著者
栗木 清典
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

大腸がんの罹患リスクに対する獣肉摂取と、インスリン抵抗性に関連するPPARγ遺伝子Ala12Pro多型、C161T多型およびCD36遺伝子A52C多型の相互作用を明らかにする症例・対照研究を実施した。Pro12Ala多型とC161T多型を組み合わせた解析において、全体の70.0%を占めるPro/Pro + C/Cでは、牛乳、卵の低摂取頻度に対する高摂取頻度のオッズ比(OR)は0.82、0.78と低かったが、Pro/Pro + (C/T+T/T)(25.3%)の飽和脂肪酸、加工肉摂取では1.42、1.63と高かった。CD36遺伝子において、A/A型の牛・豚肉の低頻度摂取、獣肉の低摂取量と比較して、C/C型の高摂取によるORは4.39、3.16と高かった。現在、わが国の40歳以上の10人に1人が糖尿病を患っており、糖尿病は一部のがんのリスク要因と報告されているが、日本人におけるリスク評価は十分ではない。そこで、糖尿病と臓器別がんリスクを大規模症例・対照研究で検討した。糖尿病の現病・既往のある男は7.5%、女は2.6%であった。糖尿病のORは、男/女の全部位(1.4/1.4)、肺(1.5/1.6)と肝臓(2.2/2.3)、男の咽頭(1.8)、喉頭(2.3)、食道(1.7)、膵臓(2.3)と大腸(1.3)、胃(1.7)と子宮頚部(1.9)で有意に高かったことから、糖尿病を引き起こすインスリン抵抗性はがんのリスク要因でもあるという仮説を支持した。近年の生活習慣の急速な欧米化に伴い増加している疾病のリスクを評価し、個人を対象にした一次予防方法を確立するには、食生活習慣調査とともに、脂質・脂肪酸摂取のバイオマーカーを確立することが必要である。そこで、多数の血液検体から、微量で、迅速、簡便、安価、高精度に脂肪酸レベルを分析する独自の方法を開発し、特許出願した。