著者
増田 彰則 中山 孝史 古賀 靖之 八反丸 健二 長井 信篤 皆越 眞一 鄭 忠和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.581-588, 2005-08-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

慢性疼痛患者に対して, 認知行動療法とリハビリテーション, 運動療法に加えて温熱療法を併用したところ(温熱療法群n=22), 併用しなかつた群(非温熱療法群n=24)に比べ, (1)痛み行動が有意に減少した, (2)情動面では, 怒りスコアが有意に改善した, (3)治療への満足度が高かつた, (4)退院して18カ月後, 仕事に復帰した割合は, 非温熱療法群の58%に比べ温熱療法群は82%と高かつた.以上より, 慢性疼痛の治療として温熱療法の併用は有効であることが示唆された.
著者
鄭 忠和 山口 昭彦 増田 彰則 宮田 昌明 枇榔 貞利
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

慢性心不全・閉塞性動脈硬化症・慢性疲労症候群・慢性疼痛・慢性呼吸不全に対して、60℃の遠赤外線乾式サウナ装置を用いた温熱療法の効果を検討した。心不全に関しては、2週間の温熱療法は心室性期外収縮総数、連発性心室性期外収縮、心室頻拍を有意に減少させた。ノルエピネフリン濃度は有意に低下し、24時間ホルター心電図による心拍変動解析(SDNN)は30%有意に増加した。さらに、2週間の温熱療法で、グレリン及び成長ホルモンは有意に増加し、質問表による食欲の改善が認められた。温熱療法は慢性心不全患者で増加した酸化ストレスを減少させることも明らかにした。心不全発症ハムスターを用いた実験において、温熱療法非施行群と比較し、温熱療法群では、生存率を35%有意に改善し、eNOSのmRNA及び蛋白の発現や血清nitrate濃度を有意に増加した。温熱療法による血管新生に関する検討では、アポ蛋白E欠損マウスの下肢虚血モデルにおいて、5週間の温熱療法は下肢血流と血管密度を増加させた。L-NAMEやeNOS欠損マウスを用いた実験により、温熱療法の血流改善作用にeNOSとNOが重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、10週間の温熱療法により、閉塞性動脈硬化症(ASO)患者の下肢疼痛、6分間歩行距離、ABI、体表温度、レーザードプラ血流計による下肢血流、下肢血管造影、皮膚潰瘍に関して有意な改善を認めた。4週間の温熱療法は、軽症うつ患者の愁訴や食欲低下を改善させた。また、慢性疼痛患者の疼痛を軽減し、その後の社会復帰率を高めた。さらに、2名の慢性疲労症候群患者に対して温熱療法を施行し症状の改善を認め、社会生活に復帰した。温熱療法は慢性閉塞性肺疾患患者におけるRV dP/dt、運動中の肺高血圧、運動耐容能、QOLを改善することが示された。温熱療法は、これらの疾患に対する新しい治療法として期待される。
著者
鄭 忠和
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.123-130, 2021-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
22

和温療法は「安全,有効,低コスト,非侵襲」で,治療の望ましい要件を満たす革新的治療法である。全身の血管内皮から血管拡張物質のNOを著明に発現して多彩な効果を発揮し,心不全や閉塞性動脈硬化症などの難治性疾患に有効である。重症心不全に対する標準治療として新規保険収載されている。超高齢社会のフレイル対策,包括的リハビリテーション,QOLの向上・健康長寿・未病・予防に貢献する医療として今後の活用が期待される。
著者
増田 彰則 山中 隆夫 武井 美智子 平川 忠敏 志村 正子 古賀 靖之 鄭 忠和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.903-909, 2004-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

子どもからみた家族機能が, 心身症の発症, 学校での適応, 思春期の精神面や生きる喜びに与える影響について検討した. その結果, 家族機能不良群は, 心身症の発症の相対危険度が良好群に比べ2倍であった. 小学, 中学時代にいじめを受けた者は2倍, しばしば学校を休んだ者が3倍高かった. 思春期になると一入こもるようになった, 他人の視線が気になる, 自己主張ができない, 人間関係をうまくつくれないと答えた者が約2倍高かった. さらに, 人を信用できない者は約5倍, 誰も相談相手がいない者は良好群に比べ相対危険度が3倍高く, 自分が必要とされていない, 生きる喜びがないと答えた者も約4倍高かった. 家族機能は, 心身症の発症のみならず, 学校適応や思春期の精神面, 生きる喜びにも影響を及ぼしていることがわかった.
著者
増田 彰則 出口 大輔 山中 隆夫 黒木 敦朗 黒木 克郎 鄭 忠和
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.521-528, 2002-08-01
被引用文献数
1

