著者
槻本 康人 木股 正樹 夜久 均 田中 大 曽田 祥正 松本 恵以子 柴田 奈緒美 松尾 洋史 並河 孝 藤原 克次 岡野 高久
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Da1000, 2012

【はじめに、目的】 開心術後リハビリテーションは、二次的な廃用症候群や術後肺炎などの合併症予防に有用のみならず、早期離床を可能とし早期退院に有用である。当院でも二次的合併症の予防や術後運動耐容能を改善する目的で、クリティカルパスに沿って理学療法士が術後早期から介入を行っている。術後リハビリテーションでは、日本循環器病学会の開心術後クリティカルパスを用いている施設も多い。開心術の対象疾患である心臓弁膜症と虚血性心疾患は、術前の病態や重症度は異なる。しかし、同一の開心術後クリティカルパスで術後リハビリテーションを行った結果、体力の低下に不安を抱えて退院する患者も散見される。今回開心術後リハビリテーションに関連する術前の因子について、心臓弁膜症と虚血性心疾患の間で検討した。【方法】 対象は、平成21年4月から平成23年10月までの間に当院で待機的に開心術を行った76例のうち、急性心筋梗塞および複合手術を除く心臓弁膜症患者(20例)および虚血性心疾患患者(25例)である。入院時の性別、年齢、身長、体重、BMIおよび移動能力を調査した。移動能力の指標として、アメリカ胸部学会のガイドラインに従って術前6分間歩行テストを行った。また予備調査として、性別、年齢、身長および体重をもとに6分間歩行距離の予測値を算出した。統計処理はWilcoxon順位和検定を行い、5パーセント未満を有意水準とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、対象者へ研究の趣旨と内容、調査結果の取り扱いについて説明し、同意を得た上で調査を実施した。【結果】 性別は心臓弁膜症が男性10名、女性10名、虚血性心疾患は男性17名、女性8名であった。年齢は心臓弁膜症74.8±9.2歳、虚血性心疾患69.3歳±8.7歳と心臓弁膜症が有意に高かった。身長は心臓弁膜症156.8±10.7cm、虚血性心疾患162.3±9.5cmと有意差はなかった。体重は心臓弁膜症55.2±9.8kg、虚血性心疾患64.2±8.9kgと虚血性心疾患が有意に高かった。BMIは心臓弁膜症22.3±4.4、虚血性心疾患24.3±2.4と虚血性心疾患が有意に高かった。また6分間歩行距離は心臓弁膜症302.1±92.0m、虚血性心疾患は379.2±83.8mと虚血性心疾患が有意に高かった。予測6分間歩行距離は心臓弁膜症503.8±41.9m、虚血性心疾患は491.2±45.9mと有意差はなかった。【考察】 今回の予備調査では、予測6分間歩行距離に心臓弁膜症と虚血性心疾患の間で有意差はなかったが、実際の6分間歩行距離では心臓弁膜症に有意な低下が見られた。近年リウマチ熱等による若年者の大動脈弁狭窄症は減少し、高齢者の動脈硬化性大動脈弁狭窄症が増加傾向にある。加齢による移動能力の低下が、心臓弁膜症患者の6分間歩行距離低下に影響したと推察された。また、心臓弁膜症患者は、左室拡張末期圧の上昇等で労作時の胸部症状が出現し、日常生活活動の低下や活動量が減少している症例が見られる。これら日常生活の不活発化が、6分間歩行距離の低下に影響を与える可能性が示唆された。虚血性心疾患患者は心臓弁膜症患者と比較してBMIが高く肥満傾向であったが、若年者が多く加齢による移動能力の低下が少なかった事、亜硝酸薬の内服で運動制限が少なく良好な日常生活を過ごしていた事などが影響し、6分間歩行距離が有意に高かったと推察された。よって、術後リハビリテーションでは、心臓弁膜症患者は活動量の増加や移動能力の向上を目的に、歩行トレーニングを中心とした低負荷長時間の運動療法が重要であると思われる。また虚血性心疾患患者は肥満傾向にあったので、冠危険因子を是正し再イベントの発生を回避するため、減量指導や継続して有酸素運動を中心とした心臓リハビリテーションが重要であると思われる。【理学療法学研究としての意義】 心臓弁膜症患者と虚血性心疾患患者の間で術前調査を行った。心臓弁膜症患者は、胸部症状の出現や加齢により移動能力が低下、虚血性心疾患患者は肥満傾向にある事が示唆された。本研究より、開心術後リハビリテーションでは、同一のクリティカルパスであっても両疾患の特性に応じたリハビリテーションが提供されるべきであると思われる。
