著者
松下 繁 林 努 下郷 惠 王 歓 田村 康夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.1042-1048, 1995-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
12
被引用文献数
2

乳児の吸啜時における口腔周囲筋筋活動が月齢によりどのように変化するか検討する目的で本観察を行った.被検児は乳房哺育児延べ56名で生後月齢により1か月児(4週~8週以内,9名),2か月児(16名),3か月児(11名),4か月児(11名),5か月児(9名)の5群に分け筋電図学的に検討した.その結果,1)側頭筋,咬筋および口輪筋では1か月児から5か月児で筋活動量には,変化がみられなかったのに対し,舌骨上筋群は1か月児から5か月児まで増大する傾向がみられ,1か月児と5か月児間で有意差(p<0.05)が認められた.2)4筋の総筋活動量は1か月児と3,4,5か月児との間で有意差が認められ(P<0.05),1か月児から3か月児まで増大していた.3)吸啜リズムは月齢間で差はみられなかった.以上の結果より,吸啜運動の吸啜リズムには変化がみられないが,口腔周囲筋筋活動は月齢により舌骨上筋群の活動と総筋活動量が増大することが示唆された.
著者
小林 努
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.221-226, 2018-04-05 (Released:2019-02-05)
参考文献数
20

初期宇宙にインフレーションと呼ばれる加速膨張期があったとするシナリオは,現在最もメジャーで広く受け入れられているシナリオである.標準ビッグバン宇宙モデルにあった地平線問題や平坦性問題などの初期条件の微調整に関する問題を自然に解決する上に,宇宙マイクロ波背景放射の異方性や大規模構造の種となる原始密度揺らぎを生成することもできる.適切なモデルを選べば,予言される揺らぎのスペクトルは観測と整合的である.ほぼ完璧なシナリオにも思えるインフレーションであるが,初期特異点の問題など幾分conceptualな問題も抱えている.このような問題に動機付けられて,特異点のない代替シナリオとしてさまざまなものが提唱され研究されている.これら代替シナリオは,エネルギーの正値性に関する条件を破るような特殊なスカラー場などを用いて実現されており,そもそも解が摂動に対し明らかに不安定であるなど,かえって深刻な問題を露呈しているものが大半であった.一方,近年,拡張された重力理論の研究が深まる中で,エネルギー条件を破っているにも関わらず安定な宇宙論解が原理的には構築可能であることが判明し,既存のモデルにあった問題点を解決する望みのある,特異点のない新たな宇宙モデルも考案されている.しかしながら,きわめて広いクラスの重力理論で特異点のない宇宙はやはり不安定であることが示される.「ホルンデスキ理論」という拡張された重力理論が,特異点のないシナリオの近年の進展に大きな寄与をしている.ホルンデスキ理論とは,スカラー場と重力(計量テンソル)からなり,運動方程式が2階になる最も一般的な理論である.運動方程式が2階という条件により,高階微分項に起因するゴースト(オストログラドスキーゴースト)の問題を自明に回避することができている.インフレーションにしても特異点のない代替モデルにしても(あるいは現在の宇宙を加速膨張させているダークエネルギーのモデルにしても),基本的にスカラー場と重力で記述される系であり,ホルンデスキ理論はそのような宇宙論を包括的に研究する強力な枠組みを与えてくれる.線形摂動に対する安定性の条件にもとづく簡単な計算と考察から,ホルンデスキ理論のもとで(平坦な3次元空間をもつ)特異点のないすべての宇宙論解が不安定であることが明らかになった.今回示されたこの結果は,相互作用する複数のスカラー場を含む場合にも拡張することができる.複数のスカラー場と重力からなり運動方程式が2階になる最も一般的な理論(ホルンデスキ理論の複数スカラー場への拡張)は知られてはいないが,今回得られた結果により,特異点のない宇宙はかなり一般的に不安定であるといってよいであろう.運動方程式に高階微分項が現れることを許容しつつも,ゴーストの問題を回避するようにホルンデスキ理論を拡張する,という方向性の研究が,最近の重力理論研究のトレンドのひとつになっている.この方針のもとで新しく発見された理論の一部については,特異点のない安定な宇宙論解が実際に存在する.(平坦な3次元空間をもつ)特異点のない安定な宇宙論解を作るためには,このような手の込んだ方法に頼る必要がある.
著者
安武 留美 若林 努 Slovic Harold G.
出版者
愛知学泉大学
雑誌
経営研究 (ISSN:09149392)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.177-193, 1991-09

植民地時代のアメリカ社会についてはこれまでに色々な研究が成されており,その解釈は,時代とともに,また心理学・人類学・社会学的手法の導入によって変化してきた。この小論は,魔女狩り(Witch-hunting:政敵を中傷・迫害する)に関する7冊の著書をもとにその多様な解釈を紹介するとともに,17世紀ニューイングランド社会の思想や構造を明らかにしようと試みるものである。この小論では次の7つの文献をとりあげる。1.マリオン・L・スターキー(Marion L. Starkey)のThe Devil in Massachusetts(1949),2.チャドイック・ハンセン(Chadwick Hansen)のWitchcarft at Salem (1969),3.ケイス・トーマス(Keith Thomas)のReligion and the Decline of Magic(1969),4.ポール・ボイヤー(Paul Boyer)とステファン・ニッセンバウム(Stephen Nissenbaum)のSalem Possessed(1974),5.ライル・コエラー(Lyle Koehler)のA Search for Power(1980),6.ジョン・P・デモス(John P. Demos)のEntertaining Satan(1982),7.キャロル・F・カールセン(Carol F. Karlsen)のThe Devil in the Shape of a Woman(1984)。これらの著書で対象としている年代や地域は異なり,トーマスはピューリタンの祖国である16世紀から17世紀のイングランドについて,スターキーやハンセン,ボイヤーは1692-1697年のマサチューセッツ州エセックス郡のセーレム(Salem)について,コエラー,デモス,カールセンはセイレムでの魔女狩りを含む17世紀後半のニュー・イングランド地方について述べている。