内科治療中に急性増悪し,手術適応と診断された難治性潰瘍性大腸炎患者に心身医学的治療を併用した結果,寛解し社会復帰した.自律訓練法,指尖皮膚温度のバイオフィードバックによる心身のリラクゼーションと自ら前向きに治療に取り組むようになったことが病態の改善に効果的に作用したと考えられた.内科的治療が奏効しない急性増悪例に対して,心身医学的治療を併用することは有用であると思われる.
著者
枇榔 貞利 宮田 昌明 鄭 忠和
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

我々は、サウナ浴を用いた温熱療法が臨床的に生活習慣病(高血圧症、糖尿病、高脂血症等)の患者の低下した血管内皮機能を改善させること、また、ハムスターを用いた動物実験において内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)を遺伝子・蛋白レベルで増加させることを明らかにした。そこで本研究の目的は、温熱療法の血管内皮機能改善効果が動脈硬化病変の発生・進展を抑制しうるかを検討することである。動脈硬化発症モデル動物としてapoproteinEのノックアウトマウスを用いた。まず、小動物用乾式サウナ装置を用いて、深部体温が約1度上昇する温度を設定するための予備実験を行い、41度15分間、その後34度で20分間のサウナ浴が至適条件であることを確認した。apoproteinEノックアウトマウスでは、12週令においては大動脈基部において動脈硬化巣が確認できるので6週令のapoproteinEノックアウトマウスに対してサウナ浴の効果を検討した。6週令のapoproteinEノックアウトマウス20匹を2群に分け、1群に対し上記の条件で1日1回、1週間に5回のサウナ浴を施行した。コントロール群に対しては、サウナ群と同じ時間だけスイッチを切った室温のサウナ装置に同様の期間入れることを行った。10週間のサウナ浴後に、麻酔下にsacrificeし、大動脈を摘出し、その標本に対し脂肪染色を行い、顕微鏡下に大動脈基部の動脈硬化巣の面積を計測し、両群間での比較を行ったところ、サウナ群では0.07±0.03mm^2であり、コントロール群では0.22±0.14mm^2と減少傾向が認められた。すなわち、アポEノックアウトマウスにおいて10週間の温熱療法が、大動脈の動脈硬化形成を抑制したことは、ヒトにおいても温熱療法が動脈硬化性疾患の発生・進展を抑制する可能性を示唆している。
著者
増田 彰則 平川 忠敏 山中 隆夫 志村 正子 武井 美智子 古賀 靖之 鄭 忠和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.369-378, 2004
参考文献数
23
被引用文献数
3

思春期・青年期の心身症およびその周辺疾患の発症に及ぼす家族の健康,養育環境,養育方法,家族機能と被暴力体験の影響について調査した.対象は,心療内科を受診した患者195名(平均年齢21歳)と健常大学生415名(平均年齢20歳)である.調査は,われわれが作成した自己記入式質問紙を用いて実施し,ロジスティック解析にて検討した.その結果,病気発症に有意な影響を及ぼす因子として,「親から身体的暴力を受けた」,「父親から母親に身体的暴力があった」,「家庭は安全な場所ではなかった」,「甘やかされて育った」,「片親が死亡した」,「幼小児期に可愛がられた記憶がない」の6項目が抽出された.これらの因子を2項目もっている例では,まったくもっていない例に比べてオッズ比で7.9倍,3項目以上もっている例では21.1倍の病気発症の危険因子となった.以上より,心身症およびその周辺疾患の治療では,家庭環境や家族機能について十分な配慮とアプローチが必要である.また,病気発症の予防に健全な家庭環境と良好な家族機能の回復が重要であることがわかった.