著者
柴田 奈緒美 小倉 あい 高原 啓也
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.178, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】落し蓋は少ない煮汁で味を全体に早く染み込ませ,煮崩れを防ぐ為,煮物調理にて有用である。本研究は肉じゃがを例とし,各種落し蓋での肉じゃがの仕上がりに及ぼす影響を検討した。更に,より簡易的で本格的な調理方法として2枚のクッキングペーパーにかつお節を挟んだ落し蓋(かつおぶた)の有効性も検討したので,併せて報告する。【方法】じゃがいも300g(50.9±2.79g/個),人参40g(10.1±0.24g/個),玉ねぎ100g(串切り),豚バラ肉100g(幅30mm)を油で炒めた後,だし汁と落し蓋をした状態で23分間煮込み,肉じゃがを調理した。落し蓋はリードクッキングペーパー(ライオン㈱製,以後,リード),木蓋,アルミホイル,対照として落し蓋を用いず加熱した方法(以後,開放)の計4種とした。調理後,じゃがいもと煮汁中のグルタミン酸量,塩分量および人参の破断強度を測定した。また,2枚のリードの間にかつお節6.0gを挟んだ落し蓋(以後,かつおぶた)を用いて調理したものと,顆粒だしとリードを用いて調理したものを対象とし,官能試験を行った。【結果】木蓋をした人参は他の調理法と比較し有意に柔らかくなったが(p<0.05),最も煮崩れをしていた。一方,開放の人参が最も硬く,じゃがいもの上部と下部の部分による濃度差があった。リードを使用すると,木蓋より人参は有意に硬くなるが,煮崩れが抑制されると共に,じゃがいもに呈味成分が均一に浸透していた。官能試験では,肉じゃがの香り・味のしみ込みが,かつおぶたを用いた方が顆粒だしより良い評価を得た。よって,かつおぶたは,別途だしをとる手間が省け,落とし蓋の効果も果たすことから,調理時間の短縮化・簡便化と共に美味しさを担保した肉じゃがを調理可能なことが示唆された。
著者
広瀬 純子 柴田 奈緒美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.27, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】米飯の冷凍保存は家庭で一般的に行われているが,炊き立てと比較して味や風味,食感などの品質が低下する等の欠点を有する。そこで本研究は,冷凍米飯に関するアンケート調査を実施し,冷凍および解凍方法の実態を把握した。そして,結果を基に冷凍および解凍方法を決定し,冷凍米飯の品質向上を可能とする冷凍および解凍方法を提示することを目的とした。【方法】アンケート調査は,岐阜大学の学生302人に対し,冷凍米飯の味や見た目に対する意識,冷凍保存の方法,頻度および食べ方などの4項目について調査した。実験に使用する米飯は,無洗米(平成27年度,岐阜県産)を水に30分浸漬させ,電気炊飯器(タイガー魔法瓶(株))を用いて炊飯した。炊飯終了後,一食分の米飯150gを成型し,家庭用冷蔵庫で24時間冷凍した。解凍方法は,出力600Wの電子レンジで2分間加熱した。この際,冷凍および解凍時の試料中心および端の温度測定,解凍後の含水率測定および偏光顕微鏡(ニコン(株))を用いて糊化の様子を観察した。【結果】アンケート結果より,米飯の冷凍保存を行っている家庭が多い傾向が見られた。また,各家庭で保存方法が異なっていたため,本研究では米飯の形状を変え,厚さが18mmと36mm,形状が直方体と円筒形の計4種類とした。冷凍過程では,厚さが薄く,円筒形である試料は,急速かつ均一に温度低下し,最大氷結晶生成帯の滞在時間が短くなった。電子レンジ解凍過程においても,厚さ18mmの試料は試料間における温度むらが抑制され,均一な解凍になることが示唆された。それに対し厚さ36mmの試料では,中心は端よりも解凍後の最終温度が高くなる傾向が見られた。その結果,試料上部の含水率が高くなり,不均一な含水率分布が生じた。