著者
大槻 則行 木村 清次 根津 敦夫 相原 雄幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.318-322, 2000-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

インフルエンザウイルス感染に伴う急性脳症は一般的に予後が不良な例が多く, 従来の治療法では重篤な神経学的後遺症を残すことが多い. 今回, インフルエンザウイルス感染に伴って発症した急性脳症の2例に軽度低体温療法とステロイドパルスの併用療法を行った. 1例は中枢神経症状出現後の7日目に入院し, 顕著な脳浮腫および脳波の低電位化を認めたが死亡には至らず, 経口摂取可能の状態で退院できた. 他の1例は入院時に両側前頭部優位の皮質浮腫を認めたが治療の結果, 中等度の知能障害にとどまった. 上記の治療法は新たな一つの手段になると考えられた.
著者
根津 敦夫
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.599-603, 2020-07-17 (Released:2020-08-28)
参考文献数
4

肢体不自由児の痙縮やジストニアに対し,国内でも2009年以降ボツリヌス毒素による神経ブロックが多用されている.軽症例への早期治療は,歩容や巧緻動作の問題を短期間で改善させ,数回の治療で完了できる.一方,重症例では,幼少期までは有効だが,学童期以降は体格が大きくなるにつれて用量不足となるため,効果不十分となる.また,治療3~6カ月後には症状が繰り返し再燃するため,治療終了の見通しが立たない.そのような場合,脊髄後根切断術やバクロフェン持続髄注療法への移行または併用を検討すべきである.これらの治療を適切な時期に導入すれば,装具療法との併用で,拘縮・変形の進行をある程度抑制することができる.
著者
高橋 彰子 福原 一郎 高木 伸輔 井手 麻衣子 新田 收 根津 敦夫 松田 雅弘 花井 丈夫 山田 里美 入岡 直美 杉山 亮子 長谷川 大和 新井 麻衣子 加藤 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100455, 2013

