著者
内藤 明美 森田 達也 田村 恵子 大屋 清文 松田 能宣 田上 恵太 柏木 秀行 大谷 弘行
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.115-122, 2021 (Released:2021-04-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

【背景】スピリチュアルペインの統一された定義はない.国内の緩和ケア医と精神科医のスピリチュアルペインに関する認識を調査した.【対象・方法】緩和ケアに携わる緩和ケア医・精神科医を対象とした質問紙調査を行った.【結果】緩和ケア医387名(回収率,53%),精神科医374名(45%)から回答を得た.76/69%(緩和ケア医/精神科医)がスピリチュアルペインと抑うつは異なると答えた.66/71%は定義が不十分,59/60%が抑うつなど治療可能な苦痛が見逃されると答えた.40/47%が定義を明確にするべきとしたが,定義のあり方には意見が分かれた.緩和ケア医と精神科医の認識に大きな差はなかった.【結論】緩和ケア医,精神科医ともスピリチュアルペインの定義が不十分と認識するが,望ましい定義のあり方は一致しない.今後日本におけるスピリチュアルペインのコンセンサスを得ることの意義について検討する必要がある.
著者
内藤 明美 森田 達也 神谷 浩平 鈴木 尚樹 田上 恵太 本成 登貴和 高橋 秀徳 中西 絵里香 中島 信久
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.255-260, 2021 (Released:2021-08-24)
参考文献数
20

【背景】医療において文化的側面への配慮は重要である.本研究は沖縄・東北を例に首都圏と対比させ国内のがん医療・緩和ケアにおける地域差を調査した.【対象・方法】沖縄,東北,首都圏でがん医療に携わる医師を対象とした質問紙調査を行った.【結果】553名(沖縄187名,東北219名,首都圏147名)から回答を得た.地域差を比較したところ,沖縄では「最期の瞬間に家族全員が立ち会うことが大切」「治療方針について家族の年長者に相談する」「病院で亡くなると魂が戻らないため自宅で亡くなることを望む」などが有意に多く,東北では「特定の時期に入院を希望する」が有意に多かった.東北・沖縄では「がんを近所の人や親せきから隠す」「高齢患者が治療費を子・孫の生活費・教育費にあてるために治療を希望しない」が多かった.【結論】がん医療・緩和ケアのあり方には地域差があり地域での文化や風習を踏まえた医療やケアに気を配る必要がある.
著者
伊藤 怜子 清水 恵 佐藤 一樹 加藤 雅志 藤澤 大介 内藤 明美 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.135-146, 2020

<p>厚生労働省の受療行動調査におけるQuality of life (QOL)を評価する項目について,全国から無作為抽出した20〜79歳の一般市民2400名に対して郵送法による自記式質問紙調査を実施することにより,その国民標準値を作成することを目的とした.さらに,SF-8<sup>TM</sup>, Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9), Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG-PS), Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)などとの関連も検討した.分析対象は978部(41.1%)で,性年齢階級別人口統計によって重み付けした40歳以上のQOL指標の標準値は,「体の苦痛がある」33%,「痛みがある」33%,「気持ちがつらい」23%,「歩くのが大変」15%,「介助が必要」3%であった.本研究結果は,今後,受療行動調査を用いて全国的かつ継続的に患者の療養生活の質を評価し解釈していくにあたり,重要な基礎データとなる.</p>
著者
内藤 明美 森田 達也 神谷 浩平 鈴木 尚樹 田上 恵太 本成 登貴和 高橋 秀徳 中西 絵里香 中島 信久
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.255-260, 2021

<p>【背景】医療において文化的側面への配慮は重要である.本研究は沖縄・東北を例に首都圏と対比させ国内のがん医療・緩和ケアにおける地域差を調査した.【対象・方法】沖縄,東北,首都圏でがん医療に携わる医師を対象とした質問紙調査を行った.【結果】553名(沖縄187名,東北219名,首都圏147名)から回答を得た.地域差を比較したところ,沖縄では「最期の瞬間に家族全員が立ち会うことが大切」「治療方針について家族の年長者に相談する」「病院で亡くなると魂が戻らないため自宅で亡くなることを望む」などが有意に多く,東北では「特定の時期に入院を希望する」が有意に多かった.東北・沖縄では「がんを近所の人や親せきから隠す」「高齢患者が治療費を子・孫の生活費・教育費にあてるために治療を希望しない」が多かった.【結論】がん医療・緩和ケアのあり方には地域差があり地域での文化や風習を踏まえた医療やケアに気を配る必要がある.</p>
著者
阿部 健太郎 三浦 智史 藤城 法子 沖崎 歩 吉野 名穂子 青木 茂 内藤 明美 真野 泰成 齊藤 真一郎 山口 正和 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.85-91, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
15

