著者
岡村 文子
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

がんに対する免疫療法において細胞傷害性T リンパ球(CTL)を利用する治療ではCTLががんを認識する時の目印である細胞表面上のHLA+ペプチド複合体の情報が必要である。そこで、より広くエピトープの同定を行うことが可能なマススペクトメトリーによるCTLエピトープの検討を行った。また腫瘍特異的な抗原提示装置の違いによるCTLエピトープの解析を行うために、抗原提示装置の異なる細胞を作製し、がん遺伝子であるK-ras遺伝子の活性型変異を有する細胞では高活性状態になったオートファゴソームによるエピトープの産生に関与していることを明らかにした。
著者
青木 正博 梶野 リエ 小島 康 藤下 晃章 佐久間 圭一朗 竹田 潤二
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、マウス生体での機能に基づいた探索により大腸がんの転移制御因子の同定を試み、HNRNPLLというRNA結合タンパクを見出した。大腸がん細胞でHNRNPLLの発現を低下させると転移能や浸潤能が亢進した。さらにHNRNPLLは、(1) CD44というタンパクをコードするpre-mRNAの選択的スプライシングを調節して大腸がん細胞の浸潤を抑制すること、(2) 大腸がん細胞の上皮間葉転換の際に発現が低下すること、(3) DNA複製因子をコードするmRNAの安定性を高めて大腸がん細胞の増殖を促進することを明らかにした。
著者
後藤 英仁
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Polo-like kinase 1 (Plk1)は、分裂期の様々な現象を制御するタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)である。本研究で、新たに、Plk1のセリン99が分裂特異的にリン酸化されること、このリン酸化修飾依存性に14-3-3ガンマが結合すること、この結合によりPlk1活性が上昇すること、この活性化経路は分裂中期から後期への円滑な移行を制御していることを明らかにした。この分裂期特異的なPlk1のセリン99のリン酸化修飾は、PI3キナーゼーAkt経路によって制御していることも示した。この新規のシグナル伝達経路の解明は、癌の病態の一端を解明するうえで示唆に富む知見といえる。
著者
栗木 清典
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

大腸がんの罹患リスクに対する獣肉摂取と、インスリン抵抗性に関連するPPARγ遺伝子Ala12Pro多型、C161T多型およびCD36遺伝子A52C多型の相互作用を明らかにする症例・対照研究を実施した。Pro12Ala多型とC161T多型を組み合わせた解析において、全体の70.0%を占めるPro/Pro + C/Cでは、牛乳、卵の低摂取頻度に対する高摂取頻度のオッズ比(OR)は0.82、0.78と低かったが、Pro/Pro + (C/T+T/T)(25.3%)の飽和脂肪酸、加工肉摂取では1.42、1.63と高かった。CD36遺伝子において、A/A型の牛・豚肉の低頻度摂取、獣肉の低摂取量と比較して、C/C型の高摂取によるORは4.39、3.16と高かった。現在、わが国の40歳以上の10人に1人が糖尿病を患っており、糖尿病は一部のがんのリスク要因と報告されているが、日本人におけるリスク評価は十分ではない。そこで、糖尿病と臓器別がんリスクを大規模症例・対照研究で検討した。糖尿病の現病・既往のある男は7.5%、女は2.6%であった。糖尿病のORは、男/女の全部位(1.4/1.4)、肺(1.5/1.6)と肝臓(2.2/2.3)、男の咽頭(1.8)、喉頭(2.3)、食道(1.7)、膵臓(2.3)と大腸(1.3)、胃(1.7)と子宮頚部(1.9)で有意に高かったことから、糖尿病を引き起こすインスリン抵抗性はがんのリスク要因でもあるという仮説を支持した。近年の生活習慣の急速な欧米化に伴い増加している疾病のリスクを評価し、個人を対象にした一次予防方法を確立するには、食生活習慣調査とともに、脂質・脂肪酸摂取のバイオマーカーを確立することが必要である。そこで、多数の血液検体から、微量で、迅速、簡便、安価、高精度に脂肪酸レベルを分析する独自の方法を開発し、特許出願した。
著者
二村 雄次 佐野 力 安部 哲也 梛野 正人 横山 幸浩 國料 俊男 千賀 威 西尾 秀樹
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

大腸癌皮下発癌モデルに対してNek2 siRNAとS1併用投与群はNek2 siRNA単独投与群より有効であった。Nek2 siRNAとCDDP併用投与群においても有効であり、相加効果であった。ラットでのNek2 siRNAの血中移行は局所投与後15minで最高となり60minでほぼ消失していた。またNek2 siRNAの毒性試験より無毒性量(NOAEL : No Obeserved Adverse Effect Levels)は3.7(mg/kg)で、Nek2 siRNAの最大推奨初期投与量(MRSD : Maximum Recommended Starting Dose)は0.0285(mg/kg)であった。
著者
神奈木 玲児 卓 麗聖 田口 修 後藤 嘉子 田口 修 遊佐 亜希子
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

細胞表層の糖鎖には接着分子としての機能を持つものがある。癌細胞ではシアリルルイスXやシアリルルイスaなどの糖鎖が発現し、これによって転移や浸潤が引き起こされる。癌細胞で糖鎖が変化する機構は、発癌早期においては、正常型糖鎖を合成する一連の遺伝子のエピジェネティック・サイレンシングが主原因の一つとなっていることを我々は明らかにした。一方、進行期の癌においては、癌細胞の低酸素抵抗性の獲得とともに機能亢進する転写因子hypoxia inducible factor(HIF)が、一連の糖鎖合成遺伝子の転写を誘導することが大きな要因となっていることを我々は明らかにした。