著者
角甲 純 中村 陽一 西 智弘 高木 雄亮 松田 能宣 渡邊 紘章 笠原 庸子 合屋 将 小原 弘之 森 雅紀 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.33-42, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
44
被引用文献数
1

【目的】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対する送風療法の有効性について検討する.【方法】医中誌,Cochrane Library, EMBASE, MEDLINEを用いて,2019年10月23日までの期間に報告されたすべての文献について検索を行った.また,2020年6月30日と2021年12月7日に,PubMedを用いてハンドサーチを行った.適格基準は,1)送風療法を扱う無作為化比較試験,2)対象者の年齢が18歳以上,とした.除外基準は,1)重複文献,2)学会発表,とした.【結果】110件中10件が採用され,そのうち5件についてメタ解析を行った.送風療法は標準化平均値差−1.43(95%信頼区間−2.70~−0.17; I2=94%;異質性のp値<0.0001)であり,呼吸困難を有意に改善した.【結論】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対して送風療法は有効であることが示された.
著者
内藤 明美 森田 達也 田村 恵子 大屋 清文 松田 能宣 田上 恵太 柏木 秀行 大谷 弘行
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.115-122, 2021 (Released:2021-04-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

【背景】スピリチュアルペインの統一された定義はない.国内の緩和ケア医と精神科医のスピリチュアルペインに関する認識を調査した.【対象・方法】緩和ケアに携わる緩和ケア医・精神科医を対象とした質問紙調査を行った.【結果】緩和ケア医387名(回収率,53%),精神科医374名(45%)から回答を得た.76/69%(緩和ケア医/精神科医)がスピリチュアルペインと抑うつは異なると答えた.66/71%は定義が不十分,59/60%が抑うつなど治療可能な苦痛が見逃されると答えた.40/47%が定義を明確にするべきとしたが,定義のあり方には意見が分かれた.緩和ケア医と精神科医の認識に大きな差はなかった.【結論】緩和ケア医,精神科医ともスピリチュアルペインの定義が不十分と認識するが,望ましい定義のあり方は一致しない.今後日本におけるスピリチュアルペインのコンセンサスを得ることの意義について検討する必要がある.
著者
合屋 将 中野 泰 十九浦 宏明 高木 雄亮 渡邊 紘章 松田 能宣 角甲 純 笠原 庸子 小原 弘之 森 雅紀 中山 健夫 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.261-269, 2023 (Released:2023-12-25)
参考文献数
12

【目的】進行性疾患患者の呼吸困難に対する高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の有効性を検討する.【方法】MEDLINE, Cochrane Library, EMBASE, 医中誌Webを用いて文献検索を行った.適格基準は,呼吸困難に対するHFNCの効果を評価した無作為化比較試験であること,18歳以上の低酸素血症を伴う進行性疾患患者を対象としていること,対照群が通常の酸素療法もしくは非侵襲的陽圧換気であるもの,とした.集中治療室患者,人工呼吸器からの離脱後は除外とした.【結果】6件が採用された.短期介入を検討した2件で,HFNC有効1件,通常酸素有効1件であった.長期介入を検討した2件で,HFNC有効1件,有意差なし1件であった.運動負荷時の介入を検討した2件で,HFNC有効1件,有意差なし1件であった.【結論】低酸素血症を伴う進行性疾患患者の呼吸困難に対してHFNCは有効である可能性がある.
著者
奥田 有香 栗山 俊之 月山 淑 松田 能宣 山口 崇 森 雅紀 下川 敏雄 川股 知之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.247-252, 2023 (Released:2023-11-24)
参考文献数
12

【目的】終末期がん患者の呼吸困難に対してオピオイドのみではコントロールが難しくミダゾラムの併用を必要とした要因を検討した.【方法】2019年4月から2021年7月に当院で呼吸困難緩和目的にオピオイド注射剤を導入したがん患者を抽出し,オピオイドのみ投与したオピオイド単独群,オピオイドにミダゾラムを併用したミダゾラム併用群に分類し後方視的に検討した.【結果】適格患者は107人で,オピオイド単独群85人(79.4%),ミダゾラム併用群22人(20.6%)であった.単変量解析では60歳未満(p=0.004)と男性(p=0.034),多変量解析では60歳未満(OR=5.34, 95%CI: 1.66–17.21; p=0.005)がミダゾラム併用と有意に関連していた.【結論】呼吸困難に対してオピオイドを使用したがん患者において60歳未満がミダゾラム併用に関連する因子であった.
著者
松田 能宣
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.520-524, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
18

呼吸器疾患患者において抑うつ,不安の頻度は高い.しかし,呼吸器疾患患者の抑うつ,不安に対する薬物療法は未確立である.また,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する高用量のベンゾジアゼピン系薬の使用は死亡との関連が報告されている.そのため非薬物療法が優先される.特に,COPDに対する標準治療である呼吸リハビリテーションは抑うつに対する効果も認められている.また,認知行動療法がCOPD患者の心理的苦痛を軽減させることが報告されており,日常臨床ではリハビリテーション部門,看護師,心理職と連携して多職種でアプローチすることでCOPD患者の悪循環認知モデルを改善しうる.このように,今後呼吸器疾患患者の緩和ケアにおける心理職の役割が期待される.呼吸器内科医を対象にアンケート調査を行ったところ,呼吸器内科医は心理職に「患者・家族の苦痛を早期に引き出し,心理的サポートを行うことで,心理的苦痛を軽減すること」を期待していることが明らかになった.