著者
野尻 純子 柳川 敏彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.237-245, 2019

<p><b>目的</b> 本研究の目的は,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)を疑われた児の母親に対してステッピングストーンズ・トリプルP(以下SSTP)を実施し,その効果を明らかにすることとした。</p><p><b>方法</b> 対象は,A市の健診後に発達支援教室を利用する児の母親36人であった。児は2歳から6歳で,広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(以下PARS)が9点以上でASDが疑われた。対象者を介入群と対照群の2群に無作為に割り振り,両群にSSTPを実施した。介入群から介入前後と3か月後,対照群から介入2か月前と介入前後に各々3回ずつ質問紙の回答を得た。質問紙は,親が報告する子どもの困難な行動(SDQ),親の子育てスタイル(PS),夫婦間の関係の質と満足度(RQI),親の子どもへの不適切な行為(JM)の4つの尺度であった。介入前後の効果を介入群と対象群の1回目と2回目の尺度得点を用いた共分散分析で求め,介入3か月後の効果を介入群内の3回の尺度得点を用いた分散分析でそれぞれ調べた。</p><p><b>結果</b> 児の平均年齢は3.7±1.4歳,PARS平均得点は20±6.8点のASDを疑われた児であり,児の発達指数(DQ)の全領域平均は76.1±18.8点で知能は境界域にあった。介入前後で得点分布に有意差があったものは,SDQ(行動問題,難しさの合計),PS(過剰反応,多弁さ,総合スコア),JMであり,RQIに有意差は見られなかった。介入後3か月後時点では,介入群内においてSDQ(行動問題,難しさの合計,過剰活発),PS(すべての項目)で1回目と3回目で有意差があった。</p><p><b>結論</b> SSTPを受けることで親の子育てに良い変化がみられ,児の問題行動が改善され,育てにくさが減少した。叩くなどの児への不適切な行為に改善が見られたことで,SSTPが親の養育態度の変化につながることが示唆された。</p>
著者
野尻 純子 柳川 敏彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.237-245, 2019-05-15 (Released:2019-06-11)
参考文献数
33

目的 本研究の目的は,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)を疑われた児の母親に対してステッピングストーンズ・トリプルP(以下SSTP)を実施し,その効果を明らかにすることとした。方法 対象は,A市の健診後に発達支援教室を利用する児の母親36人であった。児は2歳から6歳で,広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(以下PARS)が9点以上でASDが疑われた。対象者を介入群と対照群の2群に無作為に割り振り,両群にSSTPを実施した。介入群から介入前後と3か月後,対照群から介入2か月前と介入前後に各々3回ずつ質問紙の回答を得た。質問紙は,親が報告する子どもの困難な行動(SDQ),親の子育てスタイル(PS),夫婦間の関係の質と満足度(RQI),親の子どもへの不適切な行為(JM)の4つの尺度であった。介入前後の効果を介入群と対象群の1回目と2回目の尺度得点を用いた共分散分析で求め,介入3か月後の効果を介入群内の3回の尺度得点を用いた分散分析でそれぞれ調べた。結果 児の平均年齢は3.7±1.4歳,PARS平均得点は20±6.8点のASDを疑われた児であり,児の発達指数(DQ)の全領域平均は76.1±18.8点で知能は境界域にあった。介入前後で得点分布に有意差があったものは,SDQ(行動問題,難しさの合計),PS(過剰反応,多弁さ,総合スコア),JMであり,RQIに有意差は見られなかった。介入後3か月後時点では,介入群内においてSDQ(行動問題,難しさの合計,過剰活発),PS(すべての項目)で1回目と3回目で有意差があった。結論 SSTPを受けることで親の子育てに良い変化がみられ,児の問題行動が改善され,育てにくさが減少した。叩くなどの児への不適切な行為に改善が見られたことで,SSTPが親の養育態度の変化につながることが示唆された。
著者
山田 和子 上野 昌江 柳川 敏彦 前馬 理恵
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

目的:4か月児健康診査(以下、「4か月」とする)、1歳6か月(以下、「18か月」とする)における母親の育児不安とその関連要因を明らかにするとともに、都市部と郡部の育児の違いを明らかにすることで、乳児からの育児支援の方法について検討する基礎資料を得ることを目的とする。調査方法:調査対象はA市(以下、「郡部」とする)の平成20年7月~12月生まれの児を持つ母親とした。調査方法は健診の問診票を送付時に本調査の調査票を同封してもらい、健診時に回収した。育児不安得点を平均点により2分して比較した。結果:調査の回収は4か月107名(回収率97.3%)、18か月103名(回収率92.8%)であった。4か月において、育児不安が強い群の方が、児への気持ち得点、母性意識得点は、有意に否定的であった。育児で心配なことも育児不安が強い群の方が有意に心配なことが多かった。郡部と都市部を比較すると、育児不安得点は、郡部の方が都市部より低かった。児への気持ち得点は、郡部の方が都市部より子どもへの否定的感情が弱かった。4か月と18か月の育児不安得点との相関をみたところ、4か月時に育児不安がある母親は18か月時点でも有意に育児不安があった。18か月において、育児不安が強い群の方が夫の育児参加や話しすることが有意に少なかった。まとめ:4か月で育児不安がある母親は18か月でも育児不安があることが多いことより、乳児期早期からの育児支援の必要性が示唆された。さらに、育児不安の状況は地域により異なることより、各地域の状況に応じた育児支援対策を行うことが必要である。