著者
久保田 優 濱畑 啓悟 渡邊 健一郎 林 英蔚 宇佐美 郁哉 中畑 龍俊
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.401-404, 2001-10-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
14

ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血に全身の色素沈着を伴った12歳男児例を経験した.患児はビタミンB12の皮下注を受け, 貧血は約8カ月で軽快した.皮膚の色素沈着も徐々に軽快傾向を示し, 3年の経過でほぼ完全に消失した.自己免疫疾患や内分泌疾患の合併はみられず, 色素沈着はビタミンB12の欠乏によると考えられた.色素沈着は成書にも記載のないビタミンB12欠乏巨赤芽球性貧血のきわめて稀な合併症である.患児のように易疲労感を訴え色素沈着を呈する患者では, ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血をも考慮に入れて, 早期に血液検査を実施する必要がある.
著者
中畑 龍俊 依藤 亨 足立 壮一 林 英蔚
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

造血幹細胞の発生、性状、増殖・分化機構とその異常、サイトカイン受容体の異常と白血病発症との因果関係、白血病発症の分子機構が明らかにすることを目的に研究を行い以下の成果が得られた。(1)ヒト造血幹細胞を容易に受け入れるNOD/SCID/γ_c^<-/->(NOG)マウスを開発した。このマウスに移植したヒト臍帯血CD34+細胞からサイトカインの投与なしに顆粒球、赤芽球、マクロファージ、巨核球、血小板、T, B, NK, NKT, DC,肥満細胞を含む全てのヒト型血球分化が認められた。ヒトT細胞の初期分化は主に胸腺内で行われ、一部胸腺外分化も認められ、血清中にヒト型のIgM, IgG, IgAが観察された。(2)造血幹細胞増殖支持能を持つストローマ細胞株を樹立した。このストローマ細胞株上でサルES細胞を培養すると非常に多くの血球が出現することから造血幹細胞を生み出すのに必要な分子も発現している可能性が示唆された。(3)G-CSFR遺伝子異常を持ちKostmann症候群のモデルとなる2種類のTgマウスを作成した。変異G-CSFR-TgマウスへG-CSFを1年間連日皮下すると、3血球系とも著明に増加した状態が続いたが、白血病の発生は見られなかった。(4)サルES細胞から胎児型の血液細胞と成体型の血液細胞の両者および血管内皮細胞を誘導することが可能となった。サルでもマウスと同様、血液と血管内皮の共通の母細胞であるhemangioblastの存在が明らかとなった。