- 著者
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林田 大作
舟橋 國男
木多 道宏
- 出版者
- 公益社団法人 日本都市計画学会
- 雑誌
- 都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
- 巻号頁・発行日
- pp.73, 2003 (Released:2003-12-11)
- 被引用文献数
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本研究は、働く人が職場周囲に構築する場所を調査・分析し、その都市生活における意義を都市計画的に論述するものである。本研究では、自宅・職場以外に日常生活の中で意味ある場所を「サードプレイス」と呼び、働く人々が職場周囲に構築するサードプレイスに焦点を当てて分析を行っている。調査は、東京の神田地域および品川地域を対照的な都市的性質を持つ地域として取り上げ、神田地域から品川地域へ事務所を移転したある企業の一部署の社員15名に対してヒアリング調査およびアンケート調査を実施した。調査では、神田から品川への移転前後の4年間づつ、計8年間における職場周囲の生活や生活状況の変化等を幅広く調査したが、本稿では、主に両地域におけるサードプレイスの構築自体に関する考察を行い、その結果を報告する。職場周囲のサードプレイスの構築を、「よく行く場所およびその理由」「寄り道する場所」「リフレッシュする場所」「自分の場所」「通勤ルート」「散歩ルート」等の調査結果から考察した結果、以下の知見を得た。_丸1_働く人々が職場周囲に構築する主なサードプレイスは、飲食店、書店、喫茶店等である。_丸2_職場周囲のサードプレイスの量は、品川地域より神田地域の方が多く、サードプレイスの質も両地域で異なっている。_丸3_サードプレイスの構築と職場周囲における散歩には相補的な関係が存在する。_丸4_品川地域のように、高度に計画され、様々な付帯施設が整備された職場環境においては、セカンドプレイスである職場の延長的な性質を持つサードプレイスが職場周囲に構築されやすい。これまで、自宅を「住宅」として、また職場を「事務所」として捉えた多くの建築計画研究の蓄積があるが、都市生活を生活者の一連の活動として捉え、暮らしやすいまちを計画する場合、本研究で得られた知見等も取り入れた、総合的な都市計画が求められる。