著者
後藤 吉彦 木下 光 丸茂 弘幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.124, 2003 (Released:2003-12-11)

本研究は篠島における漁村集落の空間構成の特性および、その特性がどのように形成され、変容してきたかを考察するものである。また、全国的に多くの地方都市がその個性を失いつつある中で、篠島が現在でもその個性的な集落を維持している要因を考察する。篠島の漁村集落は特徴的な住居表層とセコと呼ばれる狭く曲がりくねった街路空間の形成に代表される。そして住居表層はカコイと呼ばれる壁面の板張り、デマドと呼ばれる街路上に突き出した開口部、色彩豊かな外壁塗装の三要素によって特徴づけられている。
著者
竹下 博之 加藤 博和 林 良嗣
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第44回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.78, 2009 (Released:2009-10-30)

本研究は、鉄軌道線廃止後の代替交通網整備の検討方法について示唆を得ることを目的としている。2006年10月に廃止となった桃花台新交通桃花台線(愛知県小牧市)を対象として、その廃線前後の沿線における交通利便性変化を、土地利用を考慮した評価が可能なポテンシャル型アクセシビリティ指標を用いて評価した。その結果、代替公共交通網により名古屋市方面への交通利便性は維持されているものの、小牧市内へのそれは大きく低下していることが明らかとなった。この結果と、独自に実施した廃止に伴う住民の交通行動変化に関するアンケート調査結果とを比較したところ、おおむね合致していることがわかった。このことから、鉄軌道廃止後の公共交通網検討のための評価指標として、アクセシビリティ指標を用いることが可能であると考えられる。
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.93, 2004

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。_丸1_事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。_丸2_りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後30年集計)をGREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。_丸3_これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
真田 純子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.101, 2003 (Released:2003-12-11)
被引用文献数
2 1

東京緑地計画は日本で最初に作られた地域計画のマスタープランであり、日本の緑地計画史においても重要な存在である。本研究では東京緑地計画における環状緑地帯の計画作成経緯とその位置づけを明らかにすることを目的とした。環状緑地帯の計画が出る以前に、ほぼ同じ位置に行楽を目的とした環状景園地計画が存在していた。環状景園地は環状緑地帯計画の決定と共に廃止されるが、環状緑地帯の区域は環状景園地の区域をベースにしており、風光明媚な土地が選ばれていた。
著者
柳澤 吉保 高山 純一 滝澤 諭 轟 直希
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第45回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.84, 2010 (Released:2010-10-26)

本研究では、(1)歩行者優先街路形状および交通条件に対する満足度に因子分析を適用することで街路空間評価の構成概念(潜在評価意識因子)を抽出する。(2)潜在評価意識因子を構成する満足度評価項目と道路交通条件実測データとの相関分析を行う。(3)共分散構造解析を適用することで、道路交通用件を多重因子、各満足度評価項目を多重指標としたMIMIC(Multiple_Indicator_Multiple_Cause_Modelの略。複数の観測変数によって構成概念が規定され、その構成概念が別の複数の観測変数に影響を与えているモデルであり、多重指標の観測変数を,他の多数の説明変数によって予測可能なモデル)モデルを構築する。(4)MIMICモデルに、過去の社会実験時の道路交通条件および改善策を代入し、それぞれ比較検討することで、望ましい歩行者優先街路空間の整備指針を提案する。
著者
永井 恵一 十代田 朗 津々見 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第41回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.345, 2006 (Released:2007-01-05)

