著者
吉村 直樹 橘田 岳也 嘉手川 豪心 宮里 実 清水 孝洋
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.155, no.1, pp.4-9, 2020
被引用文献数
4

<p>膀胱と尿道からなる下部尿路は蓄尿と尿排出の二つの相反する機能を司り,その機能は,末梢神経だけでなく中枢神経路を介して複雑にコントロールされている.まず,蓄尿時の調節は,主に脊髄レベルの反射によって制御され,交感神経(下腹神経),体性神経(陰部神経)の興奮によって膀胱の弛緩と尿道の収縮が引き起こされる.そして,尿排出時には,脊髄から脳幹の橋排尿中枢を経由する反射経路が活性化され,副交感神経(骨盤神経)の興奮によって排尿が起こる.そして,これらの末梢神経の働きは,脊髄より上位の中枢神経によって複雑に制御され,随意のコントロールが可能となる.そして中枢での神経伝達物質としてドパミン,セロトニン,ノルエピネフリン,GABA,グルタミン酸などが排尿のコントロールに関与しており,末梢だけでなく,中枢神経路の変性疾患や外傷による障害および薬物投与が,頻尿,尿失禁,尿排出力低下などの下部尿路機能障害を引き起こす.</p>
著者
吉村 直樹
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.29-38, 2009-03

講演記録現代ではラジオは若者の間でかつてのような人気がなくなってしまったが、聴覚的想像力は万葉の昔から江戸の俳諧を経て現在にいたるまで日本文化の特質であり、マスメディアとしての量的な優位は他のメディアに比べて下がったものの、ラジオ文化にはまだまだ魅力と有用性が残っている。阪神淡路大震災の際にラジオが情報伝達に役立ったのは確かだが、それ以上にひとりひとりに話しかけるというメディアとしての要素の強いラジオは聴取者になりよりも安堵感を与えたと言われる。テレビとラジオの決定的な違いは映像が伴うかどうかにある。ラジオにとって一見不利に見える映像の欠如は、制作と報道の仕方によっては逆に映像では表現えできないような内面を伝えることもできるし、またその比較的シンプルで安価な制作の性質を利用して機動的な、また地域に密着した番組を提供できるという利点もある。Radio is not so popular today among young people as it used to be. But auditory imagination has been one of the Japanese cultural tradition since the times of Man'yoshu. In Edo period we had haikai which also featured auditory imagination. Although radio is not influential as TV in terms of mass communication, it played a very important role during the Great Hanshin Awaji Earthquake giving crucial infrastructural information to the listeners who had no access to home electricity and the other mass media. What is more, since radio program tends to address itself to individual listeners rather than to mass audience, it can give a great deal of intimacy and reassurance. In addition, radio can play another major role as a local media based in local communities because of its relatively inexpensive production cost and its mobility.
著者
吉田 修 七里 泰正 奥野 博 寺井 章人 岡田 裕作 吉村 直樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

今回の疫学調査では1990年および1995年の尿路結石患者の年齢、性、部位、初発・再発別頻度と治療法別頻度につき調査表による集計を行った。1997年時点の日本泌尿器科学会専門医教育認定施設(1,197施設)に調査を依頼し、1995年調査では439施設より計85,239例の情報が集積された。初発上部尿路結石症の年間罹患率(10万対)は1965年の43.7から1995年には80.9へと大幅に増加した。1980年日本人口を基準に年齢調整した年間罹患率は1965年54.2、1995年68.9であった。1965年時点の年齢階級別人口をコホートとみなした年間罹患率の経時的変化では、若い世代ほど年間罹患率の増加は著明であった。また、1965年全人口(9830万人)をコホートとみなすと、1965年43.7、1975年64.0、1985年88.9、1995年110.9と顕著な増加を示した。これらの結果から、近い将来も日本人全体での年間罹患率の増加傾向は継続すると推察された。治療法別では、86〜87%がESWL単独で、またPNL、TULおよびESWLとの併用療法も含めると97〜98%がendourologyで治療されており、従来の開放手術は3%以下に激減した。ESWL装置の全国設置台数は1990年258台、1995年528台であった。上部尿路結石症の推計患者数(1990年115,500例、1995年147,700例)からみて、ESWL治療患者数は1990年44,000例、1995年57,800例と推計され、ESWL装置1台あたりの治療症例数にすると1990年の171例から1995年には109例と減少していた。このことから、わが国のESWL装置は既に飽和状態に達していると考えられる。
著者
河口 貴昭 酒匂 美奈子 吉村 直樹 高添 正和 柳 富子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.536-541, 2009 (Released:2009-04-06)
参考文献数
10

42歳男性,HIV感染進行期に全大腸炎型の潰瘍性大腸炎を発症した.緩解導入療法が奏効したが,HIV感染は進行したため,多剤併用療法(HAART)を行った.HIVウイルス量は激減しCD4リンパ球数は回復,さらに潰瘍性大腸炎は無治療で緩解を維持した.潰瘍性大腸炎を合併したHIV感染の報告は本邦初であるが,HIV感染進行期の免疫異常と炎症性腸疾患発症との関連が示唆される興味深い症例である.