著者
天野 秀臣 柿沼 誠
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は海藻の血液循環障害防止効果と食品への応用を目的とし、各種食用海藻の血液凝固抑制効果、赤血球変形能向上効果、血小板凝集抑制効果を、試験管内や動物試験により調査し、有効海藻を用いて海藻食品を試作したものである。海藻の血液凝固抑制効果の調査及び赤血球変形能の増大に及ぼす海藻成分を調べたところ、凝固時間はヒジキが93%,ワカメ95%,ヒドエグサ97%,コンブ98%に下がった。各種成分について有効性を調べたところ,ミネラルがヒジキで18%,ワカメとヒトエグサで14%,コンブで11%もの赤血球変形能向上効果が見られた。その効果はCaとMgの比率によると考えられた。その他、リン脂質、κ-カラゲナン、ポルフィラン、ヒトエグサのD-システノール酸も有効であった。ヒトエグサのミネラルは赤血球変形能向上効果のみならず、変形能の低下を防止する効果も強かった。次いで動物試験によりヒトエグサ藻体及びそのミネラルについて、全血流動性が向上するかを調査した。その結果、ヒトエグサミネラルは、赤血球変形能悪化、APTT短縮、血小板凝集能亢進を効果的に抑制できることがわかった。その作用因子は、ヒトエグサミネラル中に含まれる、クロム、セレン、マグネシウムである可能性が示された。ヒトエグサを用いて,ミネラルの他に血小板凝集抑制効果のあるD-システノール酸を含む新規佃煮を開発することができた。以上の結果,ヒトエグサを食事に積極的に取り入れることにより,赤血球変形能の悪化や血栓の形成を防ぎ、血液流動性をスムーズに保ち、健康な生活を送ることができる可能性が示された。