning behaviors. (c)Content-detached motives influenced all variables concerning learning behaviors that were related only to the course final exam. (d)The students who got good marks on both exams performed the learning behaviors that were useful on the proficiency exam more frequently than the students who did well only on the course final exam.
著者
松沼 光泰
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.414-425, 2007-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

本研究では, 学校現場で指摘される現在完了形の学習の問題点を踏まえ, 教育心理学で得られた知見を生かした授業方法を考案しその効果を検討した。高校1年生の生徒が現在完了について2種類の授業方法で学習した。実験群の授業は,「(1) 現在完了の学習内容を教師の側からあらかじめ体制化して教授する」,「(2) 現在完了の課題を行う際に, 図を用いるという学習方略を教授する」という2点で統制群の授業と異なっていた。また, 補足的に, 教授した学習方略の遂行と学習方略の有効性及びコストの認知の関連性, 介入授業が学習意欲に及ぼす影響, 介入授業に対する生徒の興味という点についても調査した。分析の結果,「(1) 授業直後においても約1ヵ月後においても, 実験群のテスト成績は, 統制群を上回った」「(2) 教授された方略を遂行する生徒は, 遂行しない生徒に比べて, 方略を有効であると認知しており, また, 前者は, 後者に比べて, テスト成績が良かった」「(3) 実験群は統制群に比べ介入後に学習意欲が高まり, 授業に対する興味も高かった」ということが示唆された。
著者
松沼 光泰
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.454-465, 2009

受け身表現は, 日本語では動詞に助動詞「れる・られる」を付けて表すが, 英語では「主語+be動詞+過去分詞+by~」の形で表される。ここで注意しなければならないのは「英語の場合, 受動文の主語には能動文の目的語がなる」ということである(以下「受動態の前提」)。本研究では, 多くの学習者はこの受動態の前提を理解せず, 日本語の受け身表現(れる・られる)を単純に「be動詞+過去分詞」で表すことができると不十分な知識を持っているとの仮説を立て検証した。この仮説が支持されたことを受け, 学習者の不十分な知識を修正する教授方法を考案し, 一般的教授方法と比較することでこの効果を検討した。実験群の授業は「(1) 手持ちの知識が不十分なことを意識化させる」, 「(2)日本語と英語が構造的に異なる言語であることを意識化させる」, 「(3) 熟達者思考プロセス提示法を用いて学習内容を提示する」という点で統制群の授業と異なっていた。介入の結果, 実験群の成績は統制群を上回った。また, 実験群は, 統制群に比べ, 日本語と英語の違いに注意することや5文型の重要性を認識するようになり, 授業で用いた教材を有効であると認知し, 授業への興味も高かった。
著者
松沼 光泰
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.548-559, 2008-12-30

正確な英文読解や英作文には,andが同じ文法的資格の語句を結ぶ等位接続詞である(以下andの本質)ことを知り,文中のandが何と何を同じ文法的資格で結んでいるかを意識することが不可欠となる。本研究では,高校生を対象として,andの本質を問う独自の評価問題を作成し,学習者のandの知識が不十分であることを明らかにすると伴に,学習者にandの本質を理解させる教授方法を考案しこの効果を検討した。プリテストの結果,学習者は,andの日本語訳は知っているが,andの本質を理解していないことが明らかになった。本研究では,この不十分な知識を修正するために,ル・バー研究や学習方略研究の理論を援用し,「(1)学習者の知識では説明のつかない事例を用いてandの本質を教授する」,「(2)等位接続詞という名称とandの本質を関連づけて教授する」,「(3)英文読解や英作文の際に,アンダーラインの使用を促す」という3つの教授方針を採用した授業を実施した。その結果,介入授業後,学習者の成績は上昇し,介入授業の効果が確認された。また,介入授業後,学習者はandを重要な単語であると認識するようになり,英文法の学習意欲が高まり,andに対する自己効力感が高まった。