著者
青木 雅美 栗崎 弘輔 園山 幸希 冨田 麻井 藤川 将之 池田 善文 岡本 透 山田 努 眞崎 美穂 松田 博貴 吉村 和久
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.31, 2009

山口県秋吉台長登銅山の銅は奈良の東大寺大仏建立の際に用いられたと伝えられている。鉱業活動初期には酸化帯、後には硫化帯の銅鉱石を利用したと推定されており、硫化帯の銅鉱石製錬による硫黄酸化物の発生により局地的に酸性降下物量が増大し、それに伴い植生変化が生じたと予測される。石筍は年縞を持つため絶対年代が決定可能であり、イオン交換平衡により共沈する硫酸イオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオンの含量や、炭素安定同位体比から植生情報を抽出することができる。復元した滴下水中に含まれる硫酸イオン濃度の変動から硫化帯の銅鉱石製錬由来の人為的な局地的酸性雨の影響を読み取った。炭素安定同位体比、マグネシウムおよびストロンチウム濃度の変動からは酸性雨に伴う変化が読み取れた。これらの結果は現存する発掘資料や古文書などとも合致しており、石筍を用いることで連続的な過去の人為的環境変遷を復元することができた。
著者
姚 俊学 吉村 和久 栗崎 弘輔 井倉 洋二 高相 徳志郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.785-789, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

クロモトロープ酸を担持した長さ1 cmの陰イオン交換カラムを用いて,既に報告した微量ホウ素のオンライン吸光光度定量法の改良を行った.pHを3にした試料を流すだけでカラム内での錯生成を促進することができ,その後pHを8に変えて段階溶離を行うことで,ホウ素を安定な錯体として未反応の呈色試薬などから分離できた.その吸光定量を350 nmで行った.試料3.2 cm3を用いたときの分析時間は約12分,検出限界は0.06 μg dm−3であった.既報に比べて,分析時間および感度を大幅に改善できた.本法を琉球列島西表島の天然水中のホウ酸の分析に応用した.降雨および二つの河川水中のホウ素濃度は,それぞれ3.1~40.8,20.3~28.5,14.7~20.9 μg dm−3であった.いずれの場合も,非海塩性由来のホウ素の分率は高く,アジア大陸からの長距離移流によるものであることが示唆された.