- 著者
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塩野 敏昭
- 出版者
- 地学団体研究会
- 雑誌
- 地球科學 (ISSN:03666611)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.4, pp.273-285, 2008-07-25
- 被引用文献数
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本論では,約1,000本のボーリング資料をもとに長野市北部地域の後背湿地堆積物の詳細な分布と層序を明らかにしてその堆積年代を考察した.また,N値や含水比の程度にもとづく軟弱地盤の細区分を行ない1941年に発生した長沼地震の被害と軟弱地盤との関係を検証した.得られた結論は以下のとおりである.1)長野市北部地域の後背湿地堆積物は,上位から第1粘土層,第2粘土層およびこれらに挟在される第1砂層,第2砂層,泥炭層に区分され,全層厚は最大40m近くに達する.第1粘土層は完新世(約1万年以降)に,第2粘土層は更新世の後期に対比される.2)後背湿地堆積物を工学的に評価し,N値4以下を示す軟質な第1粘土層とN値10以下を示す締りの緩い第1砂層を軟弱地盤と定義してその分布を明らかにした.本地域には北東-南西方向に延びる2列の地溝状を示す軟弱地盤地帯が存在し,それらの成因が長野盆地西縁断層に伴う盆地側の相対的な沈降によるものであることを述べた.3)長沼地震によって被災した地域は長野市北部の後背湿地堆積物と自然堤防の分布域に集中していることを明らかにした.被害状況と地盤の関係から盆地内における液状化被害は第1砂層を挟在する地域と一致し,揺れによる被害は,第1粘土層が分布する地域にあたるが,この状況をより詳しく見ると,被害は後背湿地堆積物の分布域の中央部よりもむしろ地溝状を示す軟弱地盤地帯の縁の部分に集中している.