著者
桒田 但馬
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.91-105, 2015-11

本稿の目的は東日本大震災復旧・復興にかかる特別課税の実態を明らかにし、その政策的示唆を得ることである。特別課税の決定に至る詳細な経緯を踏まえて、政府等における議論の主な特徴、特別課税の意義や問題などを明らかにすると、そこから次の政策的示唆を導出することができる。すなわち、恒久的な基金制度(「災害対策基金」)の早期の創設を国、都道府県、市町村レベルで義務化し、大災害に迅速に、かつ効果的に対応できるようにする。そうすれば、これまでのように復興基金を大災害ごとの特例措置として設定しなくてもよい。また、今回のように特別課税をきわめて大きな規模で行わなくてもよい。
著者
桒田 但馬
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.268-289, 2012 (Released:2022-07-15)
参考文献数
24

本稿の目的は岩手県旧沢内村における「生命行財政」を主な対象にし,その歴史的な考察を通して過疎地域からみた公的医療の問題を明らかにし,その政策課題を提起することである。その意義は総務省「公立病院改革ガイドライン」が重視していない側面に光を当てる点にある。 本稿では,①1980年代なかば以前の「生命行政」に対象を限定し,積極的な評価だけを与えてきた先行研究の不十分さをカバーした。②農村地域医療研究で不十分な自治体財政,公立病院経営の側面に焦点を当て,構造的な問題を明らかにした。③農村地域医療の理論構築および議論展開の出発点として,公的医療・病院経営理念,保健行財政などを問い直した。 この旧沢内村の理念と実践は,公的医療の成果として住民参加・自治にもとづく「生命行財政」のモデルとされ,全国の過疎地医療に大きな影響を与えた。しかし,1980年代なかば以降は沢内方式が変質していく。それは国の(地方)行財政構造改革や医療制度改革などが主な要因になっている。公的医療の中・長期的な課題としては,沢内方式の現代的な再構築があげられる。