著者
川本 雄大 田内 萌絵 山地 一代 中坪 良平 板野 泰之 山本 勝彦 和田 匡司 林 美鶴
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.35-42, 2021-02-07 (Released:2021-02-05)
参考文献数
13

瀬戸内海周辺地域は全国的に見て相対的に大気汚染物質濃度が高い状態にあり、この原因の一つが、船舶由来の排気ガスとの指摘がある。本研究では、瀬戸内海海上と周辺陸上局にてそれぞれ測定された大気中のSO2、NOx、PM2.5の時空間変動の特徴とその要因を考察した。垂水局と兵庫南部局にてConditional Bivariate Probability Function解析等を行った結果、SO2濃度は海風の進入とともに上昇し、高濃度時には船舶の往来が集中する明石海峡方向からの大気の流入が確認できた。これは、二山型の日内変動を示すNOxとは異なる傾向となった。PM2.5は、春から秋にかけて日中の濃度上昇が確認できたが、SO2やNOxと比較して日内変動幅は小さく、広域的な汚染であることが示唆された。海上のSO2濃度は、最大で陸上局濃度の約5倍となり、他方、NOxは陸上局と同程度あるいは低濃度、PM2.5は陸上局とほぼ同程度であった。大阪湾・播磨灘および周辺沿岸地域において、SO2とNOxの主要な発生源は、それぞれ海上と陸上に存在する可能性が示された。
著者
久保 雅義 小林 英一 林 美鶴 原田 賢治 辻 啓介
出版者
大島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、津波が沿岸・港湾域に来襲したときの船舶の被害を最小限にとどめる対応方策を検討することを目的として実施した。まずAIS(船舶自動識別装置)データの活用により、実際の航行および在港船舶の実態が把握でき、津波来襲時に船舶がとるべき行動解析のための基礎データが収集できた。次に今回開発した多数船舶が同時に避難行動をとる場合の挙動シミュレーション手法により、このAISデータをベースとして船舶避難シミュレーションを実施した結果、備讃瀬戸海域では今回想定した避難水域へ船舶が安全に避難できることが分かった。またLNG船について、津波来襲時の避難挙動の解析をシミュレーション計算により実施した結果、接岸場所よりある程度離れた場所で津波発生を認知した場合には、概ね安全に津波から逃れることができることが分かった。一方で入船係船状態からの港外避難では、途中で津波と遭遇する可能性も示唆されたが、出船係船とすることにより安全に避難できることを示した。さらに津波来襲時に係留中のLNGがその係留状態のままやりすごす状態について検討を行った。この計算を実施するに先立ち、係留状態の把握・検証用データ取得のため係留LNGについて現地実験を実施した。計測された係留張力や船体動揺のデータを計算結果と比較することにより、今回使用する係留シミュレーション手法の妥当性を検証するとともに、実係留状態での津波来襲時の挙動解析を行い安全性の検証を行った。また今回複数船舶が相互に係留された状態で津波来襲を受ける場合の挙動解析コードを開発した。これを用いた解析ではシンカー係留では係留索張力が課題となり安全使用荷重を超える懸念があるものの、たとえばアンカー係留に変更することなどにより係留索破断を避けることができることも分かった。今回開発した津波来襲時の船舶挙動解析手法群は、様々な状態での津波来襲時の挙動を解析でき、この結果を活用して津波対策指針策定につなげることができることが分かった。