著者
柘植 紳平
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.348-364, 1999-07-30
被引用文献数
2

COの基準作成の基礎的研究として,児童の第一大臼歯599歯の咬合面を撮影した。その写真より,小窩裂溝部を白濁の有無,着色の有無,着色の範囲,歯垢付着の有無の4つの基準で分類し,年齢的推移を追跡した。その結果と結論は次のようであった。1.白濁は6歳で80%以上に認められ,8歳まで横ばいで推移し,9歳より減少した。2.着色は6歳で26.0〜42.0%に認められ,年齢とともに増加した。3.着色は,上下顎とも6歳では薄茶色が大部分を占めたが,8歳以降,黒褐色,黒色の割合が増加し,11歳では黒色の割合が最も多くなった。4.着色の範囲は,11歳で上顎では三分の一着色,下顎では三分の二着色の割合が最も多くなった。5.歯垢付着は,6歳で最も高率であったが,9歳までに急減した。6.歯垢付着の有無と白濁の有無とでは,上下顎いずれの年齢においても関係が認められなかった。以上から,第一大臼歯の咬合面では,小学校低学年(6〜8歳)で高頻度にみられる白濁と歯垢付着が,小学校高学年(9〜11歳)では黒い着色の増加へと変化する。う蝕の進行ではなく,再石灰化の結果であろうと考えられ,この時期においては修復を急がず,予防管理を重視することが大切であると結論される。