本研究では、東京都内のキリスト教会を対象に、教会の立地の変遷と移転の要因から、教会が都市空間においてどのような位置付けにあるのかを考察することを目的とする。その結果、(1)東京都内における教会立地の変遷は、築地居留地を起点に、徐々に西進、郊外化が進んでいる。(2)教会の移転理由として大きく5種類が抽出され、戦後には、区画整理等や財政・立地の問題等、内部的問題による移転が多く見られた。特に区画整理による移転は、戦後に教会の移転が減少する中で、大きな割合をしめるようになっている。(3)教会史から移転に関する議論を抽出することにより、初期においては、教会の財政や伝道の進展の問題の原因を、教会の立地の悪さに起因するものと見なし、会員の獲得のために移転を議論する傾向がみられた。また、震災後の議論では区画整理が多く見られるとともに、教会の周辺の「環境の変化」が議論されており、移転の要因のひとつとなっていることが明らかになった。
著者
林田 大作 舟橋 國男 木多 道宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.73, 2003 (Released:2003-12-11)
被引用文献数
1

本研究は、働く人が職場周囲に構築する場所を調査・分析し、その都市生活における意義を都市計画的に論述するものである。本研究では、自宅・職場以外に日常生活の中で意味ある場所を「サードプレイス」と呼び、働く人々が職場周囲に構築するサードプレイスに焦点を当てて分析を行っている。調査は、東京の神田地域および品川地域を対照的な都市的性質を持つ地域として取り上げ、神田地域から品川地域へ事務所を移転したある企業の一部署の社員15名に対してヒアリング調査およびアンケート調査を実施した。調査では、神田から品川への移転前後の4年間づつ、計8年間における職場周囲の生活や生活状況の変化等を幅広く調査したが、本稿では、主に両地域におけるサードプレイスの構築自体に関する考察を行い、その結果を報告する。職場周囲のサードプレイスの構築を、「よく行く場所およびその理由」「寄り道する場所」「リフレッシュする場所」「自分の場所」「通勤ルート」「散歩ルート」等の調査結果から考察した結果、以下の知見を得た。_丸1_働く人々が職場周囲に構築する主なサードプレイスは、飲食店、書店、喫茶店等である。_丸2_職場周囲のサードプレイスの量は、品川地域より神田地域の方が多く、サードプレイスの質も両地域で異なっている。_丸3_サードプレイスの構築と職場周囲における散歩には相補的な関係が存在する。_丸4_品川地域のように、高度に計画され、様々な付帯施設が整備された職場環境においては、セカンドプレイスである職場の延長的な性質を持つサードプレイスが職場周囲に構築されやすい。これまで、自宅を「住宅」として、また職場を「事務所」として捉えた多くの建築計画研究の蓄積があるが、都市生活を生活者の一連の活動として捉え、暮らしやすいまちを計画する場合、本研究で得られた知見等も取り入れた、総合的な都市計画が求められる。
著者
坂村 圭 中井 検裕 中西 正彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.1009-1014, 2011-10-25

近年、地方自治体の財政難、住民ニーズの多様化など公立美術館を取り巻く環境は大きく変化しており、管理者は効率的な事業運営のもと事業を実施していくことが求められている。このような社会的背景から平成15年度に指定管理者制度が美術館へも導入されることとなった。しかし、地域文化と関わりの深い美術館への本制度の適用に関しては、自治体からの批判や運営に際しての問題点も多く、導入も顕著に進んでいない。今後、民間活力の登用を視野に入れて運営を効率化していくためには、現在の美術館に対する制度の包括的な効果と問題点を把握し、適切な導入手法を提供していく必要がある。本研究では、まず美術館における制度導入の実態を把握し、続いて制度導入による運営部門、学芸部門の変容を分析した。分析の結果、近年の公立美術館全般の運営費削減の実態が示せ、加えて制度導入による実施事業の質と量の改善が示せた。一方、制度導入手法の偏りも明らかになり、制度の導入を機に、各種問題が内包されていることが判明した。今後、公立美術館の運営改善のために本制度の導入を推し進めることは効果的だが、制度導入の環境や条件を整備していく必要があるだろう。
著者
木田 恵理奈 後藤 春彦 佐藤 宏亮
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.481-486, 2011-10-25
被引用文献数
2 1