【目的】進行がん患者の遺族からみた多剤併用の状況と内服負担に関する体験や認識を明らかにする.【方法】がん患者の遺族303名に自記式質問票を郵送し,回答を得た.1回6錠以上の内服を多剤併用群,1回6錠未満の内服を非多剤併用群とし,内服負担や体験,認識について単変量解析を行った.102名の結果を解析した(有効回答率33.7%).【結果】多剤併用群(65名)は,非多剤併用群(37名)よりも遺族が患者の内服負担を感じた割合が高値であった(43.1% vs 10.8%,p<0.01).内服負担が少ない服用方法としては,現状よりも1回の服用錠剤数を減らしたいと希望していた.多剤併用群の遺族は,内服薬が多いことの懸念が強く,医療者からの内服薬に関する説明や相談できる医療者を希望していた.【結論】医療者は,服薬状況の確認とともに薬に関する家族の懸念についても十分に配慮する必要があることが示唆された.
著者
日下部 明彦 野里 洵子 平野 和恵 齋藤 直裕 池永 恵子 櫁柑 富貴子 結束 貴臣 松浦 哲也 吉見 明香 内藤 明美 沖田 将人 稲森 正彦 山本 裕司 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.906-910, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
13

死亡診断時の医師の立ち居振る舞いは,その後の遺族の悲嘆に大きく影響を及ぼすと考えられているが,現在の医学教育プログラムのなかには,死亡診断時についての教育内容はほとんど含まれていない.われわれは遺族アンケートを基に「地域の多職種でつくった死亡診断時の医師の立ち振る舞いについてのガイドブック」(以下ガイドブック)を作成した.本ガイドブックを用い,横浜市立大学医学部4年次生に対し授業を行い,授業前後で死亡診断時の困難感,自己実践の可能性を評価するアンケート調査を行い解析した.有効回答を得た39名において死亡確認についての困難感についての項目は,「死亡確認の具体的な方法」が最も高く,89.5%であった.しかし,授業前後では,死亡診断時における自己実践を評価する項目で有意な改善がみられた.死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについての卒前教育にわれわれが作成したガイドブックは有効な可能性が示唆された.
著者
伊藤 怜子 清水 恵 内藤 明美 佐藤 一樹 藤澤 大介 恒藤 暁 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.761-770, 2017 (Released:2017-12-05)
参考文献数
19

質の高い緩和ケアを普及するための対策を検討するにあたり,症状緩和の具体的な目標値を設定するためには,一般市民の自覚症状の実態を把握する必要がある.しかし,これまでに本邦の一般市民における自覚症状の実態を調査した大規模な研究はない.そこで,全国から無作為に抽出した20〜79歳までの一般市民2400人を対象に,郵送による自記式質問紙調査を実施し,Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)を用いて身体,精神症状を多面的に調査した.分析対象は978部(41.1%)で,有症率,症状の強度,苦痛度を性別・年齢階級別に示し,症状の強度とSF-8™による健康関連quality of life(QOL)スコアとの関連を検討した.痛みが46.1%と最も有症率が高く,身体的QOLスコアと相関がみられた(ρ=−0.55).本研究結果は,本邦の一般市民における自覚症状の実態を示した有用な基礎データとなるであろう.
著者
垂見 明子 三松 早記 森田 達也 内藤 明美 坂本 康成 奥坂 拓志 清水 千佳子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.301-305, 2016 (Released:2016-01-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2

終末期についての話し合いは患者家族のquality of lifeを規定する重要な要因である.本研究はがん治療医を対象とした質問紙調査の自由記述の質的分析から,終末期の話し合いにおける課題に関するがん治療医の意見を収集した.質問紙は864名に送付し490名から回答を得た.自由記述から合計420意味単位を分析対象とした.がん治療医が終末期の話し合いを行う際の問題として(1)患者家族の課題(【患者家族の個別性に対応することの難しさ】【病状理解の難しさ】)(2)医療者に起因する課題(【患者家族・医療者双方への精神的サポートの不足】【医療者間の考え方の相違】など)(3)システムと体制に関する問題(【時間・人的リソースの不足】【教育・研究の不足】など)が抽出された.本研究の知見は,今後緩和ケア医とがん治療医が共同してがん患者との終末期の話し合いを行う際の相互理解に役立つと考えられる.