- 著者
-
林 孝洋
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
本研究では,シュッコンアスター種の花序の構成・発達ならびに開花反応を客観的に表現できる形態モデルを開発するとともに,方向性を持った効率的な育種方法と合理的な草姿制御の方法を検討した.実績報告書の主な内容は以下のとおりである.1.生育の基本単位:シュッコンアスターにおいて,ファイトマー(葉,葉柄,節間,腋芽,節の一組)とモジュール(2/5互生葉序であることから,連続する5つのファイトマーを一組とする)を生長解析の単位構造とすれば,連続するモジュールはほぼ互いに相似形になっており,アスターの生長はモジュールが上に次々と連結することとみなせることがわかった.2.花序の構成:ある時点(n)の花序の構成(I)は,モジュールをmi(上から下に向かってi=1,2,3…)とし,頂芽をaとすると,a+m1+m2+…+mnであり,行列In=(a,m1,m2,…mn)で表すことができた.3.花序の発達:花序の発達は,上に新しいモジュールm1が形成され,各モジュールmiが一定の比率kで大きくなり,頂芽aが一定の比率kaで小さくなることとみなすことができた.花序発達の過程は,1次変換の繰り返しであり(In=Kn In-1),行列In=Kn-1…K1IO=Kn IOで表すことができた(IO:初期値).その結果,花序の構成と発達はパラメータk,kaによって記述できた.4.開花反応:着花量がモジュールの大きさに比例することから,開花反応は1次変換Kfが花序に生じたこととみなせた.行列を用いると,開花はIf=Kf Iであり,開花時の花序構成はIf=Kf Kn IOとして導かれた.5.モデルの普遍性:草姿の異なるいくつかの品種で検証を行った結果,本行列モデルは普遍性があり,数少ないパラメータで多種多様なシュッコンアスターの類別が可能であった.