【はじめに、目的】重症心身障害児者(以下;重身者)は,異常筋緊張など多様で重層した原因で症候性側弯が発症進行する.側弯の進行予防に対して理学療法が施行されるが,それ以外にも日常生活で使用する側弯装具が処方される場合も多い.今までは,ボストン型装具や硬性コルセットなどが広く使用されているが,大きく,通気性も悪く,服が着にくい,また痛みを訴えるなどのデメリットもあった.近年,3点固定を軸に側弯進行を予防し,装着感がよく,通気性なども改善された動的脊柱装具(DSB 通称プレイリーくん)が開発された.開発者の梶浦らは,多様な利点で,重身者の症候性側弯に有効であると述べている.しかし,親の子に対する装具装着の満足度や,理学療法士による効果判定などの関連性や,装具装着による変化に関しての報告は少ない.そこで,動的脊柱装具を処方された重身者の主たる介護者の親と担当理学療法士にアンケート形式で満足度と装具の効果について検討することを目的とした.【方法】対象は当院の外来患者で動的脊柱装具を作成した側弯のある児童または成人17名と,担当理学療法士6名とした.対象患者の平均年齢15.9歳(3~22歳),GMFCS平均4.7(3~5),Cobb角平均82.46(SD31.62)°の側弯を有していた.装具に対する満足度や効果の実感に関するアンケートを主たる介護者の親と担当理学療法士と分けて,アンケートを2通り作成した.親へのアンケートは,装具装着の見た目,着けやすさ,姿勢保持のしやすさ,皮膚トラブル,装着時間,総合的な満足度などの装具使用に関する項目に関して,20項目の質問を紙面上で答えさせた.理学療法士には姿勢変化,治療的効果などの評価の4項目に関して紙面上で記載させた.その他,装具装着前後でのCobb角を算出した.統計処理はSPSS ver20.0を用いて,質問紙に関しては満足度合を従属変数とし,その他の項目を独立変数として重回帰分析を実施し,関連性についてはpearsonの相関を用いた.理学療法士の効果判定に関係する因子の検討では理学療法士の評価を従属変数として,効果に対する要因,Cobb角を独立変数として多重ロジスティック解析を実施した.各質問紙項目内による検討に関してはカイ二乗検定を用いた.また,Cobb角の変化に関しては対応のあるt検定を用いた.危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】全対象者と全対象者の親に対して,事前に本研究の目的と方法を説明し,研究協力の同意を得た.【結果】Cobb角は動的脊柱装具作成装着前後で有意に改善した.動的脊柱装具に関する親の満足度と関連する項目はCobb角の変化ではなく,体に装具があっていると感じている,装具の着けやすさ,装具を装着したときの見た目と関連していた.満足度と装着時間とは正の相関をしており,満足度が高い人ほど装着時間も長かった.理学療法士の評価は満足感と関連していなく,姿勢保持のしやすさ,Cobb角と関連していた.【考察】今回GMFCSレベル4~5のADLで全介助を要し,側弯の進行の危険性が高い方を対象としており,親の関心や理学療法士の治療選択も側弯予防は重要な目標の1つである.重身者の親の満足度は主に子どもの装着に関係する項目と最も関連していた.理学療法士の効果検討としてはCobb角,姿勢保持と関連していた.動的脊柱装具装着の前後で側弯に改善がみられることは,梶浦らの報告とも同様で,この体幹装具が側弯に対して長期的な効果の可能性も示唆された.その装具に関する理学療法士の効果判定はCobb角と関連が強く姿勢の変化を捉えている傾向にあった.親の満足度は最も快適に使用できる項目であり,満足しているほど装着時間が延長することが考えられる.今回のアンケートより,装具に対する親への感想を聴取することで生活状況の確認となり,満足度を高めるように作成することが可能となると示唆された.【理学療法学研究としての意義】重身者にとって側弯は内臓・呼吸器疾患と直接的に結びつきやすく側弯の進行予防は生命予後に関しても重要である.側弯進行予防の理学療法を効果的にするためにも,使いやすい側弯装具は重要な日常生活器機である.新たに開発された動的脊柱装具の満足度と効果についてアンケート調査を行った.親が実際の装具使用を肯定的に感じているほど,装着時間も長く,親の満足度に関連する因子として,装着しての見た目や,子の過ごしやすさも重要な因子であることが今回示唆された.
著者
松田 雅弘 田上 未来 福原 一郎 花井 丈夫 新田 收 根津 敦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】我々は福祉用HALを用いた運動療法が,発達期中枢神経障害児者の歩行・バランス能力に対して,即時的・長期的効果について報告してきた。今回,発達期中枢神経障害児者の膝関節の動きに対して,単関節HAL(以下,HAL-SJ:single joint type)を用いた運動療法を実施した。その効果について,担当PTにアンケートを実施し,HAL-SJが運動機能に及ぼす影響について検討したので報告する。【方法】発達期中枢神経障害児者に対し,HAL-SJを使用した理学療法士5名(経験年数約10~30年)に使用目的および時間,その効果に関してアンケート調査を実施した。対象となった発達期中枢神経障害児者は13名(平均年齢13.2歳,9-12歳,男性7名,女性6名,痙性四肢麻痺4名,痙性両麻痺7名,痙性片麻痺2名),GMFCSI:2名,II:3名,III:4名,IV:4名であった。アンケート調査時の使用回数は1回目12名,2回目以上7名の計19回のアンケートについて分析を行った。運動療法の効果に関しては5件法を用いて,目的にそった効果について検討した。また,自由記載にて使用方法とその効果について調査した。【結果】HAL-SJを利用した目的は,両側(16回)または一側膝関節(3回)に装着して,随意性の向上(14回)と立位練習(14回),歩行練習(6回),段差昇降練習(3回),その他(自転車)であった。HAL-SJを用いた平均運動時間39.5±12.6分(20-60分)であった。膝関節の随意性の改善は平均2.8±1.2点,歩行の改善は平均3.5±0.9点,立位姿勢制御の改善は平均3.7±1.0点,立ち上がり動作は平均3.8±0.8点,段差昇降の改善は平均4.0±0点となった。目的とする姿勢動作時には,HAL-SJを利用することで立位・歩行時の機能改善,特に膝伸展筋の活動が向上して立位時の支持性の改善がみられた。その他,筋活動を視覚的にPTまたは患者自身が確認でき,フィードバックしながら運動が可能である,軽量のため動作練習を行いやすいなどの自由記載があった。【考察】HAL-SJを使用した運動療法の効果は,装着した膝関節の動きだけではなく,近位関節である股関節制御も高め,立位・歩行機能の改善につながった。HAL-SJ,福祉用HALと異なり,生体電位は大腿の筋のみで,制動する関節は膝関節の1関節でなる。発達期中枢神経障害児者の下肢運動は,分離運動が困難なため,HAL-SJが膝関節の分離運動を促すことで,下肢関節にトータル的な運動制御の改善がなされ,身体運動が円滑になったと考えられる。特に,立位・歩行制御を目的とした運動療法の一部として有効的な手段になると考えた。視覚的なフィードバックはPTにも患者にも有効的で,その情報をもとに運動指導や学習が可能なことも効果を実感した一助になったと考えられる。また,福祉用HALは小児を対象とした場合,身長制限が問題となるが,HAL-SJはその制限に関わらず使用することが可能である。</p>