著者
湯川 拓 阪本 拓人 若狭 彰室
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2023-06-30

「国際社会」(international community)という概念は国際関係を理解する上で極めて重要な概念でありながらも、既存研究においては同概念についての歴史的・動態的な分析は極めて不十分であった。すなわち、「国際社会」概念が外交当事者からどのように用いられてきたのかという分析は、全くと言ってよいほど為されてこなかった。それに対し、本研究では計算社会科学の先端的な手法を取り込み、条約のテキスト分析という新しい方法を用いることで、「国際社会」概念に対して、①動態的分析、②実証的分析という二点を実現することで根本的に画期的な貢献を試みる。
著者
阪本 拓人
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第12回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.A-5-4, 2021 (Released:2022-03-09)

The United Nations Security Council is one of the primary organs of the United Nations, which is primarily responsible for the maintenance of international peace. It is also a significant battleground for great-power politics where the permanent members of the Council (the United States, Britain, France, Russia, and China) constantly engage in mutual confrontation and cooperation. This study analyzes the official meeting records of the Council using large-scale text analysis methodologies such as word embedding. Focusing on one of the most consequential notions for the Council deliberations, ”threat to the peace,” the study quantitatively represents the members’ conceptions concerning this notion, and rigorously measures the discrepancies among these conceptions. The study thus clarifies how the polarization among the major powers has unfolded over the past decades.
著者
山影 進 田中 明彦 鈴木 一敏 阪本 拓人 山本 和也 保城 広至 服部 正太 木村 香代子 森 俊勝 光辻 克馬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

国際関係論の重要分野である秩序変動の研究を、近年世界的に注目を集めているマルチエージェント技法を用いて行った。理論的観念的なレベルにとどまらず、政府内、住民集団間、国家間等さまざまなレベルの国際関係の事例についての実証研究に用いるためにモデル構築をおこなった。構築したモデルは、具体的な事象について高い再現性を示すことに成功し、それらの成果を書籍や論文のかたちで公表できた。
著者
大山 修一 阪本 拓人 桐越 仁美
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

西アフリカ・サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル帯では人口が急増しており、1人あたりの農地面積の縮小による食料不足、飢餓、貧困が慢性化し、毎年、雨季になると各地で農耕民と牧畜民(フルベ、トゥアレグ)が放牧地をめぐって紛争を繰り返し、近年では死者も出て激化している。本研究は、現地データのシミュレーションによって人口増加や土地利用、紛争がどのように発生するのか将来予測をおこない、どのような方策によって紛争の発生を緩和することができるのかを検証することを目的としている。研究代表者の大山は9月にニジェールへ渡航し、武力衝突がもっとも発生しやすい現地状況を観察した。大山は、これまでに継続してきた、都市の有機性ゴミによる緑地化がどのように進行しているのか、34サイトの植物を観察し、そこを管理する牧畜民にインタビューを実施し、緑地化サイトがもたらす家畜飼養の負担軽減と家畜の肥育、紛争予防と地域の安定性に対する貢献について調査した。阪本はケニア北部やサヘルの牧畜社会における紛争事例に関する広範な文献や資料のサーベイをおこなった。また、衛星画像など広域データと現地調査で得た局所データを関連づける先端的な手法として機械学習に着目し、その習得に努め、次年度の現地調査に備えた。桐越はガーナ南部の森林地帯において、サヘル帯からの移民流入と彼らの生活の実態を調査した。これらの調査データから、サヘル帯における農地面積の縮小と人びとの移動の関係について詳細な分析を進めた。大山は、チャド湖周辺で発生するボコハラムのテロに関する論考をまとめて発表し、その被害と発生する原因を考察し、今後の紛争予防につなげるべく、本研究計画の展開と方向性を検討している。また、ニジェールだけではなく、紛争国に囲まれているウガンダ、土地問題の発生しているザンビアにおいても、引き続き、調査を継続している。