本研究は、水神祭の運営における商店街組織と地縁組織の連携による社会関係資本構築のプロセスを示すことを目的とし、以下の4点を明らかにした。(1)水神祭復活以前の水神社及び八幡神交会と商店街の関わり、(2)商店街再開発に伴う水神社の変遷、(3)水神祭の運営における各主体の関係構築過程、(4)水神祭復活による効果
著者
斎藤 正俊 谷下 雅義 鹿島 茂
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.85, 2004

本研究は,著者が開発した鉄道駅における利用者の行動モデルの変数にエネルギー消費量を明示的に組み込む方法を提案し,モデルの説明力が大幅に向上することをケーススタディにおいて検証している.行動モデルは,移動円滑化の影響を評価する観点から,乗車駅の改札口から降車駅の改札口に至る行動を対象としており,この一連の行動を乗車駅における移動施設の選択行動,車両の選択行動,降車駅における移動施設の選択行動に階層化するとともに,効用関数(選択基準)を移動時間に加え,エネルギー消費量と移動形態の線形関数として仮定し,確率効用理論に基づく階層型の非集計行動モデルを用いて個人属性単位で定式化し,都営三田線の利用者を対象にケーススタディを行っている.
著者
原田 敬美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第41回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.31, 2006 (Released:2007-01-05)

本研究の目的は、東京都港区内のJR品川駅と田町駅の東西自由通路を対象に、協議会方式による官民協働事業の整備手法について、特徴、問題点、課題を明らかにし、今後官民協働の手法の可能性を検討することである。品川駅自由通路は駅東口の複合都市開発と新幹線品川駅開業に対応するため1998年完成、幅20m長さ250m、工事費160億円である。田町駅自由通路は西口再開発事業計画に公共施設として位置づけ、周辺の再開発や大型開発へ対応するために2003年完成、幅16m長さ80m工事費25億円である。駅周辺の大企業や商店会に協議会参加を呼びかけ、開発者負担、受益者負担の原則で、協議会が建設費を負担し、区は一般財源の支出無しで公共施設整備をした。一方区は開発事業者にボーナス容積のインセンティブを与えた。協議会方式は様々な主体が参加することでコミュニケーションが進み、問題解決が図れ、単独主体で整備するより効率的に事業が進んだ。協議会方式による官民協働の事業の整備手法は今後様々な公共施設整備に活用の可能性がある。
著者
橋本 成仁 山本 和生
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.769-774, 2011-10-25
被引用文献数
1 1

自動車の利用を前提とした社会への移行が進み、地方都市やその郊外部、あるいは中山間地域においても地域構造自体が自動車依存型となっている。このような地域では多くの高齢ドライバーが不安を抱えながらも運転を継続し続けざるを得ない状況にある。今後、高齢ドライバーのより一層の増加が確実な日本において、運転免許を返納しても生活できる環境の創造は重要な課題である。そこで本研究では、岡山県において運転免許返納者を対象にアンケート調査を実施し、運転免許返納の条件や、返納後の生活で困っている要因について分析を行った。分析の結果、自主的に運転免許を返納するためには公共交通のサービスレベルが大きく影響していることを明らかにした。
著者
松原 康介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.155, 2003 (Released:2003-12-11)

本稿では、モスクの建設と利用を通した、新市街の現代モロッコ都市への再編過程の一端を明らかにし、モスクを核とした複合文化空間の意義の検討を目的とする。新市街は西欧型生活様式に即した空間であったが、今日の課題は既存ストックとしての新市街の、現代モロッコ本来都市への再編である。宗教生活の根幹としてのモスクは、小モスクの胎動期を経て少数で大規模な近代建築として普及したが、その存続のためにハブース店舗を埋設した点で、計画された複合施設としての発展形態をとっている。空間的特質としては、ブロック上で中庭をもたないが、複数の入口を通して外部へと開放されている。また、ハブース店舗が周辺の一般商店街と連坦し、かつ道路が露店スークとして利用され、商業を通した広場・道路との連携が見られる。バロック型の既存ストックを積極的に活用して、フランス文化とモロッコ文化の複合文化都市を目指すことが考えられる。
著者
栗田 治
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.27-27, 2003
被引用文献数
1

