- 著者
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林 寿一
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.3, pp.127-129, 1984-03-20
ミンダナオ島よりTajuriaの1新種を記載した,本新種に関する分類学的知見を教示されたJ.N.ELIOT氏に深く感謝したい.本新種はボルネオより知られるTajuria lucullus H.H.DRUCE,1904にもっとも近縁であるが,後者とは以下の特徴によって区別できる.1)翅表はわずかに淡紫色を帯びるが,lucullusでは紫色を帯びない.2)後翅裏面第1a室および第2室にある橙色の肛角斑は,第1b室にある青灰色鱗によりはっきりと分断されるが,lucullusでは肛角斑は多少とも結合する上に,第1b室の鱗粉は青味が強くなる.3)雄交器ではbrachiaはその湾曲部において突起を持たないが,lucullusでは湾曲部に突起を持つ.4)雄尾交尾器ではaedeagusはcornutusを持たないが,lucullusでは2個のcornutusを持つ.5)雄交尾器ではvalvaeはFig.3Bで示すようにその末端で,はるかに突出の度合が強く,かつくぼみの程度は弱い.父のおかげで,筆者は蝶の研究を続けてこられたので,本新種の種名は父,故松太郎に献名された.