- 著者
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諏訪 兼位
宮川 邦彦
水谷 総助
林田 守生
大岩 義治
- 出版者
- 日本地質学会
- 雑誌
- 地質學雜誌 (ISSN:00167630)
- 巻号頁・発行日
- vol.103, no.11, pp.XXXV-XXXVI, 1997-11-15
- 被引用文献数
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中央構造線の大露頭:月出露頭は, 紀伊半島中央部の高見山東方約9km地点(三重県飯南郡飯高町月出ワサビ谷)において, まず確認され, さらに崖錐除去工事によって出現した. 月出露頭の位置は, 東経136°11'33", 北緯34°26'5"である.<BR>露頭の高さは約80m, 幅は約50mに及ぶ. 露頭の勾配は38. 5°である. 露頭では, 西南日本外帯の黒色片岩と西南日本内帯の圧砕岩類(マイロナイト)とが接している. 月出露頭の中央構造線は, 東西走向で, 北へ60°傾斜している. 黒色片岩の片理は東西走向で北へ67°傾斜している. マイロナイトの面構造はN86°E走向で, 北へ56°傾斜している. マイロナイトは, 中央構造線沿いの幅3~5mの範囲では, 赤褐色を呈してガウジ化している.<BR>1959年9月の伊勢湾台風による崖崩れによって, 月出露頭の一部(右上隅)が出現したが, 大部分は崖錐におおわれていた. 筆者らは, 1995年1月に月出露頭が中央構造線の露頭であることを確認した. そして, 崖錐除去工事によって, 大露頭が出現することを, 関係当局に説いた. 幸い, 1995年度から崖錐除去工事が, 三重県治山事業として3か年計画で着々と進められている. 月出露頭の約1/3の高さには, 土止めの擁壁が設けられた. 露頭の右端には, 露頭最下端部のワサビ谷から擁壁まで, 階段が設けられた. 月出露頭の観察場所はワサビ谷に沿って整備され, 露頭に直接手を触れることができる. 観察場所へのアクセスも着々と整備されつつある.<BR>月出露頭周辺では, 中央構造線はN80°E走向で連続する. 月出露頭の東方約10kmには荒滝露頭があり, そこでも, 黒色片岩とマイロナイトが接している. 月出露頭周辺の中央構造線については, Suwa(1956), 杉山(1973), 高木(1985)などの研究がある.<BR>月出露頭では, 中央構造線は北へ60°傾斜しているが, 最近の伊藤ほか(1996)の四国中央構造線の研究によれば, 地下深部では中央構造線は, 30°~40°程度のゆるい北傾斜を示すらしい.<BR>このロ絵の発表にあたり, 飯高町長石橋 修, 前飯高町長村岡力, 松阪農林事務所前林政部長望月三佐男の三氏をはじめ, その他の関係各位に厚く御礼申しあげる.<BR>崖錐をのぞけば見事あらわるる大断層が月出ずるごと