線分都市上の2つの店舗の立地競争に焦点を当てる.このテーマの嚆矢は周知のホテリングのモデルであろう.このモデルは3つ以上の店舗や様々な移動コストに関して一般化されてきた.しかしながら,客の店舗選択行動に関する一般化を行った研究は数少ない.そこで本研究では,客の店舗選択をハフモデルによって記述し,2つの店舗の市場占有率最大化行動を分析する.我々のモデルにおいては,店舗の立地競争は,必ずしも都市中央への集中に帰着しない.さらに本研究では,店舗の逐次立地競争を都市交通の速さとハフモデルの距離抵抗係数によって分類した.
著者
清水 肇 小野 尋子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第41回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.36, 2006 (Released:2007-01-05)

那覇市首里金城地区においては、歴史的環境を有する地区としての景観整備が1980年頃から取り組まれてきた。その過程において、中央部を貫く石畳道を保全し、地区外に通過用道路を建設し、さらにアプローチ道路を整備することが行われてきた。その過程で生活環境を整備しつつ細街路の歴史的形態を保全・整備する方法について模索が行われてきたが。2005年に細街路の両側の石垣を含めて道路用地として石垣や石積の保全修復をはかり、道路自体は歩行者専用道路として整備して有効幅員を2?2.7mとする都市計画決定が行われた。これによって沿道敷地は幅員4m以上の道路に接することとなる。これは環境、利用、設置の三側面を実質的に評価して細街路の目標を定めることによって可能となった細街路整備の方法である。
著者
池田 佳和 十代田 朗 津々見 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.146, 2003 (Released:2003-12-11)

本研究では、東京都目黒区の民俗信仰有形物を対象に、その立地、管理形態、状態、活動の実態を明らかにすることで、有形物が都市空間・コミュニティ形成に寄与し、存続していくための示唆を得ることを目的とする。その結果、1.都市化の影響により多くの有形物が寺社、墓地へ移転したこと、2.住民グループによる管理は状態の良い有形物を生むこと、3.管理・活動状態の良い有形物の管理者も高齢化、メンバーの減少といった問題を抱えていること、4.有形物は管理・活動面の実態から4タイプに分類され、「コミュニティ核タイプ」が都市空間、有形物双方にとって有益であること、が明らかになった。
著者
松浦 健治郎 二之湯 裕久 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第42回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.75, 2007 (Released:2007-11-06)

本研究は、近世城下町を基盤とする府県庁所在都市30を対象として、戦前の府県市庁舎が敷地内に保存された場合に、1)城下町基盤を活用した都市デザインが影響を及ぼしているのか、2)新庁舎をどのように増築しているのか、を明らかにするものである。 明らかとなったのは、1)「建築空間」の保存については、建築的条件(罹災が無いこと・耐火造・建築年が昭和以降)と立地的条件(敷地面積)が主要な要因となっていること、2)「都市空間」の保存については、都市デザイン的条件(主要街路のアイキャッチ・堀沿い等)が主要な要因であること、3)庁舎を保存するための工夫として、「新庁舎の高層化」・「重要な部分の保存」・「新庁舎を郊外に移転」の3つの手法が確認されたことである。
著者
中西 正彦 古澤 拓郎 中井 検裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.38, 2003 (Released:2003-12-11)
被引用文献数
2 1

