- 著者
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松浦 茂樹
- 出版者
- 水利科学研究所
- 雑誌
- 水利科学 (ISSN:00394858)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.5, pp.37-69, 2015
埼玉県は,今さら言う必要もないが海無し県である。河川を通じて行なわれるその排水は,他都県を流下したのち海に放出される。河川は,利根川(流域面積16,840km2),その派川の江戸川,荒川(2,940km2),そして中川(811km2,うち埼玉県752km2),綾瀬川(176km2,うち埼玉県136km2)である。なかでも古利根川(182km2)・元荒川(209km2)などの埼玉平野東部低地部の洪水は,中川に落ちる。中川を通じて東京都内を流下したのち東京湾に流出(放出)される。中川が埼玉平野の洪水処理にとって実に重要な役割を持っており,ここの整備は埼玉県にとって死活問題といってよい。埼玉県にとってその整備は,長年の課題であった。本論では,中川およびその支川である古利根川・元荒川の整備を中心に,近代の埼玉平野の治水整備について述べていく。