著者
大山 修一 桐越 仁美
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.913-927, 2012-10-25 (Released:2012-12-05)
参考文献数
67

This paper describes the academic themes, lessons and social problems geographers are addressing in modern Africa, as well as university geography education and the education levels in Sub-Sahara Africa, related to colonial policy, socio-economic stability, and population. Nature, culture, and society in Africa are both diverse and attractive to academic researchers. According to one estimate, there are more than 1,000 languages and ethnic-groups on the continent. We hope to research the uniqueness of nature, cultures, and societies of Africa. African people face social problems of poverty, economic disparity, social conflict, civil war, diseases, land degradation, etc. Japanese geographers should tackle these problems with African researchers in order to contribute to political stability, social welfare and development. South Africa is the most active country engaging in geographical research and education in Sub-Sahara Africa. According to the history of South African academe, the South African Geographical Society and the Society for Geography were integrated in 1994 to establish the Society of South African Geographers. South African geographers considered this movement to be a historical event under political changes that emerged during the new era following the policy of apartheid. Geographers are tackling social problems of Sub-Sahara Africa and social responsibility is important for academic researchers in Africa. Japanese geographers need to build stronger and wider partnerships with African geographers to achieve further social responsibility.
著者
桐越 仁美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.101, 2021 (Released:2021-03-29)

1990年代以降、アジア人によるガーナの商業分野への投資・参入がみられるようになった。なかでも中国人については、小売業への進出が急速に進んでいる。近年は、西アフリカのムスリム商人が中国製の商品を内陸乾燥地域に大量に輸送しており、以前に増して中国製品を目にする機会が多くなった。西アフリカのムスリム商人たちは、ガーナの中南部の都市クマシにて、中国製の商品を入手し、内陸乾燥地域へと輸送している。多くの場合、ムスリム商人たちは古くからの交易路を通じて商品を内陸乾燥地域へと輸送している。本発表は、西アフリカのムスリム商人が商業ネットワークを域内で構築・拡大させてきた軌跡を概観したのち、そのネットワークを中国商人にまで拡大させていく過程について、一考察を加えることを目的とする。 本発表では、コーラナッツ交易と関わりをもつ西アフリカのムスリム商人のキャリア形成に着目する。ガーナの都市や農村にみられる「ゾンゴ(zongo)」という地区には、多くのムスリム商人が滞在している。そこで取引における中核を担っているマイギダ(maigida)と呼ばれる人びとのなかには、中国商人との交渉を担っている人物がおり、ムスリム商人間では彼らを通じてでないと取引ができないと認識されている。キャリア形成に関する聞き取り調査からは、多くの若手商人が中国人との取引を将来的な目標としているものの、まずはマイギダに接触し、彼らに実力を認められる必要があると考えていることが明らかになった。
著者
大山 修一 阪本 拓人 桐越 仁美
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

西アフリカ・サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル帯では人口が急増しており、1人あたりの農地面積の縮小による食料不足、飢餓、貧困が慢性化し、毎年、雨季になると各地で農耕民と牧畜民(フルベ、トゥアレグ)が放牧地をめぐって紛争を繰り返し、近年では死者も出て激化している。本研究は、現地データのシミュレーションによって人口増加や土地利用、紛争がどのように発生するのか将来予測をおこない、どのような方策によって紛争の発生を緩和することができるのかを検証することを目的としている。研究代表者の大山は9月にニジェールへ渡航し、武力衝突がもっとも発生しやすい現地状況を観察した。大山は、これまでに継続してきた、都市の有機性ゴミによる緑地化がどのように進行しているのか、34サイトの植物を観察し、そこを管理する牧畜民にインタビューを実施し、緑地化サイトがもたらす家畜飼養の負担軽減と家畜の肥育、紛争予防と地域の安定性に対する貢献について調査した。阪本はケニア北部やサヘルの牧畜社会における紛争事例に関する広範な文献や資料のサーベイをおこなった。また、衛星画像など広域データと現地調査で得た局所データを関連づける先端的な手法として機械学習に着目し、その習得に努め、次年度の現地調査に備えた。桐越はガーナ南部の森林地帯において、サヘル帯からの移民流入と彼らの生活の実態を調査した。これらの調査データから、サヘル帯における農地面積の縮小と人びとの移動の関係について詳細な分析を進めた。大山は、チャド湖周辺で発生するボコハラムのテロに関する論考をまとめて発表し、その被害と発生する原因を考察し、今後の紛争予防につなげるべく、本研究計画の展開と方向性を検討している。また、ニジェールだけではなく、紛争国に囲まれているウガンダ、土地問題の発生しているザンビアにおいても、引き続き、調査を継続している。
著者
桐越 仁美
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.22-35, 2018-02-26 (Released:2019-03-22)
参考文献数
16

18~19世紀の西アフリカにおいて、アサンテ王国とハウサ諸王国間のコーラ交易が発展した。現在でもコーラの交易は盛んにおこなわれ、そのなかでは多くの若者が活躍している。本稿では、コーラ交易に携わる若者に着目することで、現在のコーラ交易における信用取引の実態と、若者がコーラ交易を通じて自らの商売を発展させていく過程を明らかにすることを目的とする。コーラは西アフリカのイスラーム社会において儀礼的・社会的に高い価値をもち、高値で取引されている。コーラは西アフリカの森林地帯から内陸乾燥地域のあいだに張りめぐらされた巨大な商業ネットワークを介し、民族の枠を越えて輸送される。人びとは傷みやすいコーラを迅速に輸送するために、前払いや委託販売といった手法を採用しており、そのなかでは信用や連携が重視される。コーラの交易に参入する若者は、そこで得た信用を、巨大な商業ネットワークに乗せて拡散させることを目的としていることが明らかとなった。