近年、都市再生が国家的な課題として議論される中、民間事業者や学者等から規制緩和を求める声が上がっており、その一つに既成市街地における容積移転をめぐる議論がある。 容積移転については、2000年の都市計画法及び建築基準法の改正により「特例容積率適用区域制度」が創設され、商業地域内において一定の条件を満たせば、離れた敷地間でも容積移転が可能になった。この制度により、土地の高度利用が進むとの期待が持たれているが、どのような容積の移転が起こるかは予測されていない。また、起こりうる移転によって都市に悪影響を与えないようにする為の都市計画の役割も重要であるといえる。 容積移転に関して、現状で移転候補地を抽出し、容積移転の可能性について研究したものはない。 そこで本研究では、_丸1_特例容積率適用区域制度を東京都中心部の千代田区、中央区、港区、台東区に適用する際の移転候補地の抽出により量的な把握を行い(3章・4章)、考えられる容積移転のパターンを示す(5章)と共に、_丸2_移転に伴うインフラ等への負荷の検証により、区域設定及び望ましい容積移転のあり方に関しても考察し(6章)、容積移転制度の運用指針に一定の示唆を与えることを目的とした。最終的には、これらの分析の上で、容積移転制度の現状における可能性と問題点、解決の方向性について考察を行い、以下の結論を得た。 まず、容積移転候補地として、4区合計で容積の出し地が約152ha分、受け地が225ha分抽出された。また、それを踏まえ、容積移転が起こり得ると予想された東京都中心部の3地区において現行の制度を前提とした検証を行った結果、局地的に大きな容積の移転が起こった場合には、最悪の場合、道路、鉄道、歩道容量等の基盤面に大きな影響が出る可能性が示された。すなわち、現行の制度の枠組みの中で都市計画が関わる区域設定のみで制御できない特性への対処が求められている。 よって、容積移転の可能性をあげていくために、制度の趣旨上、区域は広く設定されることが望まれるが、その上で基盤負荷とのバランスを考慮に入れる為に現行の体系から一歩踏み込んで、例えば、床の集中に伴う交通量増加を抑える為に容積移転を利用した建造物に複合用途の義務づけを行ったり、災害時の歩道容量の不足を考慮に入れて防災への配慮を促したりするなど、個々の移転に関して基盤面を考慮に入れつつ建築規制の中で対応していくことが望まれる。
著者
坂井 文
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.108, 2008

景観法の活用を促すうえで、自治体への技術的なサポートや、住民参加のためのアドバイスを提供するシステムの構築について議論する必要があると考えられる。本論においては、良好な景観を形成する開発計画のデザイン誘導を試みる英国中央政府の外郭団体である建築・都市環境委員会(Commission for Architecture and Built Environment)の活動とその役割に着目しながら、特に、その組織の構成と、地方自治体のデザイン政策の指導方法、またデザイン審査の方法について明らかにし、日本の景観法の活用をすすめるサポート組織の構築と、サポート手法について考察することを目的とする。本論を通して、中央に情報を集中させ専門的に分析し情報公開することによって、情報の共有化が図られ、各自治体の負担を軽くしていることがわかった。同時に、各地の状況に対応したアドバイスを行う地域組織の存在と、そのネットワーク化による横の連携を構築することにより、現場における適切な対応や、地域間での情報の共有が可能となることが明らかとなった。
著者
デンベレ ムッサ 古山 正雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.463, 2002

19世紀後半のフランスによる植民化は、西アフリカ都市に根本的な影響を与えたと同時に、近代的都市計画の出発点をもたらした。西アフリカのプレ・コロニアルな都市はフィジカルやメタフィジカルな記号によって構成され、住民にとって生活規約や伝統的生活の社会的意味を持つ空間である。本研究はマリ共和国の植民地都市であるジェンネやバマコにおける都市発展過程の考察を通して、伝統的都市空間がどのように植民地化による変容と近代化の影響を受けたかを明らかにした。プレ・コロニアルとコロニアル都市の比較研究により、マリの都市空間が物理的変化を受けた結果生じた社会構造の変化を考察した。こうした都市の物理的変化によって人と空間の関係が失われたことで伝統社会のコミュニケーションが変容したことを明らかにする。