著者
板谷 裕美 北川 眞理子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.2_58-2_70, 2007 (Released:2008-07-07)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

目 的 人工乳がまだ手に入りにくい,昭和の戦後復興期時代に子育てをした女性の母乳哺育体験が,どのようなものであったのかについて明らかにし,記述すること。対象と方法 第1子を1955年以前に出産し母乳哺育体験をもつ健康な高齢女性13名を対象に,自身の母乳哺育体験に関する半構成的面接法を中心としたデータ収集を行った。インタビューは本人の許可を得て録音し,逐語録作成後エスノグラフィーの手法を参考に質的帰納的に分析した。結 果 13人の女性の母乳哺育体験に関する記述データから,4つのカテゴリー;【良好な乳汁分泌と身体性】,【授乳継続への積極的思考と行動】,【他者による母乳哺育への心理社会的関与】,【母親としての肯定的な自己概念の再形成】と,16のサブカテゴリー;〈良好な乳汁分泌状態の継続〉,〈自然な乳汁分泌促進につながるライフスタイル〉,〈授乳継続と避妊効果〉,〈母乳哺育に関する知識や情報の入手〉,〈自律授乳を当たり前とする授乳慣習〉,〈授乳がもたらす快感情の経験〉,〈離乳時期の延長〉,〈母乳哺育に対するゆるぎない価値信念〉,〈自由な授乳を束縛される苦痛と苦悩〉,〈断乳の他者決定〉,〈実母による強力な支援と信頼〉,〈産婆による差異ある授乳支援〉,〈母乳代替を通じた近隣社会の中での助け合い〉,〈母乳哺育に受け継がれる経験知の伝承と遵守〉,〈母乳哺育スキルのスムーズな獲得と母乳育児への自信〉,〈高い母親役割意識の形成発展〉が抽出された。結 論 人工乳がまだ手に入りにくい戦後復興期時代に子育てをした女性は,自身の良好な乳汁分泌を自覚し,他者による母乳哺育への心理社会的関与を受けつつ,授乳継続への積極的思考と行動をとっていた。そして母乳哺育を通して母親としての肯定的な自己概念の再形成をしていた。当時の女性とその家族には,“子どもを育てるには母乳しかない”という意思や信念が強く存在していたことが示唆された。
著者
板谷 裕美 廣瀬 潤子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、分娩時大量出血に伴う産後貧血を合併した褥婦と、正常な経過をたどる褥婦との間で、母乳中の鉄含有量および乳汁分泌量に差があるのかどうか、縦断的に比較検討を行うことであった。分娩時800ml以上の大量出血を起こし、産褥早期のヘモグロビン10.0/dl未満・ヘマトクリット33.0%未満の貧血を合併した褥婦5組を症例群、分娩時大量出血および産褥期貧血のない褥婦15組を対象群とし、産褥入院中、産後1カ月、3カ月、6か月の各時期における母乳中鉄含有量、1日乳汁分泌量、BDHQを用いた褥婦の鉄摂取量を調査した。その結果、母乳中の鉄含有量と乳汁分泌量にはいずれも有意な差を認めなかった。
著者
岩鶴 早苗 池田 敬子 板谷 裕美 服部 園美 日下 裕子 上田 恵
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
和歌山県立医科大学看護短期大学部紀要 (ISSN:13439243)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.63-70, 2002

本研究の目的は炭酸ガス入り足浴(;炭酸ガス浴)の有用性の検討である。健康な女性16人(平均年齢19.6±0.7歳,平均身長160.2±5.0cm,平均体重52.4±5.8kg)を対象とし炭酸ガス浴と従来の足浴(;混浴)を実施した。測定内容は生理的指標として,皮膚血流量,体温(中枢温・末梢温・・腋窩温),脈拍,血圧であり,主観的指標として炭酸ガス浴と温浴を比較した被験者の感想である。生理的指標は足浴前,足浴直後,15分後,30分後,1時間後,2時間後に測定した。データの分析はpaired-t検定を行った。その結果,炭酸ガス浴後の皮膚血流量において,温浴と比較して有意に上昇していた(p<0.01〜O.05)。体温,脈拍,血圧では有意な差はみとめなかった。被験者の感想では,炭酸ガス浴の満足度は非常に高かった。以上のことから,炭酸ガス浴は皮膚血流量増加による保温効果や心地よさのレベルを高めることが明らかとなった。