- 著者
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田中 大祐
- 出版者
- 一般社団法人 日本薬剤疫学会
- 雑誌
- 薬剤疫学 (ISSN:13420445)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.2, pp.43-53, 2015-12-31 (Released:2016-02-04)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
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ワクチンは人類史上で最大の公衆衛生上の成功の一つとされている.現在,予防接種は全世界で毎年250万人の子供の死亡を防いでいる.予防接種は,人の健康に関する権利の重要な要素の一つであり,個人,コミュニティ,そして政府の責任であるとも考えられている.各国における予防接種プログラムに使用されるワクチンは,適正に使用すれば概して安全かつ有効であると考えられる.しかし,他の医薬品と同様にゼロリスクではなく,予防接種後に副作用が生じる場合がある.このため,予防接種プログラムを成功させるためには,ファーマコビジランス活動を通じて,ワクチンのリスクとベネフィットのバランスを継続的に監視し,適切な情報提供を行うことにより,一般からの信頼を得ることが重要である.ワクチンをはじめとする医薬品は,リスクとベネフィットを正しく理解し,適正に使用されることにより,その価値を最大限に発揮することができる.ファーマコビジランスは世界保健機関 (World Health Organization: WHO) により「医薬品の有害な作用または医薬品に関連する諸問題の検出,評価,理解及び予防に関する科学と活動」と定義され,医薬品のリスクとベネフィットのバランスを正しく評価するために欠かせない存在である.WHO では,世界におけるワクチン接種率のさらなる向上を目指していると同時に,デング熱やマラリアなど新たなワクチンの開発にも乗り出している.また,先進国,途上国間でのワクチン接種開始ラグが減少しているとともに,様々な技術協力等により様々なワクチンが途上国でも製造されている.このため,ワクチンの接種率が増加し,新規のワクチンも含め,多種多様なワクチンが世界的に投与されるようになってきた.ワクチンのファーマコビジランスの重要性はますます増加し,ワクチンの安全性を確保するための様々な国際協力も積極的に行われてきている.このような状況の下,ワクチンのファーマコビジランスに関して,WHO の動きを中心としてグローバルな動きについて記載する.