- 著者
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枇榔 貞利
宮田 昌明
鄭 忠和
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
我々は、サウナ浴を用いた温熱療法が臨床的に生活習慣病(高血圧症、糖尿病、高脂血症等)の患者の低下した血管内皮機能を改善させること、また、ハムスターを用いた動物実験において内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)を遺伝子・蛋白レベルで増加させることを明らかにした。そこで本研究の目的は、温熱療法の血管内皮機能改善効果が動脈硬化病変の発生・進展を抑制しうるかを検討することである。動脈硬化発症モデル動物としてapoproteinEのノックアウトマウスを用いた。まず、小動物用乾式サウナ装置を用いて、深部体温が約1度上昇する温度を設定するための予備実験を行い、41度15分間、その後34度で20分間のサウナ浴が至適条件であることを確認した。apoproteinEノックアウトマウスでは、12週令においては大動脈基部において動脈硬化巣が確認できるので6週令のapoproteinEノックアウトマウスに対してサウナ浴の効果を検討した。6週令のapoproteinEノックアウトマウス20匹を2群に分け、1群に対し上記の条件で1日1回、1週間に5回のサウナ浴を施行した。コントロール群に対しては、サウナ群と同じ時間だけスイッチを切った室温のサウナ装置に同様の期間入れることを行った。10週間のサウナ浴後に、麻酔下にsacrificeし、大動脈を摘出し、その標本に対し脂肪染色を行い、顕微鏡下に大動脈基部の動脈硬化巣の面積を計測し、両群間での比較を行ったところ、サウナ群では0.07±0.03mm^2であり、コントロール群では0.22±0.14mm^2と減少傾向が認められた。すなわち、アポEノックアウトマウスにおいて10週間の温熱療法が、大動脈の動脈硬化形成を抑制したことは、ヒトにおいても温熱療法が動脈硬化性疾患の発生・進展を抑制する可能